ママの涙は子どもの脳にいい?涙の意外な働き
性格が変わったのか、体質が変わったのか……? 出産を経ると涙もろくなるのには理由がありました。
ママが涙もろいワケや「子どもの前で泣いてもいいの?」「笑う方がストレス解消にはいい?」などのソボクな疑問を、涙や泣きのメカニズムに詳しい有田秀穂先生にお聞きします!
どうしてママは涙もろいの?
赤ちゃんにつねに共感する
「ママ脳」が涙を流させる!
「涙には、目の表面を水分で保護する『基礎分泌の涙』、ごみなど異物を洗い流す『反射の涙』、悲しいときや感動したときに流す『情動の涙』の3つがありますが、ママの涙は3つ目の『情動の涙』です」と、涙や泣きのメカニズムに詳しい有田秀穂先生。
「情動の涙は、脳の前頭前野にある通称『共感脳』と呼ばれる部分が興奮することで流れるしくみ。赤ちゃんをつねに見守り、密着して世話をしているママは、赤ちゃんに絶えず共感している状態。共感脳が活発になっていて、刺激を受けやすい状態なのです。そのため、子どもに関連する事柄を見聞きすると、刺激を受け、すぐに涙が出るのです」
泣く=恥ずかしいというイメージを持つ人も多いですが、泣くことは心身の健康にとてもいい影響があるそう。
「涙は、交感神経から副交感神経に切り替わるスイッチ。涙が流れると副交感神経が優位になり、脳全体がリラックスして脳のストレスが解消されます。ストレス解消は心の問題だけでなく、血圧の安定や免疫力の向上など、体にもプラスの効果が。元気にハツラツと子育てするには、大いに泣いていいんです」
ママの涙のソボクな疑問
どうしてママばかり泣いちゃうの? ママの涙ならではのクエスチョン、有田先生に教えてもらいました。
子どもの前でママが
泣いてもいいの?
ママの涙は
子どもの脳の発達にもいい!
「泣き声やくちゃくちゃの顔etc.泣くという行為は、周りに強いメッセージを与えます。ママが子ども(自分)のことでうれし涙や感動の涙を流すと、それが強烈に印象に残り、脳を刺激。この刺激が共感脳をはぐくみ、他人の気持ちが分かる人になります。
でも子どもに見せるのは、できるだけ感動やうれし涙などのポジティブな涙に。怒りやネガティブな感情の涙は、子どもを混乱させます」
泣くよりも笑うほうが
ストレス解消にはいいのでは?
笑いは元気が出て、
泣きは心が軽くなる
「笑いと泣きは正反対の反応に見えますが、脳の働きで見るとこのふたつは似ています。ともに前頭前野の血流がよくなりますが、その変化は泣きのほうが大きいことが実験で分かっています。
また、泣き・笑いそれぞれの前後で行った心理テストでは、泣きの後では緊張や不安、混乱が改善したのに対し、笑いの後では活力の増加が表れます。ともにストレスの解消になりますが、泣いた後は『スッキリ』、笑った後は『元気が出る』という傾向があります」
教えてくれた人
有田秀穂先生
ありたひでほ/東邦大学医学部名誉教授。脳神経に詳しく、神経伝達物質「セロトニン」研究の第一人者。著書に『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)などがある。
イラスト/macco(kodomoe2016年6月号掲載)※この記事は、2018年7月にウェブ掲載されたものを再編集しています
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