2020年3月31日

『ひみつのビクビク』【今日の絵本だより 第117回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ひみつのビクビク』【今日の絵本だより 第117回】の画像1『ひみつのビクビク』
フランチェスカ・サンナ/作 なかがわちひろ/訳 廣済堂あかつき 本体1600円+税

明日から新年度。
入園、入学、進級と、新しい環境への第一歩。
期待と不安がまぜこぜの中、どちらかというと不安の方が大きい……というお子さんもいるのではないでしょうか。
お子さんを励ます側でも、「本当は自分も不安」というママだって実は多いのでは?
そんなときはこちらの絵本、『ひみつのビクビク』を親子で一緒に読んでみましょう。

小さなビクビクは、私の秘密の友だち。
いつもそばにいてくれるけれど、この国に引っ越してきたら、その姿が急に大きくなった。
ビクビクが邪魔をするから、新しい家のまわりも探検できないし、学校へ行こうとすれば、重くなったビクビクに押さえつけられる。
私は学校のみんなが話す言葉がわからないし、みんなも私の言葉がわからない。
だからいつもひとりぼっちでいたけれど、ある日、男の子が話しかけてくれました。

不安や恐れは本来、自分自身を守るために備わっている本能。
未知の世界を怖がる気持ちがあるからこそ、少しずつ安全に進んでいけるといいます。
この本の原題は”Me and My Fear”。
おばけのような姿で可視化された”My Fear”、「私の恐れ」が、「ひみつのビクビク」と訳されたことで、いっそう親しさを持って感じられます。
ビクビクは恥ずかしいものではなくて、誰もがみんな心の中に持っているもの。
大きくなったり小さくなったりしながら、自分をいつも守って、少しずつ強くしてくれる、本当は大切な仲間なのです。

男の子との出会いをきっかけに、少しずつ笑顔が増えてきた私。
ラストシーンは、私もみんなも、それぞれのビクビクと一緒ににっこり。
不安なことがあったら何度でも開きたい、お守りに思えてくるような場面です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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