2020年4月4日

『それしか ないわけ ないでしょう』【今日の絵本だより 第118回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『それしか ないわけ ないでしょう』【今日の絵本だより 第118回】の画像1 『それしか ないわけ ないでしょう』
ヨシタケシンスケ/作 白泉社 本体1300円+税

新型コロナの影響が、長く続いています。
いつもは心はずむ春なのに、今年はいつまで自粛生活をすればいいのか、なかなか先が見えない毎日がつらいですね。
心が沈みがちになりますが、そんなときこそ前向きになれるこの一冊、『それしか ないわけ ないでしょう』をご紹介します。

主人公は、おだんご結びがかわいい女の子。
小学校から帰ってきたお兄ちゃんが、こんなことを言い出しました。
「…ねえねえ、しってる?
 みらいは たいへん なんだぜ」
お兄ちゃんの友達が大人から聞いたことには、未来になったら人が増えすぎて食べものがなくなったり、地球が壊れてしまったり、恐ろしいことがたくさんあるというのです。
突然の話に、ショックな女の子。
うなだれておばあちゃんの部屋に行き、
「みらいが たいへんなの…」
と伝えます。
そうしたら、おばあちゃんは笑顔で答えてくれました。
「だーいじょうぶよ!
 みらいがどうなるかなんて、だれにもわかんないんだから!」

おばあちゃんいわく、大人はすぐに未来のことを「こうなる」「こうするしかない」とか言うけれど、たいてい当たらない。
「コレとコレ、どっちにする?」なんてよく聞くけれど、相手が差し出すそのふたつから選ばなくたっていい。
新しい答を自分で見つけたっていい。
だって、
「みらいは たーくさん あるんだから!」

がぜん元気になった女の子は、今度はお兄ちゃんの部屋に行ってこう言います。
「おにいちゃん!!
 たいへんな みらいしか ないわけ ないでしょう?
 いろんな みらいが あるでしょう!?」
そして考えたのは……。
毎日、ウインナーが食べられる未来。
一日中、パジャマでもいい未来。
それからそれから……、自由な想像がとまりません。

今現在の危機を正しく理解して行動することは、当然です。
でも、大人よりも長く未来を生きていくのは、子どもたち。
今は普段と違う状況でも、未来までが閉ざされたわけではありません。
備えながら、守りながら、それでもこの女の子とおばあちゃんのように
「それしか ないわけ ないでしょう?」
「みらいって いいでしょう!?」
と伝えていくことが、子どもたちより長くこの世に生きている大人の私たちが、できることだと思うのです。

ちなみに私、ノストラダムスの大予言が大流行した頃の子どもだったので、「1999年に人類は滅亡する」とまわりに吹き込まれ、それを固く信じてビクビクしていました。
そう、ちょうどこの女の子と、同じくらいの年の頃。
自分にもみんなにも、21世紀はやってこないと思っていました。
「1999年を過ぎて2000年を迎えられたどころか、それから20年も経って、昭和の次の次の元号だよ」、「世の中いろいろあるけれど、毎日元気に生きてるよ」と、あの頃の不安な自分に大きく手を振って、教えてあげたいです。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

 

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