ひとりで読めるようになっても続けたい。絵本作家・えがしらみちこさんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・5】
気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについてお話をうかがう連載。第5回は絵本作家のえがしらみちこさんです。現在、小学校1年生のお子さんへの読み聞かせについて、そして、絵本作りについてもうかがいました。
絵本のフレーズが口をついて出ると
そこで娘が笑ってくれたり、がうれしい
――えがしらさんはどんなふうに絵本の読み聞かせをされていますか?
娘が0歳3か月くらいから絵本を一緒に読んでいます。0歳、1歳の時は、家事がひと段落したあとなど、日中の区切りのいいタイミングで読んでいました。2歳になってからは、毎晩寝る前に1冊以上は読んでいます。絵本を読むと気持ちが落ち着くのか、すぐに熟睡モードにはいっている気がします。とはいえ、あまり縛られることもなく、夜あまりに遅くなってしまってヘトヘト……といった時は、無理せず省略することもあります。
――読み聞かせする絵本はどうやって選んでいますか?
仕事柄、私がたくさんの絵本に触れたいと思っているので、良いと言われているロングセラーの絵本から、話題になっている新刊まで、手当たり次第に読んでいます。自分で読むだけではなく、娘がどう反応するか見たいので、一緒に読むことを大切にしています。
本屋さんへ一緒に行って、娘が欲しいといった絵本は、あれこれ言わずに購入するようにもしています。 小学校へ上がり、学校図書館を利用できるようになったので、最近は、娘が自分で選んで借りてきた読み物なども、一緒に読むようになりました。
――読み聞かせで、何か決めていることはありますか?
「読んで」と言われたら、きちんと読むようにしています。日々忙しくて、なかなか娘の気持ちを受け止められていないんじゃないか……と心配になることもあるので、これだけはやった! といえる何かが欲しくて……。せめて読み聞かせだけでも、と思っています(笑)。
――読み聞かせをしていてよかったなと思うエピソードなどあれば教えてください。
娘が赤ちゃんの頃は、話しかけたいと思っても、なかなかうまくできず、気を抜くと無言になりがちでしたが、読み聞かせしていると、絵本の優しい言葉が自分の中にはいってくるのか、自然に絵本のフレーズが口をついて出てくるようになって……。 娘も絵本のことばでケタケタ笑ってくれたりしたのが、とっても嬉しかったです。
最近では、ストーリーものもだいぶ理解できるようになったので、少し文章が長いものも一緒に読むようになりました。 『まいごになったおにんぎょう』(岩波の子どもの本)や『ポケットのなかのジェーン』(徳間書店)を読んだ後は、お人形やぬいぐるみの描写がリアルに感じられたようで 「あおい(娘)ちゃん、ぬいぐるみの〇〇を大事にする!」と宣言していました。お話を聞くことで、他の人の立場に立って考えたり、相手の気持ちを想像したりできるようになったんだなぁとしみじみしてます。
――日々の読み聞かせが、えがしらさんの絵本作りに影響を与えている、と思うことはありますか?
ありますね。たとえば、娘が2歳くらいの時に、西巻茅子さんの『おさんぽさんぽ』(福音館書店)という絵本を何度も読んでいて。 「おさんぽ さんぽ さかみち のぼって ホッホッホ」 というフレーズがあるのですが、娘と一緒に歩いている時にふと私が「おさんぽ さんぽ」と言ったら、娘が「ほっ ほっ ほっ」って返してくれて、「これだ、このリズムだ!」って思ったんです。
当時『あめふりさんぽ』(講談社)のテキストを詰めている最中で 「ちゃぷちゃぷ あるくよ あめふりさんぽ」 というフレーズがあったのですが、 「あめふりさんぽ ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷ」に変更してもらいました。 娘のおかげで、絵本とそれを親子で読んでいるシーンが結びついた体験をさせてもらえて、それが絵本作りのタネになっているなぁと思います。
字が読めるようになっても
「絵本、読ませてくれる?」とこちらが誘ってます(笑)
――それでは、えがしらさんの思い出の読み聞かせ絵本を3冊、教えてください。
『じゃあじゃあ びりびり』
(まついのりこ /作 偕成社)
4か月くらいのときかな……娘がはじめて笑ってくれた絵本です。「かんかんかん……」のページでけらけら笑い出したので、私も夫も「笑った!」っと盛り上がりました。
『どんどこ ももんちゃん』
( とよたかずひこ/作 童心社)
ももんちゃんの疾走感がたまらない絵本。くまさんを突き飛ばすシーンが意外で、私も思わず一緒に笑って読みました。言葉のリズムが気持ちよくて、最後のシーンでは、読んでいる私もほっとあたたかくなりました。娘の気持ちがこちらにも伝わってきたからかもしれません。絵本ってすてきだなーと実感させてくれた1冊です。
『おうちなのね』
(中川ひろたか/文 100%ORANGE/絵 ブロンズ新社)
カミナリのシーンや大雨のシーンがあって、画面が大きく切り替わるので、そのメリハリが刺激的だったのか、何度もじーっと見てくれていた絵本です。「〇〇なのね」とか「おまめのスープ」とか、声に出して読むとかわいくてウキウキしちゃう言葉が、私も大好きです。
――えがしらさんご自身には子どものころ、読み聞かせをしてもらった思い出はありますか?
思い出すのは、母がミヒャエル・エンデの『モモ』や『はてしない物語』を、毎晩数ページずつ分けて読んでくれたこと。小学生の時だったと思います。内容は覚えていないのに「自分で文字は読めるのに、読んでもらうのって楽しい」と嬉しく思っていたことをよく覚えています。
娘も小学生になって、もう自分でもだいぶ字が読めるようになりましたが「絵本、読ませてくれる?」とこちらが誘って、毎晩夫か私で読み聞かせを続けています(笑)。「読む人が変わると、絵本の感じが変わるから楽しい」と喜んでくれるのが、本当に嬉しいです。
絵本の読み聞かせは、「読解力がつく」とか「頭が良くなる」といった効果も唱えられていますが、それだけを期待してやるのではなくて、 何より絵本をはさんで一緒に過ごせる時間が楽しくて愛おしいので、ずっとずっと一緒に読みたいなと思っています。