『おとうふさんとこんにゃくさん』【今日の絵本だより 第53回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おとうふさんとこんにゃくさん』
松谷みよ子/文 にしまきかやこ/絵 童心社 本体900円+税
5月29日は、こんにゃくの日。(なんですって!)
こんにゃくが活躍する絵本なんて、あるのでしょうか……。
はい、あるんです!
しかも、松谷みよ子さんとにしまきかやこさんという贅沢なコンビの、『おとうふさんとこんにゃくさん』。
「むかし むかし
おとうふさんが
たなから おちて
いたたたた
ぜんしんだぼくで
ごにゅういん」
ちょっと衝撃のスタートですが、読む方も聞く方も、最初からぐっと引き込まれます。
「こんにゃくさんが
ききつけて
ぺたりぺたりと
おみまいに
ひとりで いくのも
なんだから
だいこんさんを
さそいましょ」
お見舞いの花束を手にして歩いていくこんにゃくさんが、なんともかわいらしい。
さて、仲間を誘ってみたけれど、だいこんさんはお化粧中、ごぼうさんは大掃除、どちらもすぐには出られません。
仕方なくこんにゃくさんは、ひとりでおとうふさんの病院へ。
「これは これは おとうふさん
おかげんは いかがです」
すると、おとうふさんがさめざめと泣きだして……。
始まりもびっくりでしたが、ラストも「ええっ!」と、なかなかの驚き。
なんとも不思議な、読後感。
それでもまた読みたくなるのは、なぜでしょう。
小さな子に届きやすいよう磨かれた言葉と、ともすればウエットになりそうなお話を、明るく軽やかに描いた絵。
互いの魅力が、響き合っているからでしょうか。
『おとうふさんとこんにゃくさん』は、「はじめての昔話絵本」をテーマに編まれた、「あかちゃんのむかしむかし」シリーズの中の1冊。
懐かしいようで新しいような、せつないようで愉快なような。
こんにゃくの日に限らず、いつでもぜひお読みください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。