3月のテーマは「くつの絵本」【広松由希子の今月の絵本・28】
絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!
3月のテーマは「くつの絵本」
いっぽいっぽ、春です。
花粉やらなにやら飛んでいても、
外を歩くのがうれしい季節。
重い上着を1枚脱いで、
赤ちゃんもとことこうれしそう。
今月は、小さな足たちをよろこばす
くつの絵本です。
まずは、フェルトの赤ちゃん靴が登場。
赤と青の2足、あわせて4人が
みんなでひょこひょこ踊ります。
「くっく くっく そっと しっと」
「ア しょっこ ア しょっこ ア しょっこ しょっこ しょっこ」
長谷川さんの言葉は、日本土着の赤ちゃん語。
ゆかいなリズムに、赤ちゃんをのせます。
つぶらな瞳に、ぽかんと開いた(履き)口、
調子に乗って踊る様は、ハイテンションの赤ちゃんみたい。
しおらしく玄関にいる靴も、
動きたそうに見えてきます。
『くっく くっく』
長谷川摂子/文 小川忠博/写真
矢口峰子/製靴(←これ、ステキ♪)
福音館書店 本体700円+税 2005
さあ、くつを履いて出かけましょう。
歩きはじめたぷくちゃんは、とことこあんよがじょうず。
「とことこ、、、 おっとっと!」
転んじゃっても、だいじょうぶ。
もう、ひとりで立てるんですからね。
あっちへとことこ。こっちへとことこ。
くたびれたら、「とん」と座り込んで、
おかあさんとひとやすみ。
すると、目の前をいもむしさんが、もこもこもこ。
「もこもこ とことこ。もこもこ とことこ」
おしりももこもこ、かわいいあんよ。
そばには、おかあさんのあったかいまなざし。
ゆっくりゆっくり子どもの歩くペースで、
親子の時間が流れていきます。
そして、最後の見返しには、ずらり並んだ子どもぐつ!
どれ履いて出かけよっか……
くつ、大好きになりますね。
『ぷくちゃんのとことこあんよ』
ひろかわさえこ/作
アリス館 本体880円+税 2001
くつは、いつもふたりで、なかよしこよし。
なかよくなくちゃ、やってけません。
三角関係もありえません。
クーくんとツーくんは、ふたごです。
クーくんが兄で、ツーくんが弟。
とことこいっしょに出かけます。
と思ったら、いきなり、
「ブルン ブルン」
ふたりはヘリコプターになって、空の散歩に!
2羽のカラスが乗り込んできたり、
雲まで乗ってきて、怪しい雲行きになったり、
めくるたびに、あれれれれ?
飛んで、泳いで、驚いて、
だれよりも自由気ままな
クーくんツーくん。
史上最強にかわいいくつたち。
子どもたちを自由に解き放ち続けた
長新太さんの作品でした。
遊び疲れて眠ったら、
きっとあしたも、
自由な散歩が待ってるね。
『クーくんツーくんとヘリコプター』
長新太/作
文溪堂 本体593円+税
かわいい老人と、
かわいい足の裏を描かせたら、日本一!
と、勝手ひそかに認定している
松成真理子さんの『ぼくのくつ』を、おしまいに。
ぼくに届いた小包は、
おばあちゃんからの贈り物。
新しい、青いくつ。
「ちょうど いい。
ぴったりだよ ママ」
ほんとは、ぶかぶかだったのに、
うそついて、ウキウキ散歩に出かけたら、
脱げて、すぽーん! 水たまりに、ぼっちゃん!
「ママ ごめんなさい」
「くつ ごめんなさい」
焦らなくても、ゆっくり大きくなる、
子どもも、足も。
幼い心の揺れが、じんわりしみる
子どもとくつの物語絵本。
(なんたって松成さん描く
子どものはだしを最高に堪能できる絵本。)
『ぼくのくつ』
松成真理子/作・絵
ひさかたチャイルド 本体1000円+税 2006
さあ、親子でくつ履いて、
春の散歩に出かけましょ。
広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo
web連載「広松由希子の今月の絵本」
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