2026年5月7日

「ヨシタケさんは、神さまって信じてますか?」ヨシタケシンスケさんのアトリエで聞きました。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・8】

大事なのはきっと、背中の押し方

夢眠 ところでヨシタケさん自身は、誰かに相談ってしますか? 私、まったくしないんで。

ヨシタケ いや、僕もまったくしないです。

夢眠 やっぱり!

ヨシタケ 相談する人はきっとその時点で、本人の中である程度答えが決まっているというか。話を聞いてほしいとか、「大変だね」って言ってほしいだけだったりするじゃないですか。相談をするっていうアクションの中に、「背中を押してね」って、背中を向けてこちらに近づいてくる感じも含まれているはずなので。
要は、背中の押し方ですよね。どこを押したら一番動きやすいのかなっていう。

夢眠 その姿勢がすごく、優しいなと思います。私の場合、ちょっと荒療治に近いのか、相談されていろいろワ〜ッて答えたら、相手の涙がハラリ、みたいなことが結構あって。

ヨシタケ 「語り口が優しい」って言われることはあるんですけど、それは、僕自身が優しくしてほしいからなんですね。「自分が言われたら嫌なこと」を常に考えているので。「こういうことを伝えたいなら、こんな風に遠回しに言ってほしいな」っていう、自分が言われたいことを言ってるだけなんです。きっと人によっては、その回りくどさが響かない、「もっとギュウーッてやってほしいんだ」っていう人もいるじゃないですか。

夢眠 私、多分それなんです。「これぐらいやらないとわからない」みたいな(笑)。

ヨシタケ それは単純に、好みだと思うんですよね。本格的な指圧と、なんか丸いシールをそっと貼る、みたいな。

夢眠 磁気が効く、みたいな(笑)。私は多分、揉み返しがきちゃうタイプなんですね。

ヨシタケ そうそう。だから僕のお悩み相談も「こういう生ぬるい答えは嫌いだ」って思われたら、「じゃあ自分には、どんな答えがいいのかな?」って考えるきっかけになればいいので。自分にぴったりくる、理想のマッサージ屋さんを探し続けるのも、ひとつの人生なんだろうなとも思いますけどね。

最後に人を救うのは、物語だけのはず

夢眠 そうだ、聞いてみたかったことがあって。ヨシタケさんは何かを信仰してなさそうって思ったんですけど、「ちいさな神さま」を作ったりもされているじゃないですか。それは、信じてるっていうよりは……。

「ヨシタケシンスケ展かもしれない」公式グッズ「ちいさな神さま」3960円
『ちょっぴりながもち するそうです』に登場する「ちいさな神さま」が立体に。

『ちょっぴりながもち するそうです』
ヨシタケシンスケ/作 白泉社 1100円

ヨシタケ 結局、最後に人を救うのって医療でもなんでもなくて、物語だけのはずなんですね。「神さまが天国にいて見ててくれるよ」とか、「悪いことをしたら地獄に落ちるよ」とか、「この紙はお金っていって、物と交換できるよ」とか、あらゆることが物語じゃないですか。だから、自分に都合のいい物語をいかに作るかというだけの話で、要は信じる対象を自分で作るか、二千年前からいる神さまにそれを托すかっていう違いだけであって、信じるか信じないかっていう意味では多分同じだし。そこをフラットに見ることで、世の中を面白がっていたいっていう気持ちはあって。それも自分が信仰心がないっていうことの裏返しなんですけど。「だってこの聖なる本に書いてあるでしょ」と言われて、ピタッて考えるのをやめてしまえれば楽だろうなと思うけど、なぜそこでやめられるのかがわからない。

夢眠 「俺が考えた神さま」が、一番最強なんじゃないかっていう。

ヨシタケ そう。で、その神さまも、人と共有できなきゃいけないわけでもなくて。単純に、自分が生きていく上で必要なストーリーに、登場人物として神さまってものがいた方がいろいろ都合がいいと。人生、いろいろ思い通りにいかないことが多いから。そういうときに、自分の場合は神さまも一から作っちゃう方が好みなんです。

夢眠 そう考えると、私は特定の信仰はないんですけど、なんとなく漠然と願うときがあるんです。一体、何に願ってるんだろう。

ヨシタケ いや、そういうものですよね。先の時間がある生き物は、「いいエサがたくさん取れますように」みたいに考えることって、多分本能としてあるはずなんですよ。それが「願い」っていう言葉になったり、その願いの対象として、神さまみたいな形を作ったりとか。「明日晴れますように」とか「ごはんがいっぱい食べられますように」って、願わない人はいないはずなんですよね。「あ、それ、いい願いだねえ」「僕もそれ、願っちゃおう」みたいな、みんなが持っているその部分を共有できると楽しいはずだし、そういうところを面白がれたらいいなあというか。身体や立場が違う、信じる神さまが違う相手とも共有できる、最後の砦が、その願いを作り出す場所なんだろうなあって。そんな風に、ちょっと思いますね。

夢眠 なんか……めっちゃいい話です。ありがとうございました。

夢眠ねむ
ゆめみねむ/2019年、下北沢に予約制の書店「夢眠書店」をオープン。U-NEXT kids「ねむるま えほん」の企画監修・選書を担当。著書に『本の本』(新潮社)『夢眠書店の絵本棚』(ソウ・スウィート・パブリッシング)など。一児の母。

Web:https://yumemibooks.com/
X:@yumeminemu
Instagram:@yumemibooks

ヨシタケシンスケさん
1973年神奈川県生まれ。2013年に『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で絵本作家デビュー以来、MOE絵本屋さん大賞第1位を7回受賞。「ヨシタケシンスケ展かもしれない」は2026年4月24日(金)~6月21日(日)、鹿児島県カクイックス交流センター(かごしま県民交流センター)で開催中。その後、茨城県、宮城県、青森県に巡回予定。https://yoshitake-ten.exhibit.jp/

Web:https://yoshitakeshinsuke.net//

撮影/大森忠明 ヘアメイク/原かほり 編集協力/原陽子

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