
「ヨシタケさんは、神さまって信じてますか?」ヨシタケシンスケさんのアトリエで聞きました。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・8】

教科書が言わないことを、面白く伝えたい
夢眠ねむ(以下夢眠) 本誌の記事でも、「ヨシタケさんの本は子どもが初めて触れる哲学書ではないか」とお話ししたんですが。私、ソクラテスとか会ったことないですけど、ヨシタケさんみたいな感じのおじさんだったんじゃないかと思います。哲学者もいろいろな種類の人がいて、ネガティブそうで健やかな人もいたはずで。『そんなこともアラーナ』のアラーナちゃんも、まさにそんな感じが。

『お悩み相談 そんなこともアラーナ』
ヨシタケシンスケ/著 白泉社 1760円
ヨシタケシンスケ(以下ヨシタケ) そうですね。この本は、負け惜しみの集大成なんですよ。
夢眠 相談へのヨシタケさんの回答に、「ちょっとネガティブさが足りませんね」がすごく多くて、面白くって(笑)。「そんなアドバイスある!?」って。
ヨシタケ そう、やっぱりお悩みっていうのはポジティブさから出てくるものっていうか。「本当はこうなりたいのに、なぜなれないんだろうか?」って、どこかで「なれる」って思ってるから、悩むわけであって。すべてをあきらめた人には、悩みって存在しないはずなんですよ。
夢眠 「こういうことを言葉にしちゃダメって、習った気がする」みたいな言葉が、この本では堂々と書かれていて。「自分より下の人を見て『こうじゃなくてよかった』と思ったらいい」とか、「うわっ、すごい!」って。これを言えるってもう、最強だって思いました。
ヨシタケ そうなんですよ。教科書みたいにきちんとした本も、こういう本も、きっとどっちも大事なはずで。親や先生が言えないことを教えてくれる、近所の変なおじさんみたいな人は、昔はあちこちに転がっていたのに、今は駆逐されてしまった。じゃあそういう真実を何から学ぶかっていうと、やっぱりアニメや漫画や、ドラマだったり、コンテンツの中で「叶わない夢もあるよ」とか「思い通りにいかないこともあるよ」っていうことを、やんわり学んでいくはずなんですよね。絵本作家も、そっち側の人間なので。世の中の身もふたもないことを物語で面白おかしく伝えるっていう、ひとつの役割があるはずなので。教科書が言えないことをいかに言っていくかということには、常にチャレンジしたいですね。

大きい声だけが正解なわけじゃない
夢眠 それって、素晴らしいと思います。私も自分がやっている絵本屋で、子どもや学生としゃべったり、ちょっと相談に答えたりもするんですけど、親や先生とは違う、近所のちょっとヤバいおばさん的なポジションをになっているつもりでいたので。それをヨシタケさんがこの本で堂々とやってるの、いいなって。
「声が大きい人ってこんな風に言うけど」って言ってくださってるのも、めちゃくちゃいいですよね。大きい声だけが正解じゃないし、黙っている人にも思想はあるよって、そうわかることは本当に大事だと思いました。
ヨシタケ そうですね。世の中あるあるっていうか、声の大きい人が世界を動かしがちっていう。「そもそもそういうものだよね」っていう前提というか、人の言うことがちゃんと理解できてる人って、思ったより少ないよねっていう。
夢眠 そう! ねえ!!
ヨシタケ 「これくらい、みんなわかってるよねえ」っていう前提が、もうすでに間違ってるわけじゃないですか。SNSとかでまともな議論なんてできるわけないのに、「できるはずだ」って思って、あーだこーだやってるわけで。それこそ論理的に物事を考えられる人って、きっとみんなが思っている分の10分の1ぐらいしかいない。「じゃあその中で、一番平和な解決方法はなんだろう?」って考えた方が、建設的じゃないですか。こう、無闇に希望にすがらないというかね(笑)。



































