2023年11月3日

昔はドイツの家庭にも性差があった。87歳のひいおじいちゃんが、台所に立つようになった理由【日登美のタベコト in Berlin・59】

 ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。

ドイツのおじいちゃんに学ぶ、台所とジェンダー

87歳ひいおじいちゃん、嬉々として台所に立つ。ドイツでは料理するのは昼ご飯だけ。そのリズムも心地よい。

秋休みを迎えたベルリン、今回はドイツのひいおじいちゃんの家で1週間ホリデーを過ごしました。

ドイツでは男女平等意識が高く、台所にたつのも家事をするのも夫婦で分担するのが当たり前、女性に台所仕事を期待するというのは無礼ですらある、くらいの感覚が一般的のように思います。そうはいっても、ひいおじいちゃんの世代、つまり90歳代から70代くらいまでの戦時中から戦後生まれが育ってきた時代では、日本と同じように女性が台所にたち、家事をするのが当たり前、と考えられていたそうです。

ところが、我がひいおじいちゃんはこの1週間のホリデー中も私たちの食事、全ての準備を担ってくれました。片付けやテーブルセットは私やおばあちゃんの担当、買い出しから献立、お食後のデザートやお茶のケーキはおじいちゃんというチームワーク。87歳のひいおじいちゃんがこれだけの食事を担当できるってすごい! しかも趣味でやっているという感じではなく、暮らしの一部として機能しているのです。そこでひいおじいちゃんに、どうやって料理をするようになったのか?ということについて聞いてみました。

この日のメニューはズッキーニとパルメザンのオーブン焼きに玄米ご飯。美味しかったです!

ひいおじいちゃんのレシピスクラップ。美味しくできたものを集めてる。イタリアンメニューが多い。

ドイツでもかつては性差によって学ぶことや、期待されることが違う時代があったけれど、男性でも料理ができたり、女性でも大工仕事ができたり、どちらにも性差による差別なくできるチャンスを与えることがとても大切だと自分自身が考えていたこと。戦後のドイツ社会では、男はこうあるべき、女はこうあるべき、という考えをなくして行くよう努力してきた歴史があることを教えてくれました。

また、それを実現できたのは、暮らしにその余裕があることも理由としてあげていました。忙しすぎる暮らしの中では、仕事をしながら男性や女性が家で料理をするという肉体的、精神的余裕は生まれにくい。けれど休暇の義務や就業時間の制限などの法律があるので、その余裕が守られている。そういう条件が揃っているのも自由で豊かな食卓や暮らしを築くのに大事なのかも、と。

もちろん、そういった社会的環境だけでなく、ひいおじいちゃんの育ってきた環境にも理由がありそう。子どもの頃はほぼ自給自足の暮らしをしていたそうで、畑の植え付けから世話、収穫から保存食作りまで全て家族でこなしていたので、食事ができる過程を知っているし、美味しいものを食べるのが好き。やっぱり、子どもの頃の食の体験っていうのは大事なんだなぁ。

なんならおじいちゃんも料理する。自分で作って食べられるスキルは仕事して稼ぐスキルと同じくらい大事と考えるドイツ家族。男女関係ない生きる力。

一見していいなぁ、と思うドイツの台所事情ですが、そこには努力の歴史があったんだなぁと知ることができました。ジェンダー問題って暮らしの端々に現れているものなんですね。いろんなあり方があっていいと思うけれど、互いに思いやりを持って、より自由で心地よい食卓のあり方を模索していけたらいいですね。

午後は必ずお茶の時間が。ケーキはひいおじいちゃん作、フルーツパウンドケーキ。お喋りに花が咲く午後。

このケーキはフリードリヒ王女のケーキという名前。家族に伝わる伝統レシピで子どもらと焼いてくれました。お庭のバラと共に。

日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。 

台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)
instagram / @hitomihigashi_b
音声プラットホームvoicyで「日登美のイロイロ子育てラジオ」発信開始!

キーワード:
シェア
ツイート
ブックマーク
トピックス

ページトップへ