2024年7月20日

こ、これは私が知るバーベキューとは違う。ドイツでいう「グリル」に見る菜食の広がり【教えて!世界の子育て~ドイツ~】

海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じこと、違うこと。今回、ドイツからリアルな子育てのようすを届けてくれるのは中原さんです。

BBQ? グリル?

天気のいい週末に友達と集まって外で食べるご飯! といえばグリル。夏になると「今日うちでグリルだからおいでよ」というお誘いが方々からかかります。

ドイツでいう「Grillグリル」って何? 網に乗せて焼くんだからバーベキュー? うーん、ちょっと、いやだいぶ違う。ドイツ人の催すグリルに招待されて行くと、テーブルと椅子に案内され行儀よく座ってフォークとナイフで食べる。肉はどこかと見回せば主催者側の誰かがグリルマイスターとして火のそばに立って肉の焼け具合を見ており、焼けたものからテーブルに運んでくれます。公園や野山でするときもナイフとフォークでそんな感じ。

こ、これは私が知るバーベキューとは違う……とドイツに来たばかりの頃は戸惑ったものでした。私の知るバーベキュー、中原家のものは燃える網の上の格闘技だったはず。箸を持って構え、煙を目にくらいながら焼けたと思われる肉から早い者勝ちで掻っ攫う。「そこにあった肉、私のだったのに!」「名前書いてなかったですけど~」という心温まるやり取りを楽しみながら。

「夫くん、これは全然バーベキューじゃないね?」
「君の実家のとはだいぶ違うね。これがここのスタンダードだよ」
そうなのか。まあたしかにステーキは箸で掻っ攫うにはでかすぎるし子豚の丸焼きはナイフで削ぎながらでないと難しいもんな。

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座って食べるの図。付け合わせにジャガイモのサラダや肉のサラダは欠かせません。

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テーブルが無いところでは丸パンに肉やソーセージを挟んでガブッ!

焼肉用カルビのような、サッと焼いてパクりと口に入れることができる便利なサイズは売ってないので大ぶりの素材をシンプルに頂きます。キュウリやニンジン、果物を丸ごと持っていって齧ったりする我が家はかなり栄養に気をつけている方。

仲良く焼ける多様性

戸惑いといえば、グリルするものの多様さにも戸惑いました。
ドイツにはいろんな宗教やルーツを持った人がいるのでグリルするものも色々。
イスラム系の人たちと食べる時はラムチョップとかスチュク(トルコのソーセージ)やメルゲーツ(スパイシーな子羊のソーセージ)鶏肉などの豚肉以外のメニューになり、ベトナム人と食べると魚介が多く、ロシアやポーランド東欧の人と食べるとシャシリクという串焼き肉(クリームなどでマリネしてある)がメインに。

子どものクラスメイトなんて社会の縮図みたいなもんで超多様、そしてカオスです。グリルをするときは「炭火と網は用意しておくから焼くもの持ってきてね! おにぎりはたくさん作っとくよ!」。いろんな国の人や食習慣の人が集まって焼くといろんなものが仲良く炙られています。お肉以外にも、季節の野菜やきのこ、グリルチーズ、ズッキーニのステーキ、代用肉のソーセージなど。食材や味付けに友達のルーツが見えるようでとても面白いもの。

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友達が持ってくるいろんなメニュー。素材が大ぶりでジューシー!

グリルチーズというのは炭火の上で焼いても溶け落ちないチーズです。その代表格キプロスのハルミチーズは塩気がしっかりあって食べ応えがあり噛んでいるとキュキュッと音がします。他にもカマンベールのような菌をかたくまとわせてチーズが流れないようにしたものや、ヤギのチーズを器に入れてハーブとオリーブオイルとともに炭火にかけるものなど、グリルチーズの世界には幅広い美味しさがあります。
お肉は食べないけど魚は食べるんだというペスカタリアンの友人は、自分で釣ってきたマスやパイク(マスの一種)を網の上に載せ(ドイツで魚を釣るには試験を受けて免許を取得しないといけないんですって)、チーズもお魚も食べないよというビーガンの友人はいろんな野菜を持ってきて炭火にポイ!
ズッキーニは豪快に半分に切って、トマトは丸ごと網の上。玉ねぎは皮ごと熾火(おきび)の中に埋めてしまい、これをちょっと良いお塩とオリーブオイルでいただきます。

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炭火でつくる美味しい野菜。

ズッキーニは強めの火加減で香ばしい焼き目をしっかり目につけつつも、中に火が通り切っていないくらいのが一番美味しい。炭火の中で真っ黒焦げにする玉ねぎは外皮を剥けばとろとろの甘いペーストが出てくるのです。フライパンでは引き出せない味がここに! ホイル野菜は具材が1センチ角に切ってある子どもに食べさせやすい野菜消費メニュー。

菜食、プラントベースになっていく友人たち

以前はビールに漬け込んだ柔らかいお肉が大好きだった友人がお肉を食べるのをやめました。
「まえはお肉食べてたのに、なんで?」とリンゼが聞くと「僕の体はもう十分大きく育ったから嗜好品としての肉はもう要らないなと思ったんだ。体を維持する栄養はパンや豆、チーズなんかからも十分摂れるから」と言います。

別の家族は夫婦でビーガン(肉や魚だけでなく乳製品もなし)に。
「おかあさん、お肉を食べないおうちが増えたね」
「そうだね」
周りを見回せば多くの人が動物由来の食べ物をやめる、または減らすようになっています。
それには多様な理由がありますが、大きな要因としてはやはり環境への懸念と、ヨーロッパで流通する安価な動物由来製品への忌避感なのでしょうか。

以前かわいそうな肉の記事(『覚えがある分ブッ刺さって痛い。安いと買いすぎて、うっかり腐らせてしまった経験は数えられないくらいあります』)に書いたように大量に流通する安価な肉は、安価な飼料と大量の水を使って安く育成されるがゆえに廃棄も多く地球環境への負荷が大きい。育成にはホルモン剤や薬品を大量に使ってあり、狭い畜舎は動物への配慮もなく、人にも動物にも良い所なし。友人は「だから大人はもう食べなくてもいいよね!」ということにしたのですって。

「あ、でも子どもの体には動物性タンパク質が要るから子ども用にはちゃんとした農家のソーセージを買うしミートソーススパゲッティだって作るよ」
という柔軟さも。
「リンゼは農家やお肉屋さんがちゃんとお金もらえる、薬を使ってないお肉が食べたいな!」
と、それは確かに理想的。

「でも出来合いのものを買うと粗悪な肉を避けられないよね」
「お肉はちょっとだけ食べるようにして、いつもお肉お肉お肉! ってむさぼらなければいいじゃん」
リンゼは悟った仏教徒のようなことを言う。
「それは確かにそうかもしれない。ああでも私は肉の味への執着で菜食主義にはなれそうもないなぁ」……ぐぐぐ。豚汁なんてお肉の量は少なくとも肉のかけらがあるのとないのとでは大違い。
そう考えるとドイツ的おうちごはんはお肉をやめやすいのかも? パンに何かのせてシンプルに済ませるスタイルなので肉の代わりにチーズやゆで卵とか。

あとこれは完全に私の偏見だけど、3食バランスよく食べようとか毎日美味しいもの食べたいとか言う思いがドイツの人、希薄な感じがする。食に執着してないから菜食に移行しやすいんではないか? とか。どうだろう。

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のせるのをやめればいい。ドイツのパンには塩胡椒しただけの生の豚肉ひき肉を食べるという恐ろしい文化が~!

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カルテスエッセンと言われるドイツの夕飯、冷たい食べ物。主食はパン。季節の野菜と果物、保存のきく肉や乳製品を並べておわり。

スタイルはいろいろ。
プラントベースな食生活

いきなり全部やめるのは無理だけど、お肉をなるべく減らしてるんだ、という「フレキシタリアン」もいます。その程度はさまざまで「ランチはお肉なしにしようかな」程度の人もいれば「日頃は菜食だけど招待された先でお肉が出たら食べるよ」という人も。柔軟で自由がきくのがフレキシタリアン。

そしておもしろいのがティーン(10代の子たち)の菜食です。レストランでみんながベジタリアン食にしていたり、カプチーノのミルクを植物由来にしている中で、自分1人肉料理や牛乳を使ったカプチーノを注文するのは恥ずかしい、そんな空気が若者の中にはあるというのです。

話を聞くと、友人からの影響やファッションとしての菜食ももちろんあるのだけど、自分たちがこれから生きていく世の中で、少しでも環境負荷を減らしていきたいという思いを持っており、代替カロリーとしての“アボカド” や、代替肉のための“大豆製品” はクールじゃない(格好悪い)んだそう。じゃあ一体何を食べて栄養を補っているのか。ぐんと大きくなる10代の体にはさまざまな栄養が必要ですからとっても気になる。これはまた深掘りしてみたいテーマです。

ドイツに流通しているアボカドは、遠い南国から燃料を使って運ばなければならない上に、育成に多くの水を必要とする環境負荷の高い植物なのです。それを分かった上で選ぶのは「違うよね」と。
10代はそういう話をするんだな、というのも驚きでした。

最近つとに思うのは、醤油と味噌と米の国の食文化は、もしかしたらお肉や乳製品をやめた人に合うのかもしれないな、ということです。このあいだのグリルパーティーでドイツ人のお口に合うかわからない焼く茄子と田楽味噌を持っていったら「おいこのタレは何なんだ、美味すぎて飲める」と肉より先に消えてしまったのです。

最近ではお寿司だけでなくオニギリもラーメンもウドンもすっかりドイツに浸透し、以前にも増して親しまれるようになった日本の味ですが、お肉大好きなこの国で、肉より味噌と野菜がうける事態に遭遇するなんて10年前は考えられませんでした。

私の周りは、肉を食べる量が少なくなっています。でも肉が減った分、いろんな人と持ち寄りグリルするのが面白くなったのは確か。私の娘たちも日本食を持ち寄るようになるのかな。移り変わりが面白くて目が離せません。

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今回の海外ママは
中原さん
結婚を機に夫の故郷ドイツに移住。滞在年数10年を超えてもドイツ語に苦しむ。趣味はレストラン巡り、庭いじり、手芸などなど。掃除と片付けも趣味になったらいいのになあ……といつも思っています。2人の娘がいます。#中原ドイツ子育て Instagram @s_vn

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