2024年3月22日

お笑い芸人・ハリセンボン近藤春菜さんロングインタビュー。芸人の仕事って、ひとりじゃできない。笑ってくれる誰かがいて、はじめて成立するものだから【後編】

いつだって明るくて穏やか、だけど鋭い突っ込みで、見る人を自然と笑顔にしてくれる人気お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜さん。テレビで見せてくれる表情とは裏腹に、芸人になるまでにはさまざまな葛藤があったのだとか。kodomoe webでは、本誌の貴重なインタビューを全編公開。後編では、大人の友達づくりや子育て中の友達がきっかけで始めたという「授乳インスタライブ」についてなどをおうかがいします。

ハリセンボン近藤春菜さんロングインタビュー前編はこちら

こんどうはるな/1983年東京都生まれ。2003年、NSC東京校で同期だった箕輪はるかとお笑いコンビ「ハリセンボン」結成、2004年デビュー。『M-1グランプリ2007』第4位。『土曜スタジオパーク』(NHK総合)、『内村のツボる動画』(テレビ東京)など、レギュラー番組多数。連続テレビ小説『花子とアン』(NHK総合)をはじめ、ドラマや映画にも出演し、俳優としても活躍中。

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不安や恐怖を上回る
「好き」があったからこそ

――NSCに入るとき、ご両親は何かおっしゃっていましたか?

 「反対されたらどうしよう」と思って、なかなか言い出せなかったんですよ。短大の卒業間際になって、本当にギリギリのタイミングで「この先、どうするの?」みたいな話になったときにようやく言えて。しかも、思いが溢れちゃって泣きながら「芸人になりたいから、養成所に入りたい」と伝えたら、「まあ、やりたいことがあるなら頑張ってみなさい」って、まったく反対されなかったんですよ。

私の知らないところで、ふたりで心配したり、話し合ったりしていたのかもしれないですけれど、私の前では一切そういうのを出さずに、ただただ応援してくれて。ありがたかったですね。そういう両親の感じって、私が芸人になった今も変わらないんですよ。

――もしも反対されていたら、どうしていたと思いますか?

小さい頃は「ダメ!」って言われたら「親がそう言うなら、ダメなんだな」って、諦めちゃうタイプだったんです。でも、「芸人になりたい」という気持ちは強かったから、親をどうやって説得しようかとか、すごく考えて行動を起こしていたかな。反対されても改めて話し合いの場を作って、自分がどれだけやりたいかという意志を伝えていたと思います。

私は両親の理解があったけれど、これがほかの家庭だったら、いろいろな事情で反対されることもあると思うんです。結局は親か子どもか、どちらかが折れなきゃいけないと思うんですけれど、そこでただただ親が「反対」って伝えるんじゃなくて、どうして反対するのかをきちんと言ったほうがいいし、子どもの側にそれを越える思いがあるのなら、きちんと話し合うことも大切なのかもしれません。

――初志貫徹ではないですけれど、結果的に今、子どもの頃からあこがれていた芸人のお仕事をされていますが、行きたくてもなかなか行ける世界ではないと思います。近藤さんの原動力は?

ありがたいことに夢を叶えたという感じではあるんですが、「人を楽しませる仕事をしたい」っていうことに勝るやりたいことがなかったから、それに向かって進むしかなかったところもあるんです、私の場合は。私にとってNSCに入ることって、すごく勇気がいることだったんです。でも、自分が好きなことをやるにはそうするしかなかった。不安とか、恐怖よりも勝る「好き」があったから、なんとかここまで来られたのかなと思います。

どうしたらいい?
大人の友達づくり

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――今やお笑いだけでなく、お芝居や司会など、幅広く活躍されていますが。

どのお仕事も楽しくさせていただいているんですけれど、特にお芝居は、違うフィールドにお邪魔するという感覚が強くて。演技のプロフェッショナルのみなさんに囲まれますし、なんとか間違えないようにきちんとしなきゃって、いまだに緊張してしまいます。そろそろ慣れたいんですが……。

――出演されているバラエティやトーク番組を拝見していると、近藤さんは聞き上手だな、と。

単純に、人の話を聞くことが好きなんですよね。なんていうか、私には自分の意見がないなと思うことがあって、誰かの話にすごく影響を受けるんです。友達もそうですし、何か面白いことをしている人と話していると、「どんな人なのかな?」って、もっと深掘りして話を聞きたくなるんです。

――ミュージシャンや俳優の方など、交友関係が広いイメージもあります。

自分としては「みんなに仲良くしてもらってありがたい」という感じなんです。私のマインドやメンタルを良い状態にしてくれる存在が友達なので、いつもすごく助けてもらっていますね。

――大人になると、新しい友達を作ることが難しく感じます。

このお仕事って、番組などでご一緒できても、お会いできるのはそのとき限りになってしまうことがほとんどなんです。「友達になりたい」って思ったら、こちらから行くしかないなと思っていて。これは先輩の南海キャンディーズのしずさん(山崎静代)の影響ですね。しずさんもいろいろなジャンルのお友達がいらっしゃいますが、「あとで後悔するくらいなら、食事に誘ったり、連絡先を聞いたりして、自分から行動を起こしたほうがいい」と、アドバイスをいただいたことがあって。そこから積極的に声をかけられるようになったんですよ。

――子育てをしている方は、ママ友との関係に悩んでしまうこともあると思いますが。

私は経験していないので、一概には言えないし、想像になってしまうのですが……。ママ友との関係って、気を遣うところもあるんだろうなとは思います。アドバイスになるかどうかがわからないのですが、これまでの私の友達づくりを振り返ってみると、待っていても仕方ないな、と。「この人と仲良くなりたい」と思って受け身でいても、そもそも相手は自分に興味がないかもしれない。だったらもう、自分から心を開いていったほうがいいと思いますし。

――でき上がっているママ友同士の輪の中に入っていくときは、特に勇気がいります。

もしかしたら、空気を読まずに飛び込んでしまうのもありかもしれませんよね。誰かに「仲良くなりたい、話したい」と思ってもらえて、いやだと感じる人はいないはずですから。  とはいえ、合わないなって感じたら、無理して合わせる必要もないと思うんですよ。大人同士だけでなく、お互いのお子さん同士の関係性もありますから、大変だとは思いますよ? 子どもに影響しちゃうんじゃないかって、心配にもなるでしょうし。  でも、合わない人たちと一緒にいてお母さんの心がどうにかなっちゃうんだったら、ママ友との関係に捉われすぎないほうがいいんじゃないかなあ。家のことや育児もあって、いつだってフル回転なのに、プラスして人間関係で心をすり減らしてしまうくらいなら、まずは自分の心を保っていてほしいなと思います。

――自分の心を保つ。子育て中は、つい自分のことを後回しにしてしまいがちです。

親のメンタルが健康じゃないと、お子さんのメンタルが不安定になることもあるかもしれないですし。人それぞれの環境や状況はあるけれど、まずはお母さん自身が健やかな気持ちでいられることを最優先してもいいんじゃないかなと思うんですよ。なかなか自由な時間が取れないかもしれませんが、その中でも趣味とか、好きなことをしたり。

インスタライブでエール
きっかけは子育て中の友達

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――忙しい中でも、少しでも息抜きができると、気分が変わることはありますよね。

しょっちゅうはできていないのですが、私、夜中の2時とか3時に起きているとき、たまに「授乳インスタライブ」っていうのをやっていたんです。授乳や夜泣きで起きているみなさんに向けて「頑張ってくださいね」っていう応援の意味も込めて。

――単に眠れない人向けではなく、授乳中の人向けのライブというのがいいですね。

ライブ中、「まさに今、授乳中です」というコメントをいただいて、それを見た別のお母さんが「ああ、自分だけじゃないんだ」って、心強く感じたそうなんです。私、それを見ていて実感したんですよ。すごく当たり前のことだけど、お母さんやお父さんって、毎日すごく頑張っているんだよなあって。もう少し大きいお子さんのいるお母さんからは「卒乳するとき、うちではこうしました」とか、ライブ中のコメントがお母さん同士の情報交換の場になったりして。

そうだ、もしも近所にママ友ができなくて悩んでいるなら、SNSでなら出会えるかもしれない。なるべくいろいろなところに気持ちを向けてみてもいいのかもしれませんね。

――「授乳インスタライブ」を始めたきっかけは?

それこそ子育て中の友達が大変そうだったんです。「子どもが小さいうちは夜眠れないし、忙しいし」っていう話を聞いていて。彼女のためにというわけじゃなくて、子育て中の方に何か私にできることがないかな、と。それでやってみたら、思ったよりもたくさんの方が見てくださったんです。

「夜勤の仕事で休憩中です」というコメントをくれた方もいましたね。「そうか、世の中にはたくさんの仕事があって、この時間に働いている方もいるんだな」って、改めて感じて。自分のインスタライブのコメント上で、いろいろな立場の人がコミュニケーションを取っていて、ああ、やってみてよかったなと思いました。

――「授乳インスタライブ」には、近藤さんが芸人を目指すきっかけになった「誰かを喜ばせたい」「楽しい気持ちにさせたい」という思いがよく表れているようにも感じますが。

友達の子育ての話を聞いて「へえ、そうなんだ」って、相づちを打つだけでは、なんだか心苦しかったんですよ。だから、これは私自身の救済にもなっているんです。ちょっとでも元気になってもらえるように、自分にできることがあるならやりたいし、私には何ができるんだろうって思って。

――自分のやりたいことをやるだけでなく、「誰かのために」という思いを常にお持ちなのですね。

確かに、それはあるかもしれませんね。そもそも「自分が楽しいのが一番」と思ってやってきたところはあるんですけれど、この仕事って、相手がいて、その人が笑ってくれて、やっと成立するんですよ。私の芸人としてのキャラクター的にも、「○○じゃねーよ!」って、自分発信で言えることじゃないですし、ほかの人が振ってくれないとできませんから。誰かとのご縁があって、はじめてできることばかりなんですよ。私が私でいられるのは、人のおかげ。つながりを、大切にしたいなって思うんですよね。

ハリセンボン近藤春菜さんロングインタビュー前編「気づいてくれた人がいたから『私も芸人になっていいのかもしれない』って」は、こちらから

INFORMATION

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『ハリセンボン・近藤春菜の「BAR HARUNA」』
www.youtube.com/@with/videos
さまざまな分野で活躍するゲストを招き、バーを舞台に抜群の聞き出し力で近藤春菜がゲストの魅力を引き出します。『with』(講談社)の公式YouTubeチャンネル内で配信中。

『ハリセンボンOfficial Channel』
www.youtube.com/@harisenbon/videos
ハリセンボンの公式YouTubeチャンネル。毎週金曜日18:00に新作動画をアップ。グルメにゲーム対決、コントまで、ハリセンボンのふたりが思いついたことを気ままにやっています。

インタビュー/菅原淳子 撮影/山田薫 スタイリング/大仲翔 ヘアメイク/谷口友海(kodomoe2024年2月号掲載)

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