タレント・関根麻里さんロングインタビュー。ふたり育児は初めてだから、また自分もママ0歳にリセットしようと思ったんです【前編】
いつでもほがらかな笑顔が印象的な関根麻里さん。プライベートでは二児のママとして奮闘中です。父・関根勤さんとの幼少時の楽しい思い出やご自身の子育てなど、関根さんのエピソードには、子育てのお悩みを解消するヒントが満載です。たっぷりとお話をおうかがいした本誌ロングインタビューを全編公開! 子育て真っ最中のお話をうかがった前編をお届けします。
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せきねまり/1984年東京都生まれ。米国・エマーソン大学卒業後、2006年タレントとしてデビュー。テレビ「COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン」(NHK BS1)、ラジオ「KUSU KUSU」(bayfm)、「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」(NHKラジオ第2)などに出演中。『ラプンツェル あたらしい かみながひめの おはなし』『リトルレッド あたらしい あかずきんの おはなし』(共にベサン・ウルヴィン/作 文化出版局)で翻訳を手掛けた。
ただいま子育て真っ最中
いつだって大わらわ
バラエティから教養番組まで幅広く活躍し、関根勤さん譲りのユーモアとトーク力で楽しませてくれるタレントの関根麻里さん。2014年にシンガーソングライターのKさんと結婚し、7歳と3歳の女の子のママでもあります。このインタビュー当日の朝も、お子さんを送り出してから取材現場へ。ずいぶんとあわただしい朝を過ごしてきたようです。
――子育てをしながらのお仕事、大変ではないですか?
もうね、毎日が大騒ぎです。今日もドタバタ劇を繰り広げてきたところです。わが家では、次の日の髪型と洋服は前の晩に決めておくって子どもたちと約束しているんですけれど、今朝、長女の髪を結ってあげたら「……なんか違う。やっぱり髪をおろしてカチューシャをつける」と言い出して。「ええっ!? 私の頑張りが~!」とか思いつつ、「わかったわかった、そうしよう!」となだめて。次女は次女で「リュックと手提げのバッグ、どっちも持っていく」。持ち物はそんなにないんですよ? 「いやいやいや、手提げはいらないよ」と言うともめちゃうので、「よし、どっちも持っていっちゃおう!」って。これでようやく家を出られると思ったら、長女がカチューシャしてるのを次女がじーっと見て、「私もカチューシャする」って。それで今度は次女がお気に入りのカチューシャが見つからなくて家中をドタバタ駆け回って探しまくるという。
――なんとなく、芸能人の方はお子さんがいらっしゃってもエレガントに朝を過ごしているのかなと思っていました。
エレガントなんてとんでもない!
うちにはエレガントのエの字もありませんね。「おはよう~、今日も素敵な一日にしようね」なんて、おだやかに、さわやかに朝を迎えてみたいものですけれど、現実はそうはいきませんね。
――でも、朝の支度のお話を伺っていると、関根さんがお子さんの思いをなるべく汲んであげようとしていることが伝わってきました。
いえいえ、そんな素敵な話じゃなくて、「ノー!」なんて言ったら長女も次女も大爆発してものすごいことになっちゃうんですよ、うちの場合は。
私の母が言うんです、「麻里のときとぜんぜん違う。この子たちのほうが、爆発力がすごい」って。私は道端でひっくり返ってわあわあ泣いちゃうなんてことはなかったらしいんですが、もう、娘たちはいつだってところかまわずボーン! って。みんながハッピーに過ごせるように、なんとか丸く収めたいというのが私の本音なんです。大泣きで朝をスタートさせるんじゃなくて、なるべく気持ちよく学校や保育園に送り出してあげたいなあとも思いますしね。
とはいえ、応えられないことだってたくさんありますよ。そういうときは「それは無理でーす!」「今日はできないよ、明日にしようねー」って言っちゃいますね。次女の身支度を手伝うのに私の手がふさがっている最中に、長女が「ママ、私にもあれやって、これやって」とねだってくることがあるんですけれど、「ママは今、妹ちゃんの準備で手一杯だよね? 同時にはできないでしょう?」って、「どうして今はできないのか」という理由を言葉にして伝えるようにしています。
――つい頭ごなしに「ダメ!」「そんなこと言わない!」なんて言ってしまいそうです。
私も「ダメ!」って言ってしまうことはあるんです。言っちゃうんですけれど、言ったところで何も解決しなくて。「なぜ、ママはダメと言っているのか」とか、「じゃあ、あなたはどうしてそう思うの?」とか、お互いに納得できるまで話し合うようにしています。長女も次女も「自分はこうしたい」という気持ちをしっかりと持っていて、幼いながらもそれを私に伝えてくれる。そうして娘の気持ちを聞いていくうちに、「そうか、だからこういうことをしたかったのか」と、気づくこともあるんです。
それと、納得できると気持ちがぱっと切り替えやすいみたいなんですよね。「さっきはあんなに泣いていたのに、もうケロッとしてる!」なんてこともしょっちゅうで、逆に私がいつまでもずるずると引きずっちゃったりして。でもまあ、出かける前みたいに時間や余裕がないときは「今はいいから! とりあえず家を出よう!」ってなっちゃいますけれどね。
子どもが0歳なら
ママパパだって0歳だから
――お子さんはふたりともまだまだ甘えたい盛りですよね。ママパパの取り合いも日常では?
本当にそうなんですよ。このあいだ、泣いている次女をあやしているときに長女と私がちょっとしたことで言い合いになって、長女も泣いちゃったんです。そうしたら次女がピタッと泣き止んで、私たちのことを様子見していたんですよね。で、私たちが仲直りした瞬間、妹が「うえ~ん」って泣き出して。「待ってました! 次は私の番でーす」みたいに。
――タイミングを見計らっていたのでしょうか。
きっとわかっているのでしょうね、自分に注目してもらうには自己主張しなきゃいけないって。それでもふたり同時に「ママー!」って来たときは、「ママひとりでふたりを抱っこできないよ。どうしようか、順番にする?」って、3人で話し合ったりして。
私自身はひとりっ子なので、のんびりとマイペースに育ってきたんですけれど、娘たちを見ていると、きょうだいってこんな感じなんだなあって、すごく新鮮なんです。さっきまで大げんかしてたのに次の瞬間には笑い合っていたりとか、私からすると「え、いったい何があったの!?」という感じで。親友であり、同志であり、ライバルでもあり……。きょうだいって、不思議な関係だなと思います。
――上のお子さんが小さかったとき、「きょうだいができる」と知ったときの反応は?
長女が3歳のときに下の子の妊娠がわかったのですが、彼女としては相当葛藤があったみたいです。きょうだいを持つママ友たちからは、「お兄ちゃんやお姉ちゃんになるんだよ」「もうすぐ赤ちゃんがおうちに来るんだよ」って言ったら、子どもがすごく喜んだという話をたくさん聞いていたんです。「じゃあ、うちはどんな反応をするのかな~」なんて、ワクワクしながら「今度ね、あなたはお姉ちゃんになるんだよ。今、ママのお腹にね、赤ちゃんがいるんだよ」って言ったら、「あ、赤ちゃんはいらないで~す」って、クールな反応が返ってきて。
――想定外ですね。
焦りました、思いがけないリアクションで「どうしよう!」と。「ど、どうしてかな? ほら、お友達の〇〇ちゃんはちっちゃい妹のことをすごくかわいがってるじゃない?」って聞いたら、「赤ちゃんはかわいいよ。かわいいけど、うちにはいらないの」と。それまでひとりっ子で、パパやママを独占してきたけれど、赤ちゃんが来ることで何かが大きく変わってしまうって、本能的にキャッチしたのかもしれません。
少し大げさかもしれませんが、子どもにとって、弟や妹が生まれて自分以外に愛情を注がれる存在ができるということは、大人が思っている以上に大きな出来事なんでしょうね。「私だけじゃなくなっちゃう」って。
――確かに、小さな子どもだからこそ感じる、言葉に表せない思いもありそうです。
特に長女は環境が変わったりだとか、突然の変化が得意じゃないタイプ。なおさら複雑な気持ちになったのだと思います。とはいえ、このまま様子を見るというわけにもいかないなと思って。
――どのようにしてお姉ちゃんの気持ちをやわらげたのでしょう。
これはもう長期戦で行くしかないなと、出産までたっぷりと時間をかけて、じっくりと説得を(笑)。「弟や妹がいて楽しいこと、うれしいことをイメージできるようにしてあげるといい」と聞いたことがあったので、「きょうだいができたらね、おそろいの服を着たり、お出かけしたりできるんだよ」「パパママと一緒に赤ちゃんの名前を考えてあげようね」と、ポジティブになれるような話をしていました。だいぶ時間はかかったのですが、だんだんと赤ちゃんが来ることを待ち遠しく感じてくれるようになったみたいです。
とはいえ実際に生まれてみると、どうしても次女にかかりきりになりがちだし、さみしかったみたいですね。「どうして妹ちゃんばかり?」って。実は、小学生になった今でも葛藤しているんですよ。
普段からよく次女の面倒を見てくれるのですが、たまに「妹ちゃんがいなきゃよかったのになあ」って、本音がポロリと出ることがあって。「いなかったら、おやつをもっとたくさん食べられたのに」「私のおもちゃがぐちゃぐちゃにされなかったのに」とか。「そっか、それは大変だったね。ママもお姉ちゃんの気持ちがよくわかるよ。でもさ、楽しいこともいっぱいあるよね? 一緒に遊んだりとか」と言うと、「うん、それはすごく楽しいし、うれしいんだよ。でもね……」って。
――そうなのですね。
日頃から意識的に言葉にして「ママはお姉ちゃんも妹ちゃんも大好きだよー!」って、猛烈にアピールしているんですけれど(笑)、いろんな考えや気持ちがぐるぐるしている様子の娘を見ていると、もっとしてあげられることがないかなあと思ってしまいますね。
私は子育てで迷ったときに思い出す言葉があるんです。長女を出産したときに素敵な助産師さんに巡り合うことができて、その方がアドバイスしてくれたんです、「赤ちゃんが生まれたからといってすぐに親らしくできるわけじゃないんです。ママもパパも、赤ちゃんと同じ0歳。育児ってね、『育自』でもあるんです。ママパパも赤ちゃんと一緒に少しずつ育っていけばいいんですよ」と。
――「育てる自分」で「育自」。
子育てをがんばるぞー!」と気合が入っていた反面、「私、ちゃんと親になれるのかな? この子のお世話ができるのかな?」という不安があったんですけれど、その言葉ですごく気持ちが軽くなりました。「そっか、最初からなんでもかんでも完璧にできなくていいんだ。娘と大きくなっていけばいいんだな」と。
それで、そのアドバイスを拡大解釈して次女が生まれたときに「ふたり育児は初めてだから、また自分を0歳にリセットしよう」と思ったんです。子どもをお世話する経験はあっても、きょうだいの親は未経験。ふたりをいっぺんに育てるなんて、それはもう未知の世界でしたから。
――下のお子さんが3歳ですから、今、関根さんは「きょうだいのママ3歳」というわけですね。
そう考えると、毎日毎日子どもたちとワーキャーやっているのも仕方がないというか、「まあ、こんなもんか」って、肩の荷が下りますね。何かあっても最後には笑い飛ばして、みんな元気だったらそれが一番だなあって。
「今でも父と話します「一緒に遊んで 楽しかったね」って【後編】」インタビュー後編はこちらから!(近日公開)
INFORMATION
『Paddington’s Post パディントンの手紙』
マイケル・ボンド/原案 R・W・アリー/絵 関根麻里/訳
文化出版局 2023年8月11日発売予定
世界中で愛されているくまのパディントン。ロンドンでのブラウン一家との暮らしや、ペルーにいるルーシーおばさんとのリアルなお手紙が6つの封筒のページに入っている楽しい絵本です。
インタビュー/菅原 淳子 撮影/名和真紀子 スタイリング/繁田美千穂 ヘアメイク/上野由可里(kodomoe2023年8月号掲載)