2021年6月7日

吉本芸人で絵本作家、ひろたあきらさんインタビュー「絵本のこと、お笑いのこと、子どもたちのお絵かきのこと」

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新作は、自粛中に作った水槽の中の魚の話

――ひろたさんの絵本の第2弾『いちにち』(KADOKAWA)が、4月に発売されましたね。

ありがたいことに、初の絵本作品『むれ』が発売して1か月もたたないうちに、次の作品のオファーがあったんですよ。でもこれが企画を出しては毎月ボツに……(笑)。さすがに自信がなくなってきて2年が過ぎた頃に、コロナが流行り出しました。急に家にいることが増えて、行き詰まっていたこともあり、いままで作ったものを1回全部忘れよう、企画を考えることやめてみようと思ったんです。そうして家にいたら、「ああ、今の自分って、水槽の中の魚みたいだな……」とふと思いついて。そこから2、3日でできたのが、『いちにち』です。

『いちにち』 ひろたあきら/作 KADOKAWA

4月の緊急事態宣言の中、「はやく外に出たいな」とか、「いままで活字の本なんて読んでいなかったけど、小説でも読んでみようかな」と思ったことそのままを、『いちにち』の中でも表現しました。

遊びの要素も散りばめていて……。たとえば、魚の読んでいる本は、文頭だけ読むと「わんでい(oneday=いちにち)」になっていたり、迷路のページには行き止まりがない。ぼく、迷路の中に行き止まりがあることにずっとストレスを感じていたんです。だから、道をぐるぐる巡っていれば、遠回りでもいつかはゴールできる仕組みにしました。「歩くのをやめなければ、ゴールにたどり着ける」という深いメッセージが込められています!……ってそれは後付けで考えたんですけどね(笑)。

本に描かれている文の頭の文字を横に読むと「わんでい」に。そんな隠れた仕掛けをこっそり潜ませた、とひろたさん。

――楽しい中にもメッセージ性がある。1作目の『むれ』とはまた少し違った内容になっていますね。

『むれ』は読み聞かせ会で盛り上がれる絵本というコンセプトで描いたのですが、『いちにち』は親子での会話を増やしたり、考えながら読み進めたりできる絵本になったらいいなと思って。1ページずつ、全部違った楽しみができる本を目指しました。最後の終わり方も含めて、内容をどう捉えるかは、人によって違いますね。ぼく自身、明るい感じで描いたつもりだったのに、精神的につらいときに読んだら、なぜか同じ内容が心にずっしりきたんです。ツイッターでどなたかが「いまの自分の心境を映す絵本」と言ってくれて、そうなのかもしれない……、という発見がありました。

絵本を作ることは、お笑いのネタを作ることに似ている

――これで絵本2作目となるわけですが、子どもの頃から、絵本作家になりたいという夢はあったのでしょうか?

いや、ぼく全然本を読まない子だったんです。絵は好きだったので、子どもの頃はノートに落書きばかりしてましたし、美術館にはすごく行っていたんですが。勉強は苦手だったけれど、学校には図工や美術を楽しみに通っていました。高校を卒業してからグラフィックデザインの専門学校に入ったのですが、吉本興業に入ってから絵本を出版するまでの8年間は、実はまったく絵を描いていませんでした。

絵を描いたり、ものを作るというのは、お笑いでネタを作る感覚に似ていると思っています。小さい頃から絵を描いて褒めてもらうのが嬉しかったし、お笑いではネタを書いて笑ってもらうのが嬉しい。はじめて描いた絵本『むれ』も、最初から出版しようと思って作ったのではなく、読み聞かせで盛り上がれるものを作りたいという思いが強かったんです。子どもたちが他のどの絵本よりも楽しんでくれる本を作ってみたいと思っていました。

――お笑いでライブをやることと、絵本の読み聞かせをすることは、感覚としては違いますか?

お笑いのほうは、「スベったら死ぬ」ぐらいの緊張感を持ってやっているので、ライブはもうちょっとヒリヒリした感じですね。笑わせる相手も大人ですから。でも読み聞かせ会は、温かい家族に囲まれて、幸せな空気が流れるんです。終わった後、毎回「結婚したいな」って思わされますよ(笑)。

読み聞かせでは、子どもをどう楽しませるかということを大事にしています。子どもってめちゃめちゃしゃべるので、その会話を笑いに変えたいと思っています。現場に行ってみないと、どんな年齢の子が何人来ているのかわからないので、絵本を多めに持っていって、1、2冊読んで手ごたえを見ながら、その場で絵本を選ぶようにしています。お笑いライブでも、前説としてお客さん相手に何かをしゃべる際には、与えられた時間とその場の空気感でどのネタを話すか判断するので、そのお笑いの現場で培われた、現場で判断する力が、読み聞かせ会でも生きているかもしれませんね。

――全然違う仕事のようで、リンクしている部分があるんですね。絵本で、これから作ってみたいものというものはありますか?

子どもが読んでも大人が読んでも楽しいものを、どんどん作っていきたいと思っています。『むれ』や『いちにち』はちょっとメッセージ性がある内容だったので、メッセージなんて何もない! というものもやってみたいです。いろんなバリエーションの作品が作れたら楽しいなと思っています。

撮影/花田梢 取材・文/日下淳子

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