2020年10月12日

平野レミさん・和田明日香さんロングインタビュー。我が家の伝統は「やりたいことをどんどんやれ」【後編】

ユニークで、自由闊達で。平野レミさんの作る美味しい料理は、なにものにも縛られないレミさんそのもののようです。6年前(当時)に和田家の一員になった明日香さんと一緒に、こんなレミさんがどうしてできたのか、その生い立ちと、レミさん流子育て、そして素晴らしき和田家の教育に耳を傾けてください。

前編で、ご自身の幼少期について語ってくれたレミさん。後編では、レミさん自身の子育てについて、また、明日香さんの子育てやまったく関心がなかったという料理についてなどたっぷり語っていただきます。

なお、こちらのインタビューはkodomoe2015年10月号に掲載のロングインタビューをウェブに公開するもので、記事内容は、取材当時2015年のものです。
2019年に平野レミさんの夫の和田誠さんが逝去されました。インタビュー前編では、和田さんとのなれそめなどについて、後編ではご夫婦の子育てについても語っていただいています。前編記事の最後では、レミさんと和田誠さんの想い出の書籍をご紹介します。

ひらのれみ/シャンソン歌手、料理愛好家として元気印の講演会、エッセイ執筆、NHK『ごごナマ』『きょうの料理』などテレビ、ラジオで活躍。また、エプロンやフライパンなどのキッチングッツの開発も行う。特産物を用いた料理で全国の町おこしなどにも参加し好評を得ている。著書に『平野レミの新・140字レシピ』(扶桑社)、『わたしの和だし』(ナツメ社)、『平野レミと明日香の嫁姑ごはん物語』(セブン&アイ出版)、『平野レミのしあわせレシピ』(自由国民社)など他多数。新刊に「新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ」(主婦の友社)も好評発売中。
ホームページ https://www.remy.jp

わだあすか/食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修行を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM出演など、幅広く活動する。2018年、ベストマザー賞を受賞。著書に『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)他。新刊『和田明日香のほったらかしレシピ・献立編』(タツミムック)も好評発売中。

出産の達成感
子育て中に料理家へ

75年、長男の唱(しょう)さん(ロックバンドTRICERATOPSのボーカル&ギター)が、79年には次男の率(りつ)さん(CMクリエイター)が誕生する。

――初産は難産でした。

レミ 14時間、ベッドの上でウンウンウンウンうなっていたら、「お母様からですよ」と一枚の紙切れが届けられて、そこに大きな字で「レミちゃん、息をたくさん吸って口をつぐんでから一気に吐きなさい」って書いてあったの。
他人ばっかりのところで14時間、あんなに孤独なことはなかったから、嬉しくってね。それ見て、「お母さ~ん」って思ってウーッていきんだら、出てきちゃったんですよ。

――母の愛の賜物です(笑)。

レミ そのあと気が抜けて何時間か寝たのかな。気がついたら、枕元に番茶とおにぎりがあったの。その中に梅干しが入っていて、その梅干しのおにぎりの美味しかったこと! あれに勝る美味しいものは今まで食べたことない! やっぱりひとりの人間を産み落とした達成感とか満足感とか、充実感とか、いろんなものが混ざって最高の経験しちゃいましたよ。

明日香 わかります! 出産って、最高に気持ちいいですよね。デトックスっていう感じなの。私も3度の出産では、気持ちよかった思い出しかなくって。

平野レミさん・和田明日香さんロングインタビュー。我が家の伝統は「やりたいことをどんどんやれ」【後編】の画像1

レミ あーちゃん(明日香さんの愛称)のお産は、3回とも軽かったものね。

明日香 産んで、起きたときにぐーんって外で身体を伸ばす、あの快感がもう味わえないかと思うと、また赤ちゃんが欲しくなります(笑)。

レミ ちっちゃいとき、うちに猫がいて、太陽がパーッと照ってる縁側でお母さん猫がおっぱいを子どもにチュッチュチュッチュ飲ませてたの。ひなたぼっこして、気持ちよさそうなのよね。あの姿がよくて、ああいう人になりたいなってずっと思ってた。今、あーちゃんが子どもたちにおっぱいあげてると幸せそうでいいなあって思うのよね。

――率さんが生まれるとき、唱さんが僻まないように気を遣われた。

レミ だって率は小さくて、まだなんにもわからないから、おっぱいだけあげていればよかった。だから唱に一生懸命「いい子いい子」していたら、唱は率を「抱っこさせて」と言ってかわいがってたわよね。うちの息子たち正反対のタイプだけど、とても仲いいの。

――レミさんは、結婚後もシャンソンを歌っておられました。

レミ シャンソンはずっとやってたんだけど、料理の仕事がいっぱい来るようになっちゃって。バンドの演奏で歌って拍手もらうって、気持ちいいの。
でも、歌うときにはお化粧したりドレス着たり、譜面持って出かけたり、音合わせしたり、すごくやることがいっぱいあるのね。料理はうちでパパッと作って、写真撮って雑誌に載せるだけ。だから、人を喜ばせるのは一緒だけども、手っ取り早いのは料理よね。食べられるし、楽しいし。それで料理の仕事の比重が大きくなっていって、唱がちっちゃいときにはいつも家には撮影の人が来てました。

――そもそも料理家になっていかれるのは、和田家に集う人たちに振舞うレミさんの料理が美味しかったからだったとか。

レミ うちに来るすごいグルメな人たちに、冷蔵庫にあるものでちょこちょこっていつもご馳走してたのね。それが縁で、私のところに「簡単な料理をうちの本に載せてくれ」とか、「テレビでやってくれ」と瞬く間にババババババッて舞い込んできたの。料理学校なんか行ってないのに~。

――子育てと仕事の両立は大変だったと思いますが、レミさんのエッセイに印象的なエピソードがあります。唱さんを幼稚園に迎えに行った和田さんに、レミさんが「ありがとう」と言ったら。

レミ そしたら、和田さん「家族の中で誰がやろうといいんだから、ありがとうなんて言わなくたっていいんだよ」って言ったの。

明日香 さすがお義父さん。率さんは誠さんの姿を見て育ってるから、当然やってくれます。だけど、これだけイクメンだ、男女平等だって言ってるのに夫に幼稚園の迎えを頼んでも「嫌だ」って言われる家はいっぱいありますからね。

レミ 和田さんとうちの父は思想的にもそっくりだったのよね。和田さんも私のやりたいことを「どんどんやれ」と言って、すごく応援してくれた。

――男女なんて関係ない、好きなことをやるべしという思想ですね。

レミ だから和田さんと結婚したときに、階段を登ったり降りたりとか、無理をすることがなんにもなかったのね。スーッと真っ平らなところをそのままツッツッツッと同じ世界に移動しちゃった感じ。

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