2020年10月5日

平野レミさん・和田明日香さんロングインタビュー。両親とも「すきにしなさい」絶対「ダメ」って言わなかった【前編】

ユニークで、自由闊達で。平野レミさんの作る美味しい料理は、なにものにも縛られないレミさんそのもののようです。6年前(当時)に和田家の一員になった明日香さんと一緒に、こんなレミさんがどうしてできたのか、その生い立ちと、レミさん流子育て、そして素晴らしき和田家の教育に耳を傾けてください。

なお、こちらのインタビューは、kodomoe2015年10月号に掲載のロングインタビューをウェブに公開するもので、記事内容は、取材当時2015年のものです。
2019年に平野レミさんの夫の和田誠さんが逝去されました。インタビュー前編では、和田さんとのなれそめなどについて、後編ではご夫婦の子育てについても語っていただいています。前編記事の最後では、レミさんと和田誠さんの想い出の書籍をご紹介します。

ひらのれみ/シャンソン歌手、料理愛好家として元気印の講演会、エッセイ執筆、NHK『ごごナマ』『きょうの料理』などテレビ、ラジオで活躍。また、エプロンやフライパンなどのキッチングッツの開発も行う。特産物を用いた料理で全国の町おこしなどにも参加し好評を得ている。著書に『平野レミの新・140字レシピ』(扶桑社)、『わたしの和だし』(ナツメ社)、『平野レミと明日香の嫁姑ごはん物語』(セブン&アイ出版)、『平野レミのしあわせレシピ』(自由国民社)など他多数。新刊に「新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ」(主婦の友社)も好評発売中。
ホームページ https://www.remy.jp

 

わだあすか/食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修行を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM出演など、幅広く活動する。2018年、ベストマザー賞を受賞。著書に『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)他。新刊『和田明日香のほったらかしレシピ・献立編』(タツミムック)も好評発売中。

自然の中で育つ
靴より下駄が好き

――テレビを見ている人たちはみんな、レミさんに興味津々です。自由で明るくて。

明日香 私もです。私も、レミさんの子ども時代、知りたい!

――ですよね(笑)。千葉県松戸の自然の中で育った野性児だったとか。

レミ 木登りや山登りや、近所の男の子を集めて山ん中に入っていって、「迷子になっちゃおう」なんて遊びをしてました。そしたら、本当に迷子になったことがあるのね。小学校の高学年の頃。
夜だったから真っ暗で、怖かったなぁ。ちっちゃい子が泣き出しちゃっ て(笑)、そのあと、お母さんたち が「レミちゃんとは遊んじゃダメ」となってしまった。

周りには畑がいっぱいあったのね。そこでサツマイモやトマトをとってきて、うちの前で「10円」とか「20円」とか書いた紙のお札作って、「はいどうも」って八百屋さんごっこするのね。そしたら、「もうレミちゃんと遊んじゃダメ」って、また大問題になったのよね(笑)。

明日香 泥棒じゃないですか(笑)。

レミ アッハハハ。ちっちゃいときは毎日とっても楽しかった。スカートは履かないで、男としか遊ばなかったのね。女はねちょねちょして大嫌いだったんです。自分のことを「タータン」と呼んでたんだけど、あの頃、私は男だったと思う。
日記を書くときも「私」とは書かなくて、「俺」って書いてたのよね。でも、女が半分入っているから、「俺」って書いてもニンベンがないの。やっぱり私は本当の男になりきれなかったのかなと思ってました(笑)。

明日香 漢字の問題じゃない(笑)。

平野レミさん・和田明日香さんロングインタビュー。両親とも「すきにしなさい」絶対「ダメ」って言わなかった【前編】の画像1

レミさんのお父さんは、詩人でフランス文学者の平野威馬雄(いまお)氏。フランス系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれ、レミさんにも4分の1、外国人の血が流れている。

――平野威馬雄さんからして、素晴らしき自由人です。

レミ 自由な父だったから、そんなときでも私を叱らなかったのよね。ただ「泥棒しても構わないけども、見つかったら泥棒になるんだから」って言うだけ(笑)。

――さすがですが(笑)、躾は?

レミ 2つ下に妹がいて、躾らしきものは「妹に意地悪しちゃダメ」っていうことだけでしたね。父は、意地悪、大嫌いだったから。

――意地悪してたんですか。

レミ 妹は、私とは全然違うねっちょりタイプ(笑)。父と母の留守に喧嘩して、仲直りするでしょ。でも、両親が帰ってくると、今まで仲良く遊んでいたのにいきなり泣くんですよね。だから、「なんで急に泣くのよ」ってバーンとやって、怒られるの。

――「意地悪はしちゃいけない」が父の教えなら、母の教えは?

レミ 両親とも、「好きにしなさい」。母は、優しくておっとりしてて、お嬢さんがそのまま大人になったみたいな人でしたね。母と話しているだけでほのぼのして、リラックスできましたよ。

――小さな頃から料理もお好きだったんですよね。

レミ 大好き! 母が料理上手で、いつも手伝っていたの。私がどんなにひっちらかしても、デタラメ料理やったって、母は絶対「ダメ」って言わなかったんですよね。「あらあら、今日も散らかしたわね、レミちゃん」みたいな感じで、包丁持っても何をしても黙ってくれていた。あれはよかったと思うの。

――それは優れた教育です。レミさんの初めての料理は?

レミ うちの家庭菜園に真夏の真っ盛りに完熟トマトがなっていて、それをうどんにいっぱい入れちゃってね。真っ白いうどんが真っ赤っ赤になるぐらいにコトコトコトコト煮て食べたら、美味しくてねえ。
そういうのが好きで、いろんな料理作りましたよ。デタラメ料理。小学校の5、6年のとき。強制的に教えられる算数や理科は大嫌いだったけど、そのときから私は、自分の五感で楽しめる料理って、こんないいものないなと思ってた。

――ご両親も、勉強を強制することはなかった。

レミ 「勉強しろ」と言われたことも一度もなかったから、高校は、自分で頑張って東大進学率の高い上野高校に入っちゃたのね。親戚がみんな上野高校だったので、なんとなく私も上野高校に入らなくちゃと思って、勉強したら、入っちゃったんですよ。そうしたら中学の校長先生が、父に「まぐれですね」って言ったのよ(笑)。

明日香 失礼ですねえ(笑)。

レミ 高校に行くときは、制服を着て、下駄履いて行ってたのよ。朝礼でいつも、「下駄履いてるもん、出てこい」って呼ばれて、女子は下駄履いてくの私だけだったみたい。靴は踵がギュウッと押しつぶされて、足が自由じゃないから大嫌いだったのね。

――身体から自由でありたい人。

レミ そうそう、そうそう。心も革靴じゃなくてスニーカー気分ね。

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