2018年10月30日

懐かしくてあたたかい、現代の人情絵本 『すきま地蔵』 室井滋さん×長谷川義史さん インタビュー 第3回(全3回)

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次々に建つビルのすきまから出られなくなったお地蔵さん一家。彼らにおつかいを頼まれた小学生の“ボク”は東へ西へ、困っている人に届け物をするために走る——!

室井滋さんと長谷川義史さんの新刊絵本『すきま地蔵』。お二人に絵本づくりからユニークな子ども時代のことをまで、大いに語っていただきました。
文・構成/宇田夏苗 撮影/黒澤義教

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むろいしげる/富山県生まれ。早稲田大学在学中の1981年に「風の歌を聴け」でスクリーンデビュー。数々の映画賞受賞のほか、2012年に日本喜劇人協会喜劇人大賞特別賞、15年に松尾芸能賞優秀賞を受賞。絵本『いとしの毛玉ちゃん』(金の星社)に連動したCDアルバム「8つの宝箱~いとしの毛玉ちゃん~」(日本コロムビア)を同時発売。近刊に初めて自身で描画も担当した絵本『室井滋のてぬぐいあそび絵本「ピトトト トンよ~」』(世界文化社)がある。

はせがわよしふみ/大阪府生まれ。グラフィックデザイナー、イラストレーターを経て、『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』(BL出版)で絵本デビュー。『おたまさんのおかいさん』(日之出の絵本制作実行委員会/作、解放出版社)で第34回講談社出版文化賞絵本賞、『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画劇)で第13回日本絵本賞および第57回小学館児童出版文化賞、『へいわってすてきだね』(安里有生/詩、ブロンズ新社)で第7回MOE絵本屋さん大賞2014第1位を受賞するなど受賞歴多数。

『すきま地蔵』
文/室井滋 絵/長谷川義史

「すきま地蔵の おつかいくん 参上っ!」 ビルのすきまから出られなくなったお地蔵さん一家に、さまざまなおつかいを頼まれた「ぼく」は、困っているひとのため、東西南北の町をかけめぐって大活躍! 大人気コンビが贈る最新絵本は、現代の人情絵本! 読み聞かせにもぴったり! 大好評発売中。
四六倍判変型/定価:本体1300円+税(MOEのえほん/白泉社刊)

 

子どもの頃の“好き”が今につながっている

――お二人はどんな子どもでしたか。

長谷川 僕は大阪の都会でもなく自然が豊かでもない、中途半端な町で育ちました。田んぼがあったので基本、外遊び中心。家に帰ると絵を描くのが好きだったので、お母ちゃんに紙をもらって描いて。チラシの裏紙ですね。ウルトラマンが流行りだした頃で怪獣が戦っている姿を描いていて。その時間がとにかく楽しかった。今は仕事で絵を描いているから。

室井 あははは。

長谷川 いや、それは贅沢なんですよ。絵を描いて暮らすなんて、子供の頃の夢が叶っているわけですから。でもプレッシャーもあるし締め切りがあるし、苦しいこともあるじゃないですか。そんなものがなく無邪気に描きたいものを描きたいだけ描いていた。絵をみんなが褒めてくれたので、得意になってますます調子に乗って描いて。20代の頃は仕事がもらえなくて苦労はありましたけど、小さい頃に好きなものに出会えたのは、本当にラッキーだったと思います。よく「絵が描けないんです」という大人の方たちの話を聞くと、大抵子どもの頃に先生や親御さんに絵を否定されて描けなくなったと。絵は正解がない表現なので、褒めてあげればどんどん調子に乗って伸びると思うんです。

室井 私は雪の多い富山で、家の裏の30メートル先が海という場所で育ちました。雪がない季節は、海に浮かぶテトラボッドの上で鬼ごっこしたり、ぴょんぴょん飛んで渡ったり。波がざぶーんと来た時に走ったり。だから体幹がすごく強いんです。今も片足で立ちながら、せりふを言い続けるとか問題なくできます(笑)。それは子どもの頃の雪遊びとテトラポッドのおかげですよね。

少女時代はフィギュアスケーターに憧れていました。母に金沢でやっていたショーに連れていってもらった時に、ピエロ姿の人が滑ってきて、キラキラしたものを振りかけられてスポットライトを浴びた瞬間、身体中がじんと痺れた。母に「私、スケートの人になりたい」と言ったら、金沢まで習いにいかないといけないからダメだと言われ、もうがっかりして。女優になりたいとはまったく思っていませんでしたが、国語の教科書に載っていた「夕鶴」をクラスでやることになった時、主役のおつうをできるのは自分しかいないって思って、根回ししたり。

長谷川 あははは。

室井 普段は授業中に手もあげられないくらい人見知りだったのですが、芸事に関してはやりたい気持ちが強かったですね。

――それぞれに子どもの頃の“好き”が今につながっているんですね。絵本を通して伝えたいことは何でしょうか。

長谷川 何かを伝えようと思って絵本を描いているわけではなく、子どもたちになんか楽しそうな大人がいる、絵を描いて生きているおっさんもいるんだなと、思ってもらえるだけでいいのかなと。自分はそういう役割なのかなと思っています。

室井 絵本は何回も楽しめますよね。『しげちゃん』なんて絵本ライブで何百回と読んでいて、これが普通の舞台だったら飽きるかもと思うのに(笑)、全然飽きない。毎回少しずつ違うし、自分の名前について考えたことを絵本にしたことで、みんなが名前について話したり、小さい人たちと心が通じる、コミュニケーションできるのが幸せです。私が『小公女』をいまだに忘れないように、『すきま地蔵』が子どもたちにとって、そういう絵本になれればいいなと思っています。

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