落ち着きがない子の叱り方はどうすればいい?【保育士さんの「育児のウラワザ」vol.6】
家庭で育児をしていると、自分の育児がこれでいいのか、心配になることがあります。今回は、「叱り方」をテーマに、保育士養成校での指導も行っている保育園園長の大竹龍さんにお話を伺いました。
保育士:大竹龍さん おおたけりょう/認可保育園園長。保育士養成校で講師を務め、柳沢式運動プログラムの視点で「育ち」を捉え、現場から生まれたあそびを交え紹介している。また絵本のスペシャリスト「絵本専門士」として専門的な視点から絵本の魅力を伝える活動や、「絵本男子モデル」としてWEBで絵本読み聞かせ動画、あそび歌の配信や絵本ライブを行っている。 |
叱るときは短く、泣いても根気よく見守る
――子どもが小さいうちは、毎日何かしら「これはしちゃダメ」「どうしてこんなことするの」「もうこれはおしまいって言ったでしょ」と子どもに叱ることが多いように感じます。あまり叱り続けるのはよくないことでしょうか?
大竹:子どもが気をひきたくてやることも多いので、いい、悪いと一概には言えませんが、お母さんに「叱らないで」というのはなかなか難しいことです。でも伝え方を考えてみるという方法はあります。
危険なことをしていて叱るときでも、怒る時間は短くが基本です。保育園でもイヤイヤ期の子がいて、寝る時間も寝ず、食事の時間も嫌だって言う子がいます。ついわかってくれるまでお説教してしまいがちですが、ダメな理由を長く説明しても、子どもはわかりません。怒られて、わーっとなっているときは、余計に聞こえていないです。
子どもは興奮しているときに、自分でコントロールしてブレーキをかけられません。だけど興奮してスピードを出し切ると、ガソリンがなくなって落ち着くじゃないですか。そうやって気持ちが落ち着いたときに、やめようね、と伝えるほうが効果的です。
だから、たとえばスーパーで「このお菓子ほしい!」って泣いたとき、一度、ごろごろ泣き回っても、見守ってみてください。泣き切ってガス欠でふっと我にかえったときに、「あ、こんなに泣いてもダメなんだ」って子どもは思うんですよ。ダメなもんなんだなって、言われなくてもわかるんです。そうやって落ち着いたときに「こういう理由でダメなんだよ。毎日は買えないんだよ」って言うほうが心に響きます。
――でも見守るってパワーがいりますよね。周りの人が、「そんなに泣いてかわいそう」「虐待なの?」という目で見てくると、辛い状況になります。
大竹:そうですね。毎日はとても無理だと思います。でもできるだけ、大人が叱ったり報酬を与えてコントロールするのではなく、自分で気づかせることが大事なんですよ。
もちろん、保育園でも毎回は見守れません。一人に牛乳を飲ませて、他の子のトイレの世話もしているときに、食べるのもお着替えも嫌だ嫌だと言われてしまいますから。でもなるべく、他のお世話を止めて対応するか、「あとでやってあげるからね」って先が見通せるような声かけをします。
スーパーで泣いてるときなら「じゃあ、おうちで〇〇食べよう」「週に1回ならいいよ」と声かけして、その約束をちゃんと守ってあげれば、毎日泣くことはなくなってくると思います。
次のときにちょっと我慢できたなら、そこで褒めてあげることも大切です。子どもにとっては、ちょっとしたことでも「認めてもらうこと」がすごく嬉しいものなのです。子どもっていまという瞬間しか生きていないから、先週褒めたから、1週間褒めなくていいってことはなくて、やる気になったガソリンがだんだんなくなってくるので、定期的に褒めてあげないとダメになっちゃうんです。でも少し大きくなってくると、そのガソリンをためておくことができるようになります。
また、叱られることが多く、問題行動を起こしがちなときは、自分を見てくれないという思いを、違う形で満たしてあげることも大事です。
あるとき、下の子が生まれた5歳の子が落ち着かなくなって、問題行動が多くなったことがありました。そのときは、保護者の方と面談して、下の子を預けて、ふたりで1日過ごす時間を作ってもらったんです。そうしたら、翌日からすごく落ち着いたということがありました。子どもは一度満たされても、そのガソリンがなくなってくると、また落ち着かなくなってくるので、そうしたら、また様子を保護者の方に伝えたりしてますね。
その5歳の子も、それからは寝る前にお母さんと一緒にお風呂に入るとか、お母さんが読み聞かせをするという関わり方をするようになって、ちょっと変わってきたんですよ。そういう形で、叱る回数を減らせるようになることもあります。