1月のテーマは「1からの絵本」【広松由希子の今月の絵本・49】
絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!
1月のテーマは「1からの絵本」
あけましておめでとうございます。
いろいろあっても、反省山盛りでも(汗)
旧年をなんとか無事に過ごせたことに感謝しています。
さて、1からはじまる新年。
気持ちをリセットして、1日ずつひとつずつ
善行(部屋片付けるとか、ごはん食べ過ぎないとか…)
を積んでいきたいと思います。
絵本初めに、1から数える絵本を選んでみました。
1ページずつ徐々に気分を盛り上げていきましょう。
2016年最初の1冊は、
『1わのおんどりコケコッコー』から、はじめましょう。
小さなリューカくんが、お散歩に出かけて、出会ったものは?
「コケコッコー
1わの おんどりさん げんき いっぱい」
「ガアガア ガアガア
2わの がちょうさん にぎやかね」
「オロロロロー オロロロロー オロロロロー
3びきの くまさん いつも いっしょ」
ロシアの画家が、孫のリューカくんを思いながら、
はじめて創作した絵本。
黒地に太い筆で絵の具をのせた、民俗画のような大らかな絵と、
なんともユニークな擬音語にしびれます。
数はわからなくても、1歳からでも楽しめそうな
カウントブックです。
『1わのおんどりコケコッコー』
イリーナ・ザトゥロフスカヤ/作 こじまひろこ/訳
福音館書店 本体1100円+税 2014
小さい人と読んでも、ひとりで読んでも、
うれしい気持ちがふくらんでくる。
『ぼくたち1ばんすきなもの』も、そんな絵本です。
1から10までの数を読み込んだ言葉遊びで、
三つ子のこぶたの誕生日の1日を、リズミカルに歌います。
「ぼくたち 1ばん すきなもの」
「2こしか ないので じゃん けん ぽん」
「ぼくたち 3にん みつごのこぶた」
「きょうは 4さいの たんじょうび」
子どもの即興うたのような、自由で気楽な展開に、
あどけない雰囲気の絵がぴったり。
『わたしのワンピース』でおなじみの作者ですが、
この絵本は、絵だけでなく、文字も、数字も全部、
ちくちく手縫いの刺繍とアップリケで描かれているんですよ。
フレンチナッツのピンクの花も、
ちょっとゆがんだ表情も、
くいしんぼうなこぶたの家族も……
可愛くて、おかしくて、めでたくて、
口ずさみながら、ほっぺがゆるんでくる数え歌の絵本です。
『ぼくたち1ばんすきなもの』
西巻茅子/作・絵 こぐま社
本体900円+税 2003
数に興味をもつようになった子どもたちと、
存分に「数える」ことを楽しみたいなら、
『おまめまめまめ1-2-3!』は、いかがでしょう。
数えるものは、ひたすら豆! なのですが、
小さいまんまるお豆が、だんだん仲間をふやしながら、
1粒ずつ表情豊かに、いろんな行動を見せてくれます。
さあ、絵の中のお豆を探しながら、数を数えていきましょう。
ちょうちょを見ているお豆が「1」
静かにつりをしているお豆が「2」
ボートをこいでいるのが「3」
親しく語りかけてくる文章にのせられて、
4、5、6……と、カラフルな絵の中の、お豆探しにはまっていきます。
簡単、かんたんと、タカをくくっていると、
まだまだ、どんどん増えますよー。
2桁からが、本番!
親子で、負けず嫌いを競い合いましょう♪
プチプチ、ころころ、ちまちま……
豆好き、数字好きには、たまらない幸福感に包まれます。
『おまめまめまめ1-2-3! ~1から100までかずのえほん~』
キース・ベーカー/作 二宮由紀子/訳
ほるぷ出版 本体1600円+税 2013
最後に、もう1冊。
1から始まる、縁起のよさそうな数絵本を。
『1つぶのおこめ』は、インドの数の昔話です。
インドの細密画のイメージの、金をあしらった画面が美しい。
表紙も、見返しも、新春のめでたい気分に、しっくりきます。
昔、インドに傲慢な王様がいて、
村のお米をほとんどひとりじめしていました。
飢饉がきて、ひもじくて仕方ない村人たちを、
かしこい村娘のラーニが救うお話です。
ラーニは、算数がたいへん得意だったのです……!
王様のかごからこぼれたお米を宮殿に届けたラーニは、
王様からごほうびをもらうことに。
ところが、ラーニが望んだのは、たった1つぶのお米でした。
呆れる王様に、
「きょうは、おこめを 1つぶだけ くださいませ。
そして、30にちのあいだ、それぞれ まえの ひの
ばいの かずだけ おこめを いただけませんか?」
あしたは2つぶ、あさっては4つぶ……さて、30日後には?
観音開きの大画面が、圧巻!
いやいや、あやかりたい、めでたさです。
『1つぶのおこめ さんすうのむかしばなし』
デミ/作 さくまゆみこ/訳
光村教育図書 本体1900円+税 2009
めでたくゆかいな絵本ではずみをつけて、
1からはじめる、まっさらな1年。
なにはなくとも、
平和で、心豊かな年を過ごせますように。
広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo
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