2015年8月23日

8月のテーマは「カミナリ絵本」【広松由希子の今月の絵本・45】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

8月のテーマは「カミナリ絵本」

ピカッ! ゴロゴロゴロ

きたーっ!
家の中にいても、カミナリはこわい。
でも、ちょっとドキドキ、興奮もします。

子どもの頃のカミナリ気分を思い出します。
キャーキャーこわがりながら
ピカッと光ってから何秒でゴロゴロが聞こえてくるか、
「まだまだ遠い」「今のは近い!」なんて
兄弟と言い合ったりしたものです。

カミナリがどこか親しく、日常と遊びの続きにあったのは、
お気に入りのカミナリ絵本のおかげもあるかもしれません。

 

45

まずは、世代を越えておなじみのシリーズより
『だるまちゃんとかみなりちゃん』。
夏にさわやか、空色の表紙です。

同じ「ちゃん付け」でも、おじさん顔のだるまちゃんに比べ、
かみなりちゃんは、かわいい弟キャラ。
空から落ちてきて、泣きながら、
枝に引っかかった「へんな まるいもの」をとってほしいと、
だるまちゃんに頼みます。

奮闘空しく、ふたりでべそかいていると、
お父さんのだるまどんが迎えにきて、
かみなり国に連れていってくれます。

電気あふれるかみなり国は、
だるまや人間の国よりだいぶ進化しているみたい。
1960年代に作られた絵本なのに、
プールに集うカミナリ人たちはハイソだし、
雲に乗って飛び交う様子は未来都市風。

でも、子どもの遊びは、ケンケンパやかくれんぼ、
昔ながらの伝統遊び(少しだけカミナリ仕様の)だったりするのね。

建物や日用品もみんな、2本の角つきカミナリ型。
絵の中の発見を楽しみながら、カミナリと親交を深めましょう。

darumakaminari

『だるまちゃんとかみなりちゃん』
古里子/作・絵 福音館書店
本体800円+税 1968

 

 

『へそもち』も、小さかった頃
ちょっと怯えながら大好きだった絵本。

雨を降らすのが仕事のカミナリですが、
ときどき地上に降りてきて、悪さをします。
なにより困るのは、かみなりの大好物「おへそ」をとられてしまうこと!

おへそがなくなると、
牛は「もう もう」ではなく「ほう ほう」としか鳴けなくなります。
桶屋は「うん」と力を入れると「すん」と抜けてしまい、
桶を作れなくなってしまいます。

村の衆のため、一計を案じたおしょうさん。
槍を持ち出し、五重塔のてっぺんに結びつけると……「にやり」?

憎めないカミナリ。のどかに納得の結末。
渡部茂男さんと赤羽末吉さんの
極上のユーモアをたっぷり味わえます。

大らかな筆で描いた絵は、素朴な味わいですが、
細長いページを上にめくっていく効果は、みごとに新鮮。
黒雲の上のカミナリと、地上の人たちをつなぐ
高さと迫力を体感できます。

hesomochi

『へそもち』
渡部茂男/作 赤羽末吉/絵 福音館書店
本体800円+税 1966

 

 

『ゴロゴロドンドンパラパラパラ』の主人公は、
小さな女の子のララちゃん。

折り紙をはさみでチョッキンチョッキン切っているところへ、
小さな男の子のかみなりちゃんがやってきて、
「やあ、きれいだなあ」
窓から声をかけます。
「それもって そらに あそびに おいでよ」

細かく切った色紙をお菓子の空き箱に入れて、
雲に乗って、世界中を旅して、
「ゴロゴロ ドンドン」
かみなりの音にあわせて、空から降らせるのです。
「パラパラ チラチラ パラパラパラ」

海の生き物たちも、
アフリカの動物たちも、
南極のペンギンたちも、
びっくりしつつ、ニコニコ平和。

ぐいぐい描かれたモノクロ線画に、
散らばる色紙に工作心がときめく。
うれしさこみ上げる、楽しい空想。

なかよしのかみなりちゃんを思い浮かべ、
おやすみ前に読んでも、幸せ。

gorogoro

『ゴロゴロドンドンパラパラパラ』
にしまきかやこ/作 こぐま社
​本体1400円+税 1991

 

 

もっと大きい読者には、
『カミナリこぞうがふってきた』で
強烈なインパクトのカミナリとの出会いを
体験してもらいましょう。

学校帰りに夕立に降られた「ぼく」が雨宿りをしていると、
「ドーン!」

一本角にトラのパンツ(おむつ?)の
巨大な赤ん坊が、目の前に降ってきて、
ぼくの髪の毛はチリチリに。
でもこのおかしな赤ん坊、
どうやらぼくにしか見えていないみたいで……。

リアルな質感のイラストレーター
シゲリカツヒコさんのデビュー絵本。
下から上から、
自在な視点で臨場感を盛り上げます。

カミナリこぞうといっしょに天界に昇り、
カミナリさまの職場体験もできちゃう。
「コラ~ッ」と本気のカミナリが落ちる
クライマックスに、全身しびれるかも。

kozou

『カミナリこぞうがふってきた』
シゲリカツヒコ/作 ポプラ社
本体1200円+税 2010

 


ほかにも、
昔話の『くわばらくわばら』
(長谷川摂子/文 飯野和好/絵 岩波書店 2009)
狂言絵本の『かみなり』
(内田麟太郎/文 よしながこうたく/絵 ポプラ社 2008)など。

日本には昔々から、
カミナリさまが親しく住んでいたんですねぇ。

 

 

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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