2018年12月23日

連載その79 12月のテーマ「縁起のいい絵本」

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今年もいろいろありました。
きもちよく新しい年を迎えられるよう、縁起のよさそうな絵本を集めてみましたよ。

おや、向こうから、どんぶらどんぶらやってきたのは、最高におめでたい絵本『どんぶらどんぶら七福神』です。
富士山を背景に、宝船におなじみの7人の福の神様をのせています。

「ひとつ 
 ひときわ えがおの 恵比寿さま
 じまんの つりざお えんやらほ
 たいが つれたか こりゃ めでたい」

「ふたつ
 ふっくり ほっこり 大黒天
 しあわせ うちだす うちでの こづち
 ほうねんまんさく とんとことん」

語呂のよい数え歌にのって、ひとりずつ神様が紹介されます。
みなぎる力の毘沙門天、よにもきれいな弁才天、いつもにこにこ布袋さま、むびょうそくさい福禄寿、そして、ながいき寿老人。
やっつ、ここのつ、とうと、読んでいるだけで、ふくふくめでたい気持ちに満たされます。

幼稚園の頃から七福神が好きだったという柳原良平さんの80歳の作。巻末のエッセイ「七福神と私」からも、七福神への思い入れが感じられます。
福禄寿の頭をはずすと一回り小さい福禄寿が入っている、入れ子になったマトリョーシカ風福禄寿で遊んだ思い出とか。恵比寿さんだけが純日本人で、あとの方たちはインドや中国からおいでになったことだとか。
人懐っこい神様とのなかよしぶりが伝わってくるのです。


『どんぶらどんぶら七福神』 
みきつきみ/文 柳原良平/絵 こぐま社
本体1000円+税 2011

 

縁起ものの力を借りて運勢を変えたいあなたに、うってつけのめでたい絵本が『えんぎもん』。表紙を開いただけで、おおっ、まぶしい。いや、めでたい。
紅白の見返しに、まねきねこ、おかめ、だるま、くまで、きつね、おきあがりこぼし、まつ、ししまい……あるわ、あるわ、これでもかと縁起ものがぎっしりです。

「わたし」のおじいちゃんのおうちは「えんぎものやさん」。一家で縁起をかつぎながら、楽しくめでたく暮らしています。おじいちゃんは毎朝お店のまねきねこをなで、おばあちゃんは金のなる木の世話をします。おなかの大きいお母さんはトイレ掃除に精を出し、受験生のおじちゃんのお弁当はカツサンドです。
そして、お店で売るのは、お客さんが幸せになるようなものばかり。福を集める「デラックスくまで」や、苦労知らずの「ふくろうの置物」はいかがでしょう?

そんな笑顔のたえない「めでた家」でしたが、急に不運なことばかりが起きるように。どうやら疫病神が住み着いてしまったらしいのです……!

うんうん。ついてないときって、重なりますよね。そこからどう抜け出せるか、気分を切り換えるきっかけがつくれるかどうかが、おめでたさのポイントだと思うの。
めでた家の「秘伝の書」を参考に、新年を明るく過ごしてくださいな。
なにより青山さんの描く家族の絵、福耳に、ふくふくほっぺ。なんともほがらかな福を呼ぶ顔つきがいいですね。笑顔が伝染します。


『えんぎもん』
青山 友美/作 風濤社 
本体1500円+税 2012

 

「笑う門には福来たる」ですが、お正月は伝統や形式を重んじるのも、気分が締まってよいものです。
『しめかざり』の表紙は、赤い地色に新しい緑のワラのしめかざりのデザインが、大胆に美しく、見ているだけで清々しい気持ちになります。

年末になると、なんとなく買って、門や玄関に飾っていますが、それは「年神様」を家にお迎えするため。いつ頃、誰が、どんな風に作っているものなのか。どんな気持ちがこめられているのか。しめかざりについて、大人でも知らないことがたくさん、わかりやすく面白くていねいに描かれた絵本です。

東京で一般に多く見かける、長くてまっすぐな「ゴボウジメ」や、輪の下から房が垂れている「タマカザリ」だけでなく、作者は日本各地を取材されています。
「たわら」や「鶴」や「亀」をかたどったものもあり、豊作や健康や長寿など、いろんな思いでつくられ、受け継がれていることがわかります。
私事ですが、母の実家では、毎年ワラで巨大なエビのしめかざりを作ってぶら下げていたことを思い出しました。残念ながら、あの技術を持っている職人さんはもういなくなってしまったんですよね……。

最近はクリスマスリースみたいなモダンなデザインのものもふえて、それはそれで楽しいですが、こんな美しく画面構成されたノンフィクション絵本で学ぶ、日本の伝統というのも、かえって新鮮ですてきに思えます。
自分で読むなら、小学校中学年くらいからかな。親子でどうぞ。


『しめかざり』
森 須磨子/文・絵 福音館書店 
本体1300円+税 2010

 

しめかざりも飾ったし、大掃除(という名の小掃除)も、おせちの準備も一通りすんだ、大晦日。めでたい2色の歌合戦や、一年の災厄を断ち切る年越しそばもよいけれど、やっぱり締めは『じょやのかね』。

この絵本は、男の子がはじめてお父さんと除夜の鐘をお寺へつきにいくという、大晦日の体験を版画で描いたもの。
小さい妹は眠たそうだけど、「ぼく」は、だいじょうぶ。新しい年がくる瞬間を「ぜったい みのがさないぞ」と決意はかたいのです。
厚手のセーターに長くつ下、コートを着込んで、はりきって出かけます。

寒くて暗い町。はじめての、特別な夜。早足のお父さんと手をつなぎ、時々小走りになるぼく。誇らしさと緊張感が伝わってくる、静かな版画です。
「12じまで あと なんぷん?」 

甘酒のあたたかさ。線香のけむり。おなかに響く鐘の音。白黒の画面が五感を開き、想像をかきたてます。
実際に鐘をつくことはかなわなくても、しんとした日本の年越しの空気を、絵本から感じることができるでしょう。


『じょやのかね』 
とうごうなりさ/作 福音館書店 
本体1200円+税 2017

 


もろもろの煩悩はさておき、年明けの書き初めならぬ、読み初めはなんにしようかな?
げんかつぎのだんなさんと、でっちのさだきちの元旦を描いた落語絵本『お正月』(桂文我/文 国松エリカ/絵 BL出版 2018)は、徹底的に「縁起」にこだわったゆかいな新刊。おっとり笑い初め。  
縁起ものがつまった『十二支のお節料理』(川端誠/作 BL出版 1999)や、
地球上のみんなが互いにめでたがる『おめでとう』(茂田井武/絵 広松由希子/文 講談社 2008)も、よい一年のはじまりに。

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『はしれ、トト!』(日本絵本賞翻訳絵本賞、いずれも文化出版局)、『ローラとつくる あなたのせかい』(BL出版)など。「MOE」本誌でも、世界の絵本を紹介中。

web連載「広松由希子の今月の絵本」

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