2012年6月9日

6月のテーマは「かえるの絵本」【広松由希子の今月の絵本・8】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

6月のテーマは「かえるの絵本」

いきなり自慢で恐縮ですが、
わたしの唯一の特技は「かえるの鳴きマネ」です!
(大人が自慢することでもない気がしますが…)

先日は酔った勢いで、元動物園飼育係の絵本作家
Aさんの前で、ゲコゲコやってしまいましたが、
「うまい!」とほめていただきましたよ。えっへん。
(わたし以上に酔っていたAさんは、覚えてないと思いますが…)

6月の絵本は、そんな特別に親近感のある
「かえる」をテーマに選んでみました。
大好きな絵本のかえるたち。いるわいるわ……
並べて見ていたら、ちょっとぬめぬめするような、
気持ち悪さもくせになる、かわいい絵本たちをご覧あれ。
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かえるといえば、筆頭はこれ。 
アメリカでも日本でも、愛され続けて半世紀、
『ゆかいなかえる』です。

水の中、ゼリーみたいな卵がいっぱい。
そのうち四つだけが、魚の食事にならずに残り、
しっぽがついて、足がはえ、四匹のかえるに育ちます。

潜ったり、泳いだり、遊んだり、歌ったり。
このかえるたちは、陽気でしたたか。
大きなサギやカメが近づいても、さっと葉っぱにかくれんぼ。
笑いながら天敵を翻弄します。

文も絵も、リズミカルで軽やか。
食いつ食われつ厳しい自然の摂理も、
いしいももこさんの名訳で、湿っぽくなく学べます。
キープスの絵は、心ウキウキ、体むずむず踊りたくなります。

開くたびに、見返しいっぱいのおたまじゃくしが、うれしく迎えてくれる本。
絵本 ゆかいなかえる
『ゆかいなかえる』
ジュリエット・キープス/作 いしいももこ/訳
福音館書店 定価945円 1964

 

 

かえる好きにはたまらない
『999ひきのきょうだいのおひっこし』は、
999個の卵から、999匹のかえるが、ちゃんと「かえる」絵本です。
おたまがみんなかえるになると、小さな池はぎゅうぎゅうづめ。
お父さん、お母さんに連れられて、みんなで引っ越しすることに。

列になってピョンピョンいくと、空からトンビが急降下、
「ぐわしっ!」
捕まってしまったお父さんを助けようと
お母さんが跳びつくと、
子どもたちも次々に
「どこに いくの?」「まってよーう!」

空飛ぶ1001匹の壮観!
白く抜けた空間に、緑の子がえるたちが描く、美しく楽しい意匠。
絵本 999ひきのきょうだいのおひっこし
『999ひきのきょうだいのおひっこし』
木村研/文 村上康成/絵
ひさかたチャイルド 定価1050円 2004

 

 

空飛ぶかえるといえば、不思議で不気味にステキな本、
『かようびのよる』もありましたね。

「かようび、よる8時ごろ…」怪事件は起こります。
夜中、人間の町は、宙を舞うかえるたちの天下に。
そして夜明けとともに、かえるは現実に「かえる」のでした…

鬼才ウィーズナーの初期代表作。
いたずら心に満ちた画面は、小さい人から大人まで、
読んでも読んでも飽きません。
絵本 かようびのよる
『かようびのよる』
デヴィッド・ウィーズナー/作 当麻ゆか/訳
徳間書店 定価1470円 2000

 

 

まだまだ普通のかえるじゃ飽き足らない人には、
中央アメリカの熱帯雨林からやってきた
『アカメアマガエル』をご紹介します。
緑のからだに赤い目玉がキョロキョロリ。

熱帯の色鮮やかな生き物を間近で見つめて。
臨場感たっぷりに物語が展開する
迫力の写真絵本ですが、
このかえるの愛らしい寝顔には、
かえる好きじゃなくても、ぐっとくるはず?
絵本 アカメアマガエル
『アカメアマガエル』
ジョイ・カウリー/文 ニック・ビショップ/写真
富田京一/監修 大澤晶/訳
ほるぷ出版 定価1260円 2005

 

 

もう、かえるはたくさん! という人には、ごめんなさい。
最後に国語の教科書などでもおなじみの
「がまくんとかえるくん」で、ほっとしてください。

『ふたりはともだち』をはじめ、全4冊のチャプターブック。
やさしいユーモアに包まれる掌編は、どれも味わい深く、
小さい人からから大人まで、寝物語にもぴったりです。

今夜は『ふたりはいっしょ』をベッドのお伴に。
散らかった部屋から目をそらし、ふとんをかぶる
「あした するよ」のがまくんとか、
置き手紙をして、幸せな物思いにふける
「ひとりきり」のかえるくんとか、
どうも他人とは思えないかえるたち。
「ぼくは うれしいんだよ。
 ……
 じぶんが 1ぴきの かえるだ ということが、
 いい きもちだった。
 ……
 それで ひとりきりに なりたかったんだよ。
 なんで なにもかも みんな
 こんなに すばらしいのか
 その ことを
 かんがえてみたかったんだよ。」

そんな「いい きもち」の朝が迎えられますように。
絵本 がまくんとかえるくん
「がまくんとかえるくん」シリーズ
『ふたりはいっしょ』
アーノルド・ローベル/作 三木卓/訳
文化出版局 定価各998円 1972

雨がうれしいかえるたちの絵本で、
梅雨の日も親子で楽しくお過ごしください。

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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