『おてがみであいましょう』【今日の絵本だより 第303回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おてがみであいましょう』
木村いこ、木村セツ/作 理論社 1485円
7月23日は、ふみの日。
おてがみ以外の連絡ツールもさまざまに充実している昨今ですが、それでもおてがみが書きたくなるような一冊、『おてがみであいましょう』をご紹介します。
新しいおうちにお引越ししてから、なかなかおばあちゃんに会えなくなった、くまのマルちゃん。
お引越し前は、マルちゃんが生まれた時からずっと、おばあちゃんと一緒に暮らしていたのです。
「おばあちゃん、げんきかな? あいたいな」
と、さみしさがつのるマルちゃん。
すると、おかあさんが言いました。
「マルちゃん、おてがみで おしゃべりしたら どう?」
マルちゃんは早速、おばあちゃんにおてがみを書くことにしました。
大きな紙とクレヨンを用意して、おばあちゃんから届いたりんごで、おかあさんが作ったりんごパイの絵を描いたら、
「おばあちゃんへ
りんごおいしかったよ!
ありがとう! マルより」
と、文字も書き入れました。
封筒に入れて、ポストへコトン。
数日後、おばあちゃんからは、新聞や折り紙をちぎって貼ってつくったりんごパイの絵のお手紙が届きました。
マルちゃんのりんごパイの絵があまりにおいしそうだったから、おばあちゃんもつくってみたんですって。
そうして、マルちゃんとおばあちゃんの往復書簡はどんどん続きます。
孫のマルちゃんとおばあちゃん、お互いを思うふたりのやりとりが温かくて、優しくて。
作者は木村いこさん、木村セツさんのコンビ。
木村セツさんは、89歳から始めた新聞ちぎり絵が話題となり、作品集『90歳セツの新聞ちぎり絵』 (里山社)も刊行された話題の人。
木村いこさんは、セツさんの実のお孫さんです。
大切な人に会えない日が続いても、「だいすき」の思いはおてがみにのせて届けられる。
読み終えた後は、『おてがみであいましょう』というタイトルが、じんわりと胸にしみてきます。
そしてラストシーンから続く裏表紙にも、幸せがぎゅっとつまっています。
どうぞお見逃しなく。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。