『はるのクリスマス』【今日の絵本だより 第261回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『はるのクリスマス』
ティエリー・デデュー/作 やまもとみき/訳 化学同人 2310円
皆様、クリスマスはいかがお過ごしですか?
前回に続けてクリスマス絵本の新刊、今回は翻訳絵本の『はるのクリスマス』をご紹介します。
ふくろう、こまどり、のねずみ、はりねずみ、りす。
5匹の動物たちは、いつも一緒の大のなかよし。
おしゃべりしたり、戦いごっこをしたり、一日中遊んですごしています。
でも11月になると、いつもは明るいはりねずみが、だんだんしょんぼりしていきます。
冬が来ると、はりねずみは冬眠しなければならないのです。
他の4匹も、何カ月もの長い間、はりねずみと離ればなれで過ごすことが辛くてたまりません。
毎年クリスマスは、5匹で一緒に祝うことができないのです。
緑のもみの木や白い雪、プレゼントやごちそう、はりねずみだけがあの特別な空気を味わえないまま。
するとある年、こまどりがいいことを思いつきました。
「クリスマスを はるに おいわいすれば いいんじゃない?
そうすれば、きっと みんな あつまれる!」
そして、次の春。
みんなはわくわくしながら、クリスマスの準備をします。
さあ、はじめての春のクリスマスは、うまく行くのでしょうか?
飾りたくなる立派な大ぶりのサイズ、リアルに描かれながらも親しみやすい動物たち。
クラシカルな外国の絵本が好きな方には、きっと喜ばれる一冊です。
前と後ろで違う見返しの妙が、サプライズのプレゼントのようで、また素敵。
なにより、大事な友達を思う仲間たちの優しさに心がほうっと温まる、クリスマスにふさわしいハートウォーミングな物語です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。