2021年11月21日

『ぼくのママは うんてんし』【今日の絵本だより 第253回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ぼくのママは うんてんし』【今日の絵本だより 第253回】の画像1『ぼくのママは うんてんし』
おおともやすお/作 福音館書店 1430

1123日は、勤労感謝の日。
それにちなんでお仕事の絵本、『ぼくのママは うんてんし』をご紹介します。

のぞむのママは、電車の運転士。
東京を東西に走る、オレンジ色の中央線を運転しています。
パパは、病院に勤める看護師。
のぞむと妹のあゆみが通う保育園では、毎日線路の上を渡る跨線橋こせんきょうを通って散歩に行きます。
跨線橋からは、線路を走っている中央線もよく見えるのです。

もうすぐ、ママの誕生日。
のぞむとパパは、その日は跨線橋の上から、ママの運転する電車に向かって
「ママ、たんじょうび おめでとう!
と旗をふろう、と計画します。
パパが3時に保育園にお迎えに来たら、330分までに跨線橋に。
ママの運転する中央線、特別快速高尾行がそこを通過するのは、351分。
ママの大好きなハートを描いた旗を作り、秘密の計画に張り切っていたのぞむですが、当日は雨となり、保育園で思わず涙。
ようやく晴れて一安心、と思ったら、パパが急な手術の対応でお迎えに来られないと保育園に電話が来て……

一難去ってまた一難、のぞむのピンチに、こちらもドキドキ。
ママの運転風景の実況とともに、のぞむの準備しているサプライズはどうなるのかと、手に汗握る展開です。
『ぼくのママは うんてんし』の初版は、2012年。
9年前に刊行された作品ですが、今でも充分新しく感じます。
ということは、9年経ってもまだまだ「電車の運転士のママ」「看護師のパパ」が珍しい世の中ということだよね……とも思いつつ、こうしたジェンダーにとらわれないお仕事の絵本を読める子どもたちに、希望を感じます。
ママやパパの仕事風景、たくさんの電車の絵も魅力的ですが、大人にとっては、ママもパパも、のぞむもあゆみも、保育園のお友達も先生も、みんなが毎日支え合って「仕事」と「暮らし」は回っている、そんな実感も温かく胸に残ります。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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