『うどん対ラーメン』【今日の絵本だより 第221回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『うどん対ラーメン』
田中六大/作 講談社 1320円
ご存知でしたか?
7月2日は「半夏生(はんげしょう)」、そして「うどんの日」。
節分や八十八夜と同じ、雑節のひとつの「半夏生」は、農家にとって大事な節目の日で、昔はこの日までに田植えを終わらせるのが習わしでした。
うどんで有名な香川県では、半夏生に農作業の労をねぎらってうどんを食べる習慣があり、1980年に香川県生麺事業協同組合が7月2日を「うどんの日」に制定しました。
そんな本日、うどんの日に、おすすめしたい一冊はこちら。
7月に読むには熱すぎるかもしれない、『うどん対ラーメン』です。
ある日、うどんの家に届いたのは、ラーメンからの手紙。
「うどんへ。
そろそろ、うどんと ラーメンの どちらが
おいしいのか、きめようでは ありませんか。」
戦いの日は日曜日、場所はつるつる公園。
なかなか姿を見せないラーメンを、ひとり待つうどん。
そこへ、
「ぺちん! ぺちん!」
空から、もちもちナルトしゅりけんが!
そう、ラーメンのしわざです。
「ひょっひょっひょ! うどんよ!
たたかいは すでに
はじまって いるのですよ!」
不敵な笑みを浮かべるラーメン。
さあ、熱い戦いの始まりです。
ラーメンが自慢のチャーシューで相手の動きを封じる、チャーシューかぶせ。
うどんがマントのように広げたあぶらあげで空を飛ぶ、きつねとびの術。
互いに一歩も譲らぬ戦い、ラーメンはついに呪文を唱え、秘密の術を使います。
「いでよ! ラーメンモンスター!」
最初から最後まで、手に汗握る怒涛の展開。
ヒーローバトル好きのお子さんには、猛烈におすすめします。
ふだん絵本に興味の薄いパパとお子さんでも、きっとはまること必至。
そもそもうどんとラーメンの対決というだけでも予想外なのに、二転三転四転、最後の最後まで「ええっ! そう来る!?」とびっくり続き。
家族みんなで、おなかの底から笑える絵本です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。