『あいちゃんのひみつ』【今日の絵本だより 第197回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『あいちゃんのひみつ』
竹山美奈子/取材・文 えがしらみちこ/絵 玉井邦夫/監修
岩崎書店 本体1600円+税
3月21日は、国連制定の「世界ダウン症の日」。
『あいちゃんのひみつ』は、ダウン症をもつあいちゃんが、特別支援学校から地元の小学校に転校したときに、あいちゃんのママがお友達に読んだお手紙を絵本にした作品です。
「あいちゃんは、
しょうがく4ねんせいにしては ちいさくて、
くっきりした ふたえのめは、ちょっとつっていて、
『ママに にてないね』って よくいわれます。」
それは、あいちゃんが生まれつきダウン症という障がいをもっているから。
障がいのこと、ダウン症のこと、あいちゃんのママは丁寧に説明を始めます。
「ダウン症」という名前の由来、染色体の数の話、見た目や体の特徴。
子どもにもわかる言葉で、ひとつひとつ、無理なく理解が進みます。
速く動けない、はっきりしゃべれない、体温調節が苦手。
あいちゃんには大変なこともいろいろあるけれど、そればかりではありません。
「あいちゃんは、 ほんよみが じょうず。
ダンスが じょうず。
からだが ちいさくて、 なにをするにも ゆっくりだけど、
さいごまで あきらめない。
このがっこうで、 みんなの まねをすることで、
もっともっと できることが ふえるとおもって、
てんこうしてきたんだよ。」
障がいの絵本だと構える必要は一切なくて、読み終えた後には、「ダウン症の女の子のお話」から、「頑張り屋のあいちゃんの毎日のお話」に認識が変わるはず。
優しさと親しみやすさと、そう、あいちゃんの名前のように、愛にあふれた絵本です。
本書に先立ち刊行されている、自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんが主人公の『すずちゃんののうみそ』(竹山美奈子/文 三木葉苗/絵 宇野洋太/監修 岩崎書店)も、あわせておすすめします。
発売中のkodomoe4月号「多様性に触れる絵本」特集では、『あいちゃんのひみつ』をはじめ、さまざまな違いにふれて、理解につながる絵本26冊をご紹介しています。
大事なのは、最初のきっかけだけ。
ひとつ知ることで、ぐんと進める、うんと広がる。
親子でこうした絵本を読むと、大人よりも子どもの方が、柔らかく広い心で「違い」を受け入れることを実感し、またひとつ絵本の魅力に感じ入るのです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。