『やまこえ のこえ かわこえて』【今日の絵本だより 第188回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『やまこえ のこえ かわこえて』
こいでやすこ/作 福音館書店 本体900円+税
ご存知ですか?
2月11日は、初午いなりの日。
初午とは、2月最初の午(うま)の日のこと。
この日は稲荷神社のご祭神が降り立った日であると伝えられ、全国各地の稲荷神社では、五穀豊穣を願って祭事が行われます。
また、この日は一年で最も運気が高まる日とされ、 稲荷神社のお使いとされるきつねの好物、油揚げを使った「いなりずし」を食べると、福を招くと言われています。
そこで一般社団法人全日本いなり寿司協会が、初午となる日に近い「建国記念の日」と同じ2月11日を「初午いなりの日」に制定しました。
そんな日におすすめの絵本は、こちら。
『やまこえ のこえ かわこえて』をご紹介します。
「やまこえて やまこえて
きつねの きっこが おでかけです。」
夜遅くにかごを手に下げて、きっこは一人でどこへ行くのでしょう。
ふもとの町のお豆腐屋さんに、あぶらげを買いに行くのです。
道々出会った、おつきさまと、ふくろうのろくすけと、いたちのちいとにいが、きっこについてきてくれました。
みんなでお豆腐屋さんにたどり着き、
「くださいな、あぶらげ 100まい」
すると、
「やあ きたね。」
と、お豆腐屋さんも慣れた様子。
100枚でなく、おまけで110枚、渡してくれました。
さあ、今度は帰り道。
「かわこえて かわこえて
きつねの きっこが おかえりです。」
そこへ、誰かの声がしました。
「こわいぞ~ こわいぞ~
あぶらげ ぜんぶ おいていけ!」
……きっことみんなは、無事におうちに帰れるのでしょうか?
『やまこえ のこえ かわこえて』は、『おなべおなべ にえたかな?』(福音館書店)でもおなじみの、きつねのきっこのシリーズ。
「やまこえて やまこえて」「のこえて のこえて」と、リズミカルな言葉の繰り返しが、読者をお話の中へすうっと誘います。
きっこのあぶらげ110枚が、どんなにおいしそうないなりずしになったのか。
夜の冒険のゴールを、ぜひ見届けてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。