『つるかめ つるかめ』【今日の絵本だより 第149回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『つるかめ つるかめ』
中脇初枝/文 あずみ虫/絵 あすなろ書房 本体1200円+税
これまでの日常が一変して、モヤモヤと不安の晴れないこの数カ月。
落ち着かない心を優しくなでてくれるような、おまじないの言葉を集めた絵本が発売になりました。
『つるかめ つるかめ』です。
雷がごろごろ鳴ってきたら、
「くわばら くわばら」。
地震でぐらぐら揺れたら、
「まじゃらく まじゃらく」。
それから、これは子育て中の皆さんなら、使うことも多いでしょうか。
「ちちんぷいぷい ちちんぷい
いたいの いたいの とんでいけ
とおい おやまへ とんでいけ」
ファーストブックのように赤ちゃんに読むもよし、文字を追えるようになった子のひとり読みにもよし。
もちろん、おやすみ前の一冊にも。
ゆっくりと読めば、心地よい響きのおまじないの言葉と、あずみ虫さんの明るくのびやかな絵が、心をふんわりと温かく包んでくれます。
思いもよらない病気が、世界中で流行している現在。
作者の中脇初枝さんは、あとがきにこう記しています。
「そんな、自分の力ではどうしようもないことがあったとき、むかしの人たちは、おまじないをとなえてきました。」
思いがけない何かが起こった時、
「どきどきするのも、こわくなるのもあたりまえ。
おくびょうで、こわがりでも、だいじょうぶ。」
大人になったからといって、万能の人になれるわけじゃない。
怖いものが突然、消えてなくなるわけじゃない。
そんなとき、大人にも子どもにも寄りそって、勇気づけてくれるおまじないの言葉。
少しの懐かしさと一緒に声に出してみれば、はるか遠い昔の人たちに、親しく励まされているような。
そしてもっと大きな何かにも、守られているような。
他ならぬ、一番身近な自分自身も、自分のことを勇気づけてくれているような。
「つるかめ つるかめ」という言葉を初めて聞いた人は、どんなときに使うおまじないか、ぜひ絵本を開いて、確かめてみてくださいね。
由来が面白い、病気よけのおまじないものっていますよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。