『ともだちのしるしだよ』【今日の絵本だより 第136回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ともだちのしるしだよ』
カレン・リン・ウィリアムズ、カードラ・モハメッド/作 ダーグ・チャーカ/絵
小林葵/訳 岩崎書店 本体1600円+税
6月20日は、世界難民の日。
『ともだちのしるしだよ』は、難民キャンプに暮らすふたりの女の子の物語です。
パキスタン・ペシャワールのキャンプに救援物資のトラックが着き、大勢の人が押しかけて物資をつかむ中、リナはようやく片方だけの黄色いサンダルを手にしました。
10歳のリナは、もう2年も靴をはいていません。
サンダルのもう片方をはいてそばに立っていたのは、初めて見る女の子、フェローザ。
ふたりは翌日から、そろった両方のサンダルを、毎日かわりばんこではくことを約束します。
一緒に砂の上に名前を書く練習をしたり、月を見ながら思い出話をしたり、仲よくなっていくふたり。
そんなある日、リナは待望のアメリカに移住できることになります。
ですが貼りだされた移住許可者のリストに、フェローザの名前はありませんでした……。
あとがきには、こうあります。
「はくがいをおそれて じぶんのくにから にげるひとたちのことを『なんみん』といいます。
わたしたちが このものがたりを かいていたとき、せかいじゅうには 2000まんにんいじょうの なんみんが いました。
そのたいはんは、こどもたちです。」
原題は、”Four Feet, Two Sandals”。
リナとフェローザが友情をはぐくむ様子を、身近な友達のお話のようにいきいきと訳し「いたばし国際絵本翻訳大賞」を受賞した小林葵さんは、当時、現役の高校生でした。
こうしたテーマの作品にふれると、遠い地の私たちには何もできないと、無力さを感じるかもしれません。
でも、知ることは何より大事な最初の一歩。
知らないままの昨日とは、大きく違います。
そしてこうした難しい問題を子どもたちに、若い世代に、すっと伝えてくれるのも、絵本のかけがえのないところだと思うのです。
次回も、難民キャンプが舞台のお話をご紹介します。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。