2020年6月16日

『ふしぎなおとなりさん』【今日の絵本だより 第135回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ふしぎなおとなりさん』【今日の絵本だより 第135回】の画像1『ふしぎなおとなりさん』
もりか/作 白泉社 本体1300円+税

全国的に梅雨入りし、雨の絵本がぴったりの時季ですね。
表紙からはちょっと意外かもしれませんが、『ふしぎなおとなりさん』は全編、雨、雨、雨のお話です。

木曜日に降り始めた雨は絶え間なく降り続け、ちまちゃんの幼稚園も水びたし。
一週間後の木曜日の今日、幼稚園はついにお休みになってしまいました。
そんなちまちゃんには、気になることが。
ちょうど一週間前、お隣に誰かが引っ越してきたのですが、誰もその姿をまだ見ていないのです。
ちまちゃんは今日、お母さんお得意のできたてドーナツを持って、お隣を訪ねることにしました。
扉をたたくと、くるんとした巻髪にパッチワークのようなジャケット、不思議ないでたちの人が現れました。

「ぼくのなまえは
 あめふらし
 くもにのって
 あめをふらせながら
 せかいじゅうを
 たびしているんだ」
なるほど、一週間降り続いている雨の理由は、この新しいおとなりさんが引っ越してきたからだったのですね。
ドーナツが大好きだという、あめふらし。
ちまちゃんの相棒、水色のこくまとピンクのうさぎのモモも一緒に、みんなでドーナツを囲んでお茶会です。
あめふらしはポットの湯気を集めて雲を作り、お部屋の中でみんなを乗せてくれました。
「これならどこへでもいける
 さばくいがいはね」

なんとも不思議なおとなりさんと、ふわふわ雲で空中散歩。
それから、ぬいぐるみのようなのに自分で動ける、ちまちゃんのきょうだいみたいなこくまとモモ。
ちまちゃんのお洋服やおうちのインテリア、お母さんの手づくりアイテムは、すみずみまでおしゃれ。
細部まで愛らしさいっぱいの絵で織りなすかわいいファンタジーに、大人もうっとりします。
そう、雨とちょっと不思議なお話って、相性がいいですよね。
キュートな世界に魅了された方は、シリーズの前巻『ちまちゃんとこくま』も、ぜひあわせてどうぞ。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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