2020年4月29日

『ねえねえ あのね』【今日の絵本だより 第124回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ねえねえ あのね』【今日の絵本だより 第124回】の画像1『ねえねえ あのね』
しもかわらゆみ/作 講談社 本体1300円+税

全国的に、おうちで過ごす時間が長引きそうな昨今ですが……。
おうちにいても思考がぐるぐる回ってしまいがちな今の時期、シンプルに「好き」と「うれしい」であふれた絵本をご紹介します。
『ねえねえ あのね』です。

表紙のひよこちゃんが、ねずみさんに語りかけます。
「ぴよぴよ あのね
 ねずみさん だいすきよ。」
ねずみさんはうれしくて、大きくピョーン。
そしてねずみさんは、あひるさんのところに行って、お顔を耳に近づけて……
「ちゅうちゅう あのね
 あひるさん だいすき。」
あひるさんはうれしくて、思いっきり羽をパタパタ。
そして、うさぎさんのところに行って……。

みんなが耳元で「だいすき」と伝える様子はもちろん、「だいすき」と言われてうれしくてとってしまうポーズが、とってもかわいいんです。
喜びが全身にあふれちゃうって、見ているこっちも、こんなにうれしくなるんですね。
これは、親子でまねっこしてみたい!
ひよこちゃんもねずみさんも、他の動物たちも、みんなリアルな描かれ方なのに、なんでこんなにお話ししている姿や「ぎゅっ」の様子が自然なんでしょう。
とてもシンプルな文章の繰り返しなので、文字が読めるお子さんなら、かわりに読んでもらうのもおすすめです。
お子さんの声で「だいすき」と聞いたら、きっと大人の方が、じわじわとうれしくなると思います。

上品な白地に繊細な描写が映える画面には、動物たちの他にも、実は重要な登場人物(?)がいて、これはお子さんの方が「あっ」とお楽しみに気づくかも(ヒントは裏表紙に)。
小さな(ほんとは大きな)幸せを丁寧にすくって、研ぎ澄まして、優しく包んだようなこの絵本。
お子さんと「だいすき」「ぎゅっ」ができる間に、読まない手はないですよ。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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