『せつぶんのひのおにいっか』【今日の絵本だより 第103回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『せつぶんのひのおにいっか』
青山友美/作 講談社 本体1500円+税
1月も下旬、もうすぐ節分。
スーパーにも福豆や鬼のお面が並び始めましたね。
節分の絵本なら、憎めないお顔の鬼が表紙の、こんな絵本はいかがですか。
『せつぶんのひのおにいっか』。
人間の3人家族の家で一緒に暮らしている、鬼の3人家族。
おにとうさん、おにかあさん、こおに。
毎日一緒にいるのですが、どうも人間には鬼の姿は見えていないようなのです。
人間家族に気づかれないまま、たくさんごはんを食べて、みんなが出払った昼間は、家で気ままにゴロゴロ。
そんなある日の晩、人間のおかあさんが言いました。
「あしたは せつぶんね。」
さあ、そんなことすっかり忘れていたおにとうさんとおにかあさんは、大あわて。
急に体操をして、風呂敷に荷物をまとめて、それから早々に寝てしまいました。
何が何やらわからないまま、こおには布団の中で
「せつぶんって なんだか たいへんそうだなあ。」
と、なかなか寝つけません。
さあ、次の日。
いよいよ始まりました。
「おにはー そと! ふくはー うち!」
豆をぶつけられて、鬼の家族は
「こりゃ たまらん!」
と外へ逃げ出します。
そこへ空からやってきたのは……。
作者の青山友美さんは、「鬼は外! 福は内!」というかけ声から、「”鬼よ出ていけ! 福よ来い!”ということは、鬼って最初から家にいたの?」という想像から、このお話を考えたそうです。
なるほど、確かに!
でも、「こんな鬼一家なら一緒に住んでいてもいいかな」と思うくらい、愛嬌のある3人。
人間家族と鬼家族、3人ともお互い見た目も似ているのが、愉快なのです。
『せつぶんのひのおにいっか』は、「季節と行事のよみきかせ絵本」シリーズの中の一冊。
「季節の絵本ノート」でもよくご紹介していますが、「絵本で季節を感じたい」「行事に自然に親しみたい」というときに、とても頼りになるシリーズです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。