『まめざらちゃん』【今日の絵本だより 第79回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『まめざらちゃん』
あさのますみ/文 よしむらめぐ/絵 白泉社 本体1200円+税
10月4日は、陶器の日。
古代の日本では、今の陶器を陶瓷(とうし)と呼んでいたことから、「10(とう)4(し)」の10月4日なのだそうです。
そういえば今週始まったNHK連続テレビ小説「スカーレット」も、女性陶芸家の物語ですね。
今回は陶器の日にぴったり、9月に発売になったばかりの新刊絵本、『まめざらちゃん』をご紹介します。
お料理上手のダダさんのおうちの食器棚にやってきた、小さなお皿のまめざらちゃん。
お皿の仲間たちの楽しみは、自分にもりつけられたごちそうを、こっそり味わうこと。
今日はおおざらくんが、ナポリタンをぺろり。
次の日はスープざらさんが、シチューをぺろり。
「わたしの でばんは いつかしら。たのしみ!」
と、心待ちにしていたまめざらちゃん。
ようやくお寿司の日に棚から出してもらえましたが、のせてもらえたのは、お寿司でなくて、おしょうゆとわさび。
別の日は、おしょうゆとお酢とラー油。(餃子ですね。)
ソースとからし。(エビフライ!)
一口ぺろりとするどころか、まめざらちゃんにのせられるのは、しょっぱい、からい、調味料ばかり。
「わたしは これからも ずっと、
ごちそうは のせてもらえないの?」
悲しむまめざらちゃんに、
「なくのは おやめ、まめざらちゃん」
と、長老のおわんさまが、優しく語りかけてくれました。
「ながい じんせい、なにが あるか わからない。
まあ、もうすこし まってみなさい」。
失意のまめざらちゃんを待ち受けていたのは……、大いなるハッピーエンド。
第7回MOE創作絵本グランプリ受賞作が、待望の単行本になりました。
おいしそうなごちそうの数々、幸せなどんでん返し、繰り返し読みたくなる一冊です。
単行本化での描きおろし、最後のページのまめざらちゃんの姿には、
「わあ、まめざらちゃん、いいもののせてもらってよかったね」
と、親戚のおばちゃんのようにうれしくなってしまいました。
ぜひ絵本を開いて、ご確認くださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。