2021年11月3日

工藤ノリコさんインタビュー「どんな状況下の子どもにも、楽しい時間を届けたい」

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信じられる「もうひとつの世界」が与えてくれるもの

――私の息子はもう8歳ですが、「ピヨピヨ」シリーズと「ペンギン」シリーズを胸に抱いて見ていて、もっと小さい子どもにあげることを惜しく感じているようです。私も時々彼の幼稚すぎて無知な面を心配しています。このような小さな読者をどう思いますか?

息子さんが今も絵本を手放さないのは、幼稚だからではなく、無知だからでもなく、この現実世界が、絵本の世界とは異なりとても厳しいものだ、という事実を敏感に感じ取っているからで、彼の純粋で無垢な心が、まだその厳しさの中へ進み入ることに怖れを感じているからだと思います。彼の心にはもうひとつの世界、絶対安心できる絵本の世界がまだ必要なのだと思います。

どの子どもも、親など自分を養育している大人がそばにいて、どんなときも自分を信頼してくれ、自分の心の世界を守ってくれていると感じながら、少しずつ成長していくと思います。子どもにはこの絶対安心の世界で暮らすことがとても大切だと思います。信頼できる大人から自分も信頼されることで、自己を肯定できる。自己肯定ができると、自分に自信がついてくる。そうして少しずつ、大人の世界へ進んでいこうという勇気が出てくるのだと思います。そのときにはじめて、絵本を手放すことができるのだと思います。

息子さんを信じて見ていてあげれば大丈夫と思います。息子さんの今の様子は、心が「完璧な蝶」であることの証しであり、尊いことだと思います。

――以上、中国・接力出版社メールインタビューをご紹介しました。ここから、最新作『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』について、少しお話をお伺いします。

最新作『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』について

――子ざるたちをはじめ、たくさんのキャラクターが登場する、にぎやかな一冊ですね。単行本化にあたり、kodomoe2021年8月号に掲載された付録絵本からストーリーを変更されました。

11月5日発売の最新作『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』(白泉社)。

付録絵本では、怪獣が猿のすみかをめちゃくちゃに荒らすなど大暴れをするシーンを、絵で描写せず、長老の回想のセリフで表現しました。理由は、すべてを画面で説明するのにページ数が足りなかったためです。

怪獣(とその卵)は、これまでのシャチやトラのような実在としての存在ではなく、「ある状況」を具象化した架空の存在としてえがきました。その「状況」とは、大人世界から子どもに向けられるさまざまな暴力全般のことであり、子ざる(=子ども)とともにその困難に打ち克ちたいという思いからできたストーリーでした。

以前から、ラーメン屋にしのびこんだところに大勢のお客さんがやってきてしまい、ノラネコぐんだんが大量のラーメンを作ることになるお話を考えていました。大勢でやってくるといえば猿の団体だなと思いストーリーを作りながら暮らしていた時期に、子どもの置かれる苦しい状況について考える機会が非常に多くあり、自然と、怪獣を登場させるストーリーが生まれました。

しかし、怪獣が理不尽な暴力の象徴としての存在だと読者が感じ取れる描写が足りなかったため、制作意図とは正反対に、怪獣とその卵が猿の暴力の可哀想な被害者に見える場合があると、単行本化のための仕上げ作業中に気がつきました。そこでこのたびの単行本化にあたり、32ページの中で表現できる別のストーリーを、新しく作りました。

――なるほど、そのような経緯があったのですね。

当初の物語に込めた考えは、将来もし機会があれば、それを描写するのに充分なページ数を確保した場で、あらためて発表できればと思いますが、この新作絵本『ラーメンやさん』では、ページをひらいて読者のみなさんに楽しい時間を過ごしていただけたら嬉しいです。

『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』(白泉社)より

――ラーメンづくりのシーンからラストの展開まで、身も心もぽかぽかあたたまるお話になりましたね。ところで、第1作『ノラネコぐんだん パンこうじょう』刊行から、来年でついに10周年を迎えます。長いシリーズとなりましたが、制作中の思い出深いエピソードなどがありましたら教えてください。

当初は毎回爆発する話になるとは思っておらず、たまたま2作続けて爆発することになったため、その後もその形をそのまま続けることにして、今のスタイルになっていきました。

映画の寅さんも、いつも同じ展開でありながら毎回面白く、観てよかったと、どの作品にも満足感を覚えます。ノラネコぐんだんの絵本が、子ども読者にとってそのようなシリーズ作品になれるよう、がんばりたいです。

第1作『ノラネコぐんだん パンこうじょう』と第2作『ノラネコぐんだん きしゃぽっぽ』(白泉社)。

――シリーズの今後について、少し教えていただけますか?

現在、次作の制作を開始しています。10周年にふさわしい、楽しいお話です。ちびっ子読者のみなさん、どうぞ楽しみに待っていてください。

――ありがとうございました。

11月5日より、全国の1240書店で「ノラネコぐんだん&kodomoeニャーニャーフェア」が開催されます。絵本を買うと、限定特典の巾着BAGやクリアファイルがもらえるお得なフェア。
詳しくはこちらをご覧ください!

インタビュー/陳賽(三聯生活週刊) 撮影/岡森大輔

Profile

くどうのりこ/1970年、横浜市生まれ。女子美術短期大学卒業。 絵本作家、漫画家。 絵本に「ノラネコぐんだん」シリーズ(白泉社)、「ピヨピヨ」シリーズ(佼成出版社)、「ペンギンきょうだい」シリーズ(ブロンズ新社)他。漫画に『ノラネコぐんだんコミック』(白泉社)他。 その他、童話やイラスト、エッセイ連載など。

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