大谷翔平さんの子ども時代の過ごし方、育てられ方。叱られたことがない!?
若くして才能を発揮させ、大活躍している野球選手の大谷翔平さん。彼の子ども時代の過ごし方、育てられ方に、今の成功の秘密が隠されているかも……。今回は、大谷翔平さんの小さいころの習慣に注目。子育て本を多数執筆する、立石美津子さんのコメントと一緒にご紹介します。
メジャーリーガー
大谷翔平さん
おおたにしょうへい/1994年生まれ。岩手県出身。小学3年よりリトルリーグで野球を始める。花巻東高校3年生のときには、アマチュア野球史上最速の時速160kmも記録。高校卒業後、日本プロ野球で活躍の後、2018年よりメジャーリーグへ。エンジェルスに入団。投手と打者の二刀流で活躍中。
子どもの選択に任せる
「好きこそものの上手なれ」の言葉通り、本人が好きなこと、望むことを親は何よりも優先させていたようです。大きな決断もそっと見守りました。
●(本人の言葉)「母は、僕のやりたいことを僕のやりたいようにやらせてくれた」(『大谷翔平 挑戦』(岩手日報社)P.89)
●(母の言葉)「夫も私も子供の人生の選択には口を挟みません」(『天才を作る親たちのルール トップアスリート誕生秘話』(吉井妙子/著 文藝春秋)P.21)
●(父の言葉)「メジャー行きを宣言したのも、日本ハムを選択したのも息子の意志。自分が納得する方向に進むのが一番です」(『天才を作る親たちのルール トップアスリート誕生秘話』(吉井妙子/著 文藝春秋)P.22)
「子どもが“野球をやりたい”と言っているのに、親が “サッカーにしなさい”と指示してしまうと、“やらされている感” 満載で子どもが夢中になれるわけがありません。子どもの人生なので、子どもの選択に任せるようにしましょう」(立石さん)
結果よりも
楽しむことを優先
お父さんはリトルリーグの監督でしたが、野球漬けのスパルタではありませんでした。結果を求めて本人を追い立てることはせず、「好きな気持ち」を大事に、楽しむ様子を見守っていました。
●(父の言葉)「野球って楽しくなきゃいけない。やり過ぎて嫌になってしまっては良くない。めりはりは大事にした」(『大谷翔平 挑戦』(岩手日報社)P.86)
●(母の言葉)「私は結果より、チームの皆さんと楽しそうに戯れている姿を見る方が嬉しい」(『天才を作る親たちのルール トップアスリート誕生秘話』(吉井妙子/著 文藝春秋)P.22)
「テストの点数や順位などわかりやすい結果が伴わなくても、まずは練習を重ねて、そこに行きつくまで努力した過程を認めることが大切。練習したことで体力や技術は確実に向上しているはずなので。結果ばかり求めると練習が苦痛になるだけです」(立石さん)
叱られたことがない
ほとんど怒ったことがないという両親。子どもを信頼していればこそ。その信頼感が伸び伸びとした性格を育み、好奇心ややる気につながります。
●「父には、末っ子(翔平)を『叱った』記憶がほとんどない」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木享/著 扶桑社)P.59)
●(父の言葉)「私たち親がガーッと怒らなければいけなかったことが、考えてみると本当になかったと思います」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木享/著 扶桑社)P.61)
「親としてしつけやマナーを教えることは大切なこと。ですが、たたいたりどなったりされることでがんばれる子はいません。いい行動をしたときにはしっかりほめ、やってはいけないことをしたときはていねいに教えていくことが肝心です」(立石さん)
リビングですごす
コミュ力も高いと言われる大谷さん。チームメイトや先輩、多くのファンに愛されるキャラクターは、家族と過ごす時間の中で培われたようです。
●(本人の言葉)「兄と共同の部屋が二階にあったんですけど、(中略)実家にいた時はリビングにずっといた感じです」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木享/著 扶桑社)P.47)
●(母の言葉)「我が家は玄関からリビングを通らなければ自分の部屋に行けないので、いつも家族が見えるところにいました。みんな、ここでご飯を食べて、ここで勉強して、ソファに移動してテレビを見て、そして寝る感じでした。子供部屋は一応あったんですけど、ほとんど使っていなかったですね」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木享/著 扶桑社)P.47)
「子どもに個室を与えれば、勝手に勉強するわけではありません。ひとり閉じこもってゲームに没頭するだけということも。家族とともに長い時間を過ごし、生の人間とふれあうことによってコミュニケーション力も育つでしょう」(立石さん)
親自身が楽しむ
子どもは親の気持ちや姿勢に敏感。親も一緒に楽しむことで競技がもっと好きになり、がんばる気持ちにつながります。
●(父の言葉)「会社の飲み会や友達との付き合いはしなくなりました。でも、子育てのために無理してそうした訳ではなくて、息子たちと野球をやっている方が僕自身も楽しかったんです」(『天才を作る親たちのルール トップアスリート誕生秘話』(吉井妙子/著 文藝春秋)P.19)
「子どもに対して “勉強しろ” “運動しろ”とあれこれ命令しておきながら、その姿を見届けないのでは、親の望むように子どもは進んでいかないでしょう。まずは親がお手本になり、子どもにやらせたいことを誰より楽しんでいる姿を見せたいものです」(立石さん)
コメントしてくれたのは
立石美津子さん
たていしみつこ/幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間学習塾を経営。『1人でできる子になる「テキトー母さん」流子育てのコツ』(日本実業出版社)など子育て本を多数執筆。
イラスト/柴田ケイコ 編集協力/古川はる香(kodomoe2018年10月号掲載)