ママの孤立と不安について頼れる保育者・柴田愛子先生に聞きました【後編】
2020年10月18日

ママの孤立と不安について頼れる保育者・柴田愛子先生に聞きました【後編】

kodomoe10月号にも登場してくれた頼れる保育者・柴田愛子先生に、ママの孤立や不安が高まる状況について聞きたくて、秋が深まってきた「りんごの木」を訪ねました。「大丈夫よ!」の言葉をもらった前回に続いて、今回は「心の虫干し」についてです。


 不安の周りをウロウロしてしまう

ーー家族の健康を守る使命感と責任感で、ママ自身が不安を大きくしていたような気がします。
コロナ以前に抱えていた不安が今、浮き彫りになったんだと思いますよ。子どもを産んだときからずっと、万一、子どもが死んでしまったらどうしよう……と思ったと思います。その気持ちがコロナで増大してしまった。
不安の周りをウロウロしてしまう気持ち、わかります。私もコロナになったら、もう死んでしまう年齢かもしれないと不安になっていました。でも、どうせお骨になってからの葬儀だから、長時間「りんごの木」を開けてもらって、あの曲をかけてもらって、卒業した子どもが来たら、私の好きなかりんとまんじゅうでも食べてもらおうかしら、と。死ぬことを考えたら、ウカウカしていられませんね。
いつもの日常とは違うから、鬱になったり、攻撃的になったり、逆にあっけらかんとなったりすることもあるでしょう。それだけ心が動いている証拠です。暗いムードの時にこそ、心に刺激を与えなくてはいけないと思います。私は毎日好きなジャズを聴いたり、観たかった映画「誰も知らない」を観たりしました。心をいつもよりいっぱい震動させないと、不安な気持ちに揺れている心のバランスを取り戻せないと思ったからです。気持ちが落ちているなと思ったら、同じだけ感動することをしてみましょう。

 不安やイライラは、心から取り出す「大切開」が必要

ーー2月に聞いた「お風呂でばかやろう」って言ってみるというお話にも繋がりますね。お母さんの心をまず助けなくてはいけないんですね。2月のエピソードはこちらからそうです。不安やイライラは、心から取り出す「大切開」が必要です。自分の体から離して「虫干しする」んです。話す、書く。言葉や文字にすることで、体の中では水分を含んで重かったものが、虫干しすると軽くなりますから。
お母さんたちのグループでおしゃべりをしていた時のこと、お子さんを亡くしたことで自分を責めているお母さんがポツポツと話し出したら、隣に座っていたお母さんがもっと泣き出したんです。私も同じ体験をして自分を責めていたと。二人だけでなくてみんなで泣いて泣いて。「やっと人に言えた」って言ってました。言葉にすることは、解決するとかしないとかではなくて、とても大切なことですから、大変な思いをしていたら自分の外に出してください。取り出してみてわかることもありますからね。

 お母さんこそ、好きなことをしてね

ーーコロナは長引きそうですから、お母さんの心配が荷物になっていかないようにしたいです。
心配なことは、心配なことが起きてから心配しましょう。ウイルスが心配ならウイルスについて知りましょう。自分の手に負えないと思ったら専門家に判断を任せましょう。そう納得したら不安の形が見えてきます。
私は「子どもの心に寄り添う保育」をしたくて「りんごの木」を続けています。今年はいろんな行事ができませんでした。キャンプができなくてかわいそうと言う人もいたけれど、子どもたちはそんなことちっとも思ってないですよ。子どもの方が、今の時代に順応しています。放っておくだけで、主体的に楽しいことをしていますからね。機嫌の悪い親に近づかなかったり、優しくしてくれる先生にくっついたり、子どもはいろんなことを選ぶ力があって、親に振り回されたくないって思ってますから。子どもも大丈夫です。お母さんは安心して、こんなときだからこそ好きなことをしたり、話せる人を見つけたりして、不安を外に出してみましょう!

柴田愛子先生、力強いメッセージをありがとうございました!!

柴田愛子先生の記事はこちらでも読めます
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写真/繁延あづさ

柴田愛子

しばたあいこ/1948年東京都生まれ。保育者。1982年、横浜市で認可外保育施設「りんごの木」を創設。2歳から5歳までの子どもたちが通う。保育の現場に立ちながら、雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどで「子どもに寄り添う」姿勢を伝える。著書に『子育てを楽しむ本』『保育の瞬間』『こどものみかた』他多数。絵本に『けんかのきもち』(日本絵本賞受賞)、『ぜっこう』『ありがとうのきもち』『わたしのくつ』『ざりがにつり』他。
りんごの木 http://www.lares.dti.ne.jp/~ringo/

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