
【この10年を代表する絵本作家が対談】ヨシタケシンスケ×柴田ケイコがすごい! お互いの作品の魅力を熱く語ります
絵本界のトップランナー、ヨシタケシンスケさんと柴田ケイコさんが初対談! 『kodomoe』2024年6月号に掲載された、お互いの作品の魅力を熱く語り合う貴重な対談を全編公開します。

子育てをする中で
生まれた絵本たち
――現在大活躍中のおふたりですが、同じ年の生まれで、イラストレーターを経て絵本作家デビューという道のりも共通ですね。
ヨシタケ 絵本を描き始めた時期が近いのもあって、ずっと横にいらっしゃるような感じがあって。
柴田 いえいえいえ、とんでもございません。もう、なんでしょう……。ヨシタケさんは私にとってのアイドルだったので、アイドルだったので(笑)。
ヨシタケ あははは。2回言いましたね(笑)。
柴田 MOE絵本屋さん大賞や、けんぶち絵本の里大賞の授賞式でお会いしたときは、「ここにアイドルがいる! 素晴らしい絵本作家さんがいる!」と思ってました。
――ゆっくりお話しされるのは実ははじめてとのことですが、今日はお互いの好きな作品を3冊ずつあげていただきました。柴田さんが選ばれた1冊目は『りゆうがあります』ですね。
柴田 はい。最初は書店さんで表紙を見かけて、「えっ、うちの息子と同じことしてる絵本がある!」って。息子もずうっと鼻をほじってたんで、「それを絵本にする人が出てきた! これはなに!?」って思ったんです。貧乏ゆすりもするし、言い訳マンだし、子どもの姿をよくつかんでるなあって。これはご自身の息子さんが……?
ヨシタケ それもありますし、子育てしてると思い出しますよね、「ああ、自分もやってた、それ!」って。大人に言われて嫌だったことも思い出すし、でもそれと同じことを言う側なんだ、今、っていう。ちょうど子育て中だから両方の気持ちがわかる面白さがあって、タイミングがよかったんですね。
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理由があれば、いいんじゃない?
『りゆうがあります』
ヨシタケシンスケ/作
PHP研究所 1650円
ぼくがハナをほじっちゃうのには、ちゃんと理由があるんだよ。いろんなクセのそれぞれの理由に、思わずうなずいたり、笑ったり。
――ヨシタケさんは柴田さんの作品から、まず『めがねこ』と『めがねこのぼうけん』の2冊を選ばれています。
柴田 これ、なかなか選ばれない本ですが、本当ですか?(笑)
ヨシタケ あ、本当です。初期のこの2冊は、柴田さんのイラストレーターとしての取り組み方みたいなものも見られる気がして。自分に正直な表現と、イラストレーターとして他人を満足させる内容が、ちゃんと混ざっている。やっぱり絵がすごくいいなあと思ったし、『めがねこのぼうけん』は見返しまでちゃんと冒険物語としての体裁になっていて、行き届いていますよね。楽しく描いてるのがビシビシ伝わってくるから、読んでいてうれしくなるっていうか。
柴田 この本のきっかけは、長男が3歳のときに弱視でめがねをかけることになって。「なんでもっと早く気づいてやれなかったんだろう」と悔やむ一方、「でも、めがねってそもそも悪いものか?」「歯医者さんには歯の絵本があるのに、なんでめがね屋さんにはめがねの絵本がないんだろう?」とも思って。それで、親に向けたメッセージ性のあるめがねの絵本を描けばいいんじゃないかなって。
ヨシタケ 最初の本にそういうモチベーションがあったというのは、すごく大事な気がします。
柴田 でも、本ができたときはすでに小学5年生になっていて、すでにめがねも全然嫌じゃない感じで、ちょっと遅かったねって(笑)。読み聞かせしてみましたが、「ん~」で終わった感じで、次男には「ヨシタケさんの絵本の方が面白いよ」って言われました。
ヨシタケ あははは(笑)。まあ、自分の家族には間に合わなくても、世界中にはまだ間に合うっていうのが絵本のすごいところというか、うれしいところですよね。
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柴田さんの絵本デビュー作
『めがねこ』
柴田ケイコ/作 手紙社 1650円
めがねこは、森で評判のねこのめがね屋さん。ある日、ねずみの3兄弟が、お店のめがねを盗もうとします。その理由を聞くと……。

謎の依頼主の正体は?
『めがねこのぼうけん』
柴田ケイコ/作 手紙社 1650円
「もりの3ちょうめのぬし」から、大きなめがねの依頼が届きます。めがねことねずみ3兄弟が、完成しためがねを届ける旅に出発!
●YOSHITAKE’S MESSAGE FOR SHIBATA●

従来の絵本の文脈にひそむ
エッジのきいた新しさ
ヨシタケ 僕が選んだ3冊目は『パンどろぼう』ですが、こんなにおいしそうに見えるパンが「まずい」っていう。あれ、大発明ですよね。絵本の歴史の中でも。おいしそうに描いても味はわかんないんだっていうすごい発見が、結構な衝撃でした。
柴田 ああ、読んでくださってありがとうございます。そもそも絵本を出す前に「『まずい』はダメでしょう」って言われる可能性もあるじゃないですか。よく通ったなあと、ありがたく思います。
ヨシタケ 柴田さんの本は、要所要所でテキストがすごく刺さるところがあって。パンやのおじさんが「わたしも おいしくないパンをつくって わるかったが」って、「認めた!」って(笑)。「きみも きちんと あやまってください」って、これなかなか書けない、名セリフですよ。俺も謝るけどお前も謝れって。
さらに鳥肌が立ったのが、続編でもパンがやっぱりまずかったっていう。こんなにニコニコしているのに、全然パンづくりが上達してない、「怖!」って(笑)。ちゃんとした絵本の文脈の中にちょっとゾッとするような新しさを入れてくる、この両方ある感じが、ヒットを生んでいるはずで。
柴田 ああ、すごいうれしいです。人生の中で一番うれしい。
ヨシタケ 「まだまずいんだ!?」って、その発想、もう驚きを通り越して「いや、できない、これ」と思いました。『パンどろぼうとなぞのフランスパン』の「○○にゃりよ」という語尾もすごい新鮮で。そういうエッジがちょうどいい感じに入っているから、大人も子どももグッとその本に対する愛着がわくというか。「あのおじさんのパン、まずいんだよねえ」って。
YOSHITAKE’S FAVORITE

パンへの愛はどこまでも
『パンどろぼう』
柴田ケイコ/作
KADOKAWA 1430円
おいしいパンを探し求めるパンどろぼう。「せかいいちおいしいもりのパンや」を見つけて喜びますが……!? シリーズ5作が発売中。
柔らかさと気持ちよさ
それだけでつくる一冊
――パンといえば、柴田さんはヨシタケさんの絵本の2冊目に『こねて のばして』をあげています。
柴田 私、パンがすごい好きなので、『こねて のばして』でこねているものが、どうしてもパンの生地にしか見えなくて。
ヨシタケ あ、そうそう。こねてのばすけど、パン作んないんですよね(笑)。
柴田 そう。で、言葉が「こねて」「のばして」と、ずっと「て」で続いていくのがうまいなあっていうのと。この絵の伸びてる感じが、す~ごい気持ちがいいんですよ。
ヨシタケ あっ、それはうれしい。それ、一番難しかったんですよ。柔らかそうに見えないと失敗じゃないですか。
柴田 めちゃくちゃ柔らかく見えます。
ヨシタケ それ、あとでめっちゃ直してるんです。ちゃんと発酵したものに見えなきゃいけないから。
柴田 そう、線だけで見せるって、一見簡単そうでこれは絶対難しいぞって。このバリエーションがすごいんですよ。こねる作業は思いついても、顔、沈めます? 傾けるとか(笑)。こんなに次から次へと考えるって、できそうでできない。そこがすごいヨシタケさんワールドだなあ、と思って買いました。「最後、どうなるんだろう?」って思ったら、驚愕でしたね。「わあ、どうしてこれがひらめいたんだろう?」って。
ヨシタケ それこそ、おいしそうなパンにするわけにいかなかったんですよ。柴田さんみたいにおいしそうなパンが描けないから。
これは、柔らかいものを触ってみたくなるためだけの本なんです。僕の本は文が長かったり文字があちこちにあったり、「読み聞かせに向いてない」ってご意見をいただいたので、じゃあ、子どもに「読んで」と言われて「いいよ」ってすぐ言えるような、リズムがよくてすぐページがめくれて、気持ちよさだけが伝わってくるのは、どういう本だろう、と考えて。どの本にもなにがしかのチャレンジのテーマがあって、それが決まるとできる気がしてくるというか。
柴田 なるほど、素晴らしいです。
SHIBATA’S FAVORITE

読みながら親子でスキンシップ
『こねて のばして』
ヨシタケシンスケ/作
ブロンズ新社 1078円
こねてのばしてまたこねて、たたいてゆらしてころがして。一体何をこねてるの?柔らかいものの気持ちよさ満載からのラストにびっくり。
どちらからも読める
本という形ならではの発見
――柴田さんが選ばれたヨシタケさんの3冊目は、『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』ですね。
柴田 『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』も、大好きです。前からも後ろからも読めるじゃないですか。このアイディアは?
ヨシタケ それはあとから気づいたんですよ。僕はすごくネガティブで、どんなにいいことがあっても「でも明日仕事なんだよな」って考えちゃうんです。普通はこういう本だと、「こんなよくないこともあるけど、いいこともあるよね」って、「元気出していこうぜ」みたいな感じですが、それにはイラッとするんですよ(笑)。僕はどんなに言われてもこっちの順番でしかできないんだって、世の中のままならなさみたいなことを、そのまま形にしてみたかった。でもいざ本にしてみると、「あ、逆から読んでもいいんだ!?」って。「いいこと」から「悪いこと」という順番が、後ろから読むだけで「悪いこと」から「いいこと」の順番になるんですね。
柴田 いや、本当にそう、すごいなあ。そのお話を聞くと本当に、ヨシタケさんって自分のことがよくわかっている方ですよねえ。
ヨシタケ ありがとうございます。すごくバラエティに富んだ3冊を選んでいただいて。
柴田 こちらこそ、今日は本当にありがとうございました。
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希望と現実は隣り合わせ
『かみはこんなにくちゃくちゃだけど』
ヨシタケシンスケ/作
白泉社 1100円
「いつか かしゅに なりたいの」「かみはこんなに くちゃくちゃだけど」。前からと後ろから、読む順番で印象が変わる2コマのお話。
●SHIBATA’S MESSAGE FOR YOSHITAKE●


ヨシタケシンスケ
よしたけしんすけ/1973年神奈川県生まれ。2013年の絵本デビュー以来、MOE絵本屋さん大賞第1位を7回受賞。『おしごとそうだんセンター』(集英社)など著書多数。
柴田ケイコ
しばたけいこ/1973年高知県生まれ。「パンどろぼう」シリーズ(KADOKAWA)が累計300万部を突破。『パンダのおさじと ふりかけパンダ』(ポプラ社)など著書多数。
撮影/大森忠明 ヘアメイク/中村曜子(柴田ケイコ) 編集協力/原陽子(kodomoe2024年6月号掲載)






































