2026年5月7日
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TVアニメ好評放送中!進化し続ける『ねずみくんのチョッキ』となかえよしをさんの変わらない思い【kodomoe2026年6月号掲載・web完全版】

50年以上のロングセラーとなる絵本『ねずみくんのチョッキ』。2026年にアニメ化され、4月より放送されています。作者・なかえよしをさんのアニメ化への思い、上野紀子さんとの絶妙な合作、そして新作のお話まで、半世紀続く創作の原点を語っていただきました。

絵本をめくるように動く「ねずみくん」の世界

――「ねずみくん」がアニメ化されると聞いてどう感じましたか。

最初はね、あまり実感がなかったんですよ。テレビのアニメって、すごくカラフルで動きも多いでしょう。絵本『ねずみくんのチョッキ』はその逆で、できるだけシンプルに、色も抑えて描いてきましたから、どうなるのかなと思いましたね。

でも、ページをめくるように進むアニメになっていて、ああ、これもおもしろいなと思いました。僕は本という形が好きなんです。本って、重さとか大きさとか、ページをめくる感じがいいでしょう。そういう感覚をアニメでも感じてもらえたらいいなと思っています。

何より、「ねずみくん」が動くだけで、周りの人がすごく喜んでくれたんですよ。人気の声優さんが、登場人物の声を雰囲気を変えながらふたりだけで表現してくださるとも聞いて、楽しみにしていました。

アニメ「ねずみくんのチョッキ」(NHK Eテレ)

アニメ「ねずみくんのチョッキ」(NHK Eテレ)

――「ねずみくん」の絵本は、最新作が44作目になります。この『ねずみくんの花ことば』はどのように生まれたのでしょうか。

あるとき別企画で花に関わる話を書く仕事があって、花ことばを調べてみたらおもしろいなと思ったんです。それで、ねずみくんが花をプレゼントするというお話を作ったらどうだろうと考えました。調べたらねずみくんたちにぴったりの花ことばがあったんです。でも花ことばの意味を、欄外の注釈のように解説するのは嫌でした。それで、お話の途中で、僕がひょこっと顔を出す絵と吹き出しを入れて、花ことばを伝えています。マスクをして目立たないようにしてね。ヒッチコックの映画みたいでいいでしょ。

『ねずみくんの花ことば』(ポプラ社)より

上野(絵を担当していた奥様)が亡くなってからは、遺してくれたねずみくんたちの絵をパソコンで組み合わせて作っています。いろんな表情、いろんな手足をパーツにしてね。上野がいっぱい絵を描いてくれていたのでできたことです。

パソコンで組み合わせてねずみくんを作るなかえさん

夫婦で作ってきた「ねずみくん」のシリーズ

――「ねずみくん」の絵は、上野さんが亡くなった後も生きて動いていらっしゃるのですね。

亡くなる前は、屋根裏のアトリエで、夫婦で机を並べて絵本を作っていました。僕の作る話に上野が口を出してくることはなかったですね。逆に僕も彼女の描く絵について何も言わない。話し合いもほとんどしないんですよ。でも、それがちょうどいいコンビだったんでしょうね。1週間くらいで絵本ができちゃうこともありました。早すぎて出版社が受け取ってくれないので、だいたい2、3か月はかかったことにしておくんですよ。彼女は本当に絵を描くのが速かったな。

生前の上野紀子さんと一緒に

――50年経っても絵本の新作が出続け、アニメ化までされるのはすごいですね。世代を超えてファンレターが届くのでは?

そうですね。最近は手紙よりもメールが多くなりましたが、いただいたメールには必ず返事を出しています。ときどき子どもが絵を描いて送ってくれるんですよ。子どもは、大人にはとても描けないいい絵を描いてくる。
ぼくが気に入って、印刷製本までした子どもの絵本が一冊あるんです。ねずみくんが展覧会に行くお話で、ぼくや上野も出てくるんですよ。すごいでしょ。実はこの子のお母さんが、最新作の『ねずみくんの花ことば』に出てくる花の絵を描いてくれたんです。専門学校で絵本を教えていた頃の生徒でした。

ねずみくんやなかえさんへの愛がつまった一冊

余白にこそ大切なことがある

――なかえさんがお話を作るときは、どんなふうに考えられていますか?

僕自身は、ねずみくんにあまり冒険させないようにしていて、旅行に行くこともなく、日常の話を書くようにしています。遠くへ行かなくても、身近な日常に楽しさってたくさんあるでしょう?
ねずみは、一番小さい動物の象徴として描いています。隅っこでコソコソとしているところがいい。そのちっちゃなねずみくんと、大きなぞうさんと、その間にある動物でお話ができればいいなと思って作ったんですよね。ねずみくんは決して冒険しない。だからお話も日常に起こるできごとに限定しています。あまり枠から出ないようにしました。

アニメでも絵本と同じように、画面上に枠があって、余白を多くとっています。この真っ白な部分があるから、だんだん大きい動物が出てきても対比ができるし、空白があるから想像力が生まれるんです。何もないように見える空間でも、実はちゃんと「ある」んですよ。見えないものを感じることが大事なんです。

アニメ「ねずみくんのチョッキ」(NHK Eテレ)

デザインは、シンプルイズベストだと常々思っています。いまの世の中は、複雑になりすぎている気がするんです。ファッションにしてもいろんなものをくっつけていくデザインが多いですね。僕のデザインは、なるべく削る方向で考えます。余計なものを入れないで、シンプルにやるのがいい。
絵本でも、考える暇を与えない絵が多いと感じます。目に見えないところに大切なことがある、想像を超えるものがある、そういうことを「ねずみくん」の絵本で伝えていきたいなと思っています。

――なかえさんは、もともとデザインの仕事をしていらしたのが、どうして絵本を作るようになったのですか?

僕自身は絵本を作るなんて思ってもなかったんです。でも自費出版でけっこういろんな本は作っていました。一番最初の『ぞうのボタン(Elephant Buttons)』という絵本は、たまたまニューヨークに行ったときに、せっかくだから本を作って出版社に売り込もうと思って、上野と一緒に作った文字のない絵本でした。だから日本より先に、ニューヨークで絵本が出たんですね。でも字のない絵本だったから「僕が作者だ」って言っても、全然聞く耳を持ってくれない。英語で説明もできないから、まあ気に入ってくれたならいいかと、上野だけの名前で出版しました。でもこれが、日本で絵本を出すきっかけになりましたね。
『ぞうのボタン』は、大きなぞうからいろんなものが出てきて、だんだん小さなねずみになる話だったので、今度はねずみからぞうに変わっていく話を描こうと考えたんです。そんなやりとりをしているときに、ポプラ社さんと縁があって、『ねずみくんのチョッキ』を出すことになりました。それが評判が良くて、気づいたら50年経っていましたね。

そしていま、絵本から飛び出してアニメになりました。ねずみくんが動き出すなんて、これまで50年なかったことです。だから、僕も「行ってこ~い!」という気持ちで送り出しています。絵本を読んだ子がアニメを見てくれて、アニメを見た子がまた絵本も読みにきてくれたら嬉しいと思っています。

なかえよしを
広告代理店のデザイナーを経て絵本の世界へ。『いたずらララちゃん』(ポプラ社)で第10回絵本にっぽん賞受賞。主な作品に『ねずみくんのチョッキ』『こころのえほん』(ともに上野紀子/絵 ポプラ社)『まじょとタイムマシン』(おおくぼひろあき/絵 金の星社)など。

 

愛され続けている「ねずみくんの絵本」シリーズ

『ねずみくんのチョッキ』に始まり、1974年に作家・なかえよしをさんと、画家・上野紀子さんの共同作業で誕生した人気作品。心温まるストーリーで世代を超えて愛されてきた絵本です。44作目となる最新刊は『ねずみくんの花ことば』です。


©なかえよしを・上野紀子/ポプラ社

TV アニメ「ねずみくんのチョッキ」

www.poplar.co.jp/pr/anime-nezumikun/

4月から始まったアニメは、絵本をめくるように物語が進みます。子どもの頃に絵本を読んだことがある人なら、絵本そのままの鉛筆タッチのねずみくんに感動するのでは? 声優の津田健次郎さんと能登麻美子さんが、ねずみくん、ねみちゃん、その他のキャラクターの声を担当しました。朝から優しい雰囲気に癒されます!


TVアニメ「ねずみくんのチョッキ」
NHK Eテレ 毎週土曜 あさ9:30から放送


撮影/大森忠明 編集協力/日下淳子

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