タレント・関根麻里さんロングインタビュー。今でも父と話します「一緒に遊んで 楽しかったね」って【後編】
父・関根勤さんとの幼少時の楽しい思い出やご自身の子育てなど、たっぷりとお話をおうかがいしたkodomoe本誌での貴重なロングインタビューを全編公開。仕事をしながらの子育てなどを語っていただいた前編に続き、ご自身の幼少期や国際結婚での生活や家庭のあり方についておうかがいした後編をお届けします。
関根麻里さんロングインタビュー、前編はこちら
せきねまり/1984年東京都生まれ。米国・エマーソン大学卒業後、2006年タレントとしてデビュー。テレビ「COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン」(NHK BS1)、ラジオ「KUSU KUSU」(bayfm)、「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」(NHKラジオ第2)などに出演中。『ラプンツェル あたらしい かみながひめの おはなし』『リトルレッド あたらしい あかずきんの おはなし』(共にベサン・ウルヴィン/作 文化出版局)で翻訳を手掛けた。
楽しい気持ちがよみがえる
父・勤さんとのお遊びタイム
――麻里さんは子どもの頃、お父さまにたくさん遊んでもらったそうですね。
ずーっとおふざけばかりしていました。私が4歳ぐらいだったかな、お風呂に入る前に「ケツケツダンス」というお遊びを日課のように繰り返していたことがありました。脱衣所で裸になった父が手拍子しながらお尻を振り振りして「♪ケツケツケツケツ……」って歌って踊り出すんです。それで、私は父のお尻を太鼓みたいにペチペチ叩きながら一緒に「♪ケツケツケツケツケツケツ~」と歌って踊るというのをただひたすらに続けて。いつも母に「ふたりとも、もうそろそろお風呂に入りなさーい」って言われて、ふたりでしぶしぶお風呂に入るというところまでがセットでした。
――お母さまからすると、お父さまも子どもみたいだったのでは。
父は自分でも言っていますよ、「僕は中2で止まってるからね」って(笑)。父と私はなんでも一緒になって盛り上がっちゃうんですけれど、いつも母が頃合いを見計らって冷静に止めに入ってくれるという。当時は「どうして止めるの? もっと遊びたいのに」なんて思っていたんですけれど、思い返してみると「ん、待てよ? 母はけっこう遊ばせてくれていたんだなあ」って。だって、よく考えたら、裸で歌って踊ってふざけていたら、すぐにでもお風呂に入ってほしいですよね。
――愉快なお父さまと、見守るお母さま。素敵な時間を過ごされたのですね。
父はコメディアンで大勢の人を笑わせることが仕事なのですが、私が幼い頃は仕事が少なくて、「麻里を笑わせる」というのが最大の使命になっていたそうなんです。単に私と全力で遊ぶことが楽しかったというのもあったみたいですが、いまだに父と「あのとき、ふたりでたくさんおふざけしたよね」「すごく楽しかったよね」って話すことがあるんです。
――仲がいいですね。
10代の頃はちょっとした反抗期もありましたけれど、子どもの頃から両親にはなんでも話してきましたね。
そういえば、うちは性教育についてもすごくオープンだったんですよ。父も「恥ずかしいことじゃないんだから、わからないことがあったらなんでも聞いてね」という感じでした。
興味を持つのは当然のこと
照れずになんでもオープンに
――女の子のお父さんとしては、できれば避けたい話題ですよね。
私が小学生くらいのとき、父と一緒に観ていたバラエティ番組で、芸人さんたちが男性器のお悩みで盛り上がっていたんです。私はぜんぜん意味がわからなくて、父に「これって、どういうことなの?」と聞いたら、「そうか、女の子は知らないよね。ええとね」って言いながら、紙に男性器の構造の図をささーっと描いて「ここがこういうふうになっていて……」と、ごまかすでも照れるでもなく、ごくあたりまえに教えてくれました。私も「へえ、そうなんだ」って。
――なかなかできないことです。
なので、私も娘たちにはオープンでいたいなって思っています。少し前、娘に「ねえ、赤ちゃんはおへそからどうやって出てくるの?」って聞かれたことがあって。ママとお腹にいる赤ちゃんのおへそ同士がつながっているということはなんとなく知っていたみたいで、それでおへそから生まれると思っていたみたいなんです。
「いや、おへそからは生まれないよ。おへそはこんなにちっちゃいし、出てこれないじゃない? おまたから出てくるんだよ」って。そうしたら、今度は「ええっ、じゃあ、お尻の穴から出てくるの?」と聞くので、「おまたにはおしっこが出る穴も、うんちが出る穴もあるけど、赤ちゃんが出る穴もあるの。そこから出てくるんだよ」って言ったら、「じゃあ、穴は3個あるんだね。そうなんだ~」と、すんなりと受け入れていました。説明すれば子どもはちゃんと聞いてくれるし、変にドキドキせずにフラットな雰囲気で話せば、気まずい感じにはならないですね。
――聞かれたときに照れたりしないほうがいいのですね。
そう、照れたり、驚きすぎたりしちゃダメなんだと思います。「そんなこと聞いちゃダメ」「まだ早いから大きくなってからね」と返すと「変なことを聞いちゃったのかな」って、気まずくなってそれ以降も聞きにくくなることもあるそうなので。
とはいえ、親としてはドキドキしちゃうと思うし、その場ですぐに答えられないこともあると思うんです。「ママもわからないから、調べてからお話しするね」とか、最近は性教育をテーマにした絵本もあるので「いい絵本があるから、今度一緒に読んでみようね」とか、ちょっと準備時間を作るのもよさそうですよね。
――参考になります。
月経のことも、まだ教えなくてもいいかなと思っていたんですが、「でも、いずれは知ることだし、むしろ知らなきゃいけないから、ごまかしたりするのはやめよう」と思うようになりました。生理用品を「これ、なあに?」って聞かれたときに「これはね、ママのおむつ。生理のときに使うんだよ」「生理のときはおまたから血が出るんだよ。大人になったらみんなこうなるし、怖がることでも、恥ずかしいことでもないんだよ」って。娘たちも「そういうものなんだ」と思っているみたいですね。最近は「はい、ママ、どうぞ~」なんて言ってナプキンを手渡してくれます(笑)。
レッツ、ショータイム!
親子三世代で楽しいひととき
――Kさんは韓国のご出身です。ご家庭では日本語と韓国語のバイリンガルで話しているのですか?
日本語が多いですが、韓国のおじいちゃんおばあちゃんとビデオ通話したり、ようやく互いの国を行き来できるようになってきたので、少しずつ韓国語も話しています。私は幼少期からインターナショナルスクールに通い、英語に親しんできたこともあって、英語で話しかけることもあります。めざせ、トライリンガル! です(笑)。
――絵本はどの国のものを?
3か国の絵本をそれぞれ読んでいます。日本語と英語だったり、日本語と韓国語が併記されているバイリンガル絵本もありますね。
海外の絵本でおもしろいなと思ったことがあって。ボタンを押すと曲が流れる歌絵本がありますよね? 同じ歌でも国によってちょっと違いがあるんですよ。「ABCの歌」だったら、日本のものは「♪A~B~C~D~」ってのんびりしているんですが、韓国のものはテンポがすごく速く「日本の倍速!?」くらいに感じます。「韓国、速すぎ! せっかちだな~」って、夫も笑っていました。
――国際結婚ということで、生活や家庭のあり方に文化の違いがあるかと思います。いかがですか?
これというものは思いつかないのですが、韓国は日本よりも愛情表現がストレートかもしれません。アメリカもそうですが、韓国もメールや手紙に「サランヘヨ(愛している)」って書いたりとか。夫は韓国のご両親とマメに連絡を取っていて、すごく仲がいいんです。家族同士の距離感が近いのかな。
――どことなく関根さんご自身のご両親との関係に似ていますね。お父さま、今は「孫を笑わせる」ことに夢中なのでは。
娘たちはじいじもばあばも大好き。家に来ると大はしゃぎですよ、「ドゥドゥが来たー!」って。
――「ドゥドゥ」というのは?
父の呼び名です(笑)。長女が1歳半ぐらいのとき、「パパ」「ママ」「ばあば」は言えたんですけど、「じいじ」が「ドゥッドゥ」になっちゃったんですね。そうしたら、「おっ、俺だけニックネーム!? ドゥドゥ、かっこいいねえ」って喜んじゃって。大きくなってから「じいじ」も発音できるようになったんですけれど「いやいやいや、ドゥドゥがいいよ!」って言って、ずっとそのまま。娘の友達も、なんならママ友もパパ友もみんな「ドゥドゥ」って呼んでいますよ。
――お父さまとお子さんは、何をして遊んでいるのですか?
今のブームは「ショータイム」です。歌ったり踊ったりするんですけれど、最近は「ヌートバーショー」というのが誕生して。
――WBCで活躍したラーズ・ヌートバー選手ですね。
娘が「ヌートバーショーの始まりです! みんなで呼びましょう、せーの! ヌートバー!」と言うと、父が黒く塗ったセロテープを目の下に貼って「ハ~イ! ヌートバーで~す!」と出てくるという(笑)。「みんな~、ヌートバーだよ~」って言うだけで、野球らしき振る舞いはなんにもしないんですよ? 「次はヌートバーの歌です、どうぞ~!」「♪ヌートバー~ ヌートバーだよ~」と、父と娘たちで作ったオリジナルソングを歌いながら踊っています。父は楽しくて仕方がないみたいで、全力で遊んでくれますね。娘たちも大笑いで、楽しいのが一番だなあって思います。
「楽しさ貯金」が
私の心を育ててくれた
――ご両親の子育てと関根さんご自身の子育て、「ここは似ている」と思うことはありますか?
たくさんあります。私が生まれた頃は、ちょうど子どもの非行のニュースが増え始めた時代だったそうです。父は「親として何ができるのか?」と、たくさんの本や育児書を読むうちに、親が子どもに愛情を注ぐことがいかに大切かということを強く感じたそうです。父はもともと情熱的でしたが、さらに思いを言葉にして「何があっても麻里の味方だからね」と伝えてくれました。私が思春期のときは「わかったわかった、なんか暑苦しいよ」なんて思うこともあったんですけれど、自然と自分にはセーフティーゾーンがあるんだと感じていたし、心強くもありました。
今となっては私も娘たちにしょっちゅう同じようなことを言っています。「パパもママも、いつでもふたりが大好きで味方だよ。ドゥドゥもばあばも、韓国のおじいちゃんとおばあちゃんもそう。うれしいことはもちろんだし、いやだなあって思うことも、なんでも話してね」と。
――関根さんがご両親から感じた安心感や心地よさを、今度はお子さんに伝えているのですね。
私が大人になってから、父が「人生は楽しいんだっていうことを、麻里が小さいうちから伝えたかった」って、教えてくれたことがありました。生きていくことは楽しいことばかりじゃないし、つらいことだったり、いろいろな壁にぶつかったりすることもある。それでも「人生は楽しい」と感じられる心を子どものうちから作っておければ、何があっても乗り越えられるはずだから、と。
そうしてできたのが「楽しさ貯金」という、父なりの哲学。ネガティブなことで気持ちが大きく揺さぶられても、それを上回るようなたくさんの「楽しかった思い出」を心にストックしておけば沈み込んでしまうことはないって、父は考えたんですね。
「だから、お父さんは麻里をたくさん楽しませて笑わせたいって思っていたんだ」と言っていて、「そうだったんだ」と。毎日ただただ父とおバカなことをして、ひたすら笑ってばかりいましたが、あの時間があったおかげで大人になった今も、何があってもポジティブでいられるようになったんだと思います。
――何気ない日常が、関根さんの心を少しずつはぐくんでくれたのですね。
私も娘たちには、人生は楽しくておもしろいものなんだって伝えていきたいですね。私は常におふざけをするわけにはいきませんから、そのあたりはドゥドゥに任せるとして(笑)、家族みんなで毎日楽しく、笑い合いながら共に生きることで、人生に対する向き合い方や感じ方を共有できればいいなと思っています。そうしたマインドが、将来、娘たちの生きるパワーや勇気になればうれしいですね。
関根麻里さんロングインタビュー・前編はこちら
INFORMATION
『Paddington’s Post パディントンの手紙』
マイケル・ボンド/原案 R・W・アリー/絵 関根麻里/訳 文化出版局
世界中で愛されているくまのパディントン。ロンドンでのブラウン一家との暮らしや、ペルーにいるルーシーおばさんとのリアルなお手紙が6つの封筒のページに入っている楽しい絵本です。
インタビュー/菅原淳子 撮影/名和真紀子 スタイリング/繁田美千穂 ヘアメイク/上野由可里(kodomoe2023年8月号掲載)