2022年12月20日

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】

著書『母』(中央公論新社)では母への複雑な思いを綴り、注目を集める青木さやかさん。kodomoe2022年4月号では、今振り返る母親との関係、11歳になる娘さんの子育てで大切にしていること、青木さん流の人との付き合い方についてじっくりお話を伺いました。kodomoe webではそのロングインタビューを全編公開。インタビューの後編をご紹介します。
※インタビュー内の年齢は、本誌
発売時 2022年3月時点のものです。

ロングインタビュー前編はこちらから。

あおきさやか/1973年愛知県生まれ。大学卒業後、フリーアナウンサーを経てタレントの道へ。「どこ見てんのよ!」のネタで大ブレイク。現在も、バラエティ番組やドラマ、舞台などで幅広く活躍している。動物愛護活動にも力を入れており、YouTubeチャンネル「犬と猫とわたし達の人生の楽しみ方」も好評。2010年に長女を出産。

ただ一緒にいるだけでなく
しっかり話す時間が大切

――お母さんとの関係がいい方向に向かったことで、娘さんへの接し方、思いは変わられましたか?

そうですね。これまで、私が子どもと向き合っているときに、自分が母に似ているなと感じることが多くて。自分の口調とか言葉の使い方に母を見る、みたいなことが、母が嫌いだったときは嫌だったんです。でも、母が嫌いじゃなくなったら、自分の中に母を見ることが、懐かしいなと思えるようになった。嫌じゃないどころか、もう親は亡くなってしまったけれど、バックアップしてくれているような気持ちにさえなったんです。子どもに対する影響はわかりませんけど、私の生きやすさ、育児のしやすさにつながっていますね。

――娘さんは11歳の小学6年生に。多感な時期ですから、幼少期に比べて、育児の大変さを感じられることもきっとありますよね。

難しいですよね、やっぱり。子どもはどんどん成長するので、悩みもどんどん変わっていきますし、どう接してあげたらいいんだろうと思ったりもしますから。日々新しい問題に向き合ってる、みたいな感覚です。とにかく、まずは娘の話を聞く、ということを大切にしています。

あと、私はなかなかできないんですけど、約束を守るということ。娘にとっては私だから話してる秘密があるんだけど、私はこういう取材があるとついつい娘のことをしゃべってしまって、他のママたちから聞いて「もうママは信用ができない」なんてことがあるわけですよ(笑)。それは約束破りになっちゃうので、信用を失っていくわけですよね。私はこれならいいと思ってジャッジして言っていることも、娘にとっては嫌で。難しいなと思いますよね。

――どこかに一緒に出かけることも多いですか?

イベントがあれば出かけたり、娘の友達と遊んだりももちろんしますよ。でも、私の先輩に「どこかに出かけて一緒に過ごしたつもりになっちゃうとよくないよ。日々の中で短い時間でも聞くとか、話すとかっていう時間が大切だと思うよ」と言われて、なるほどと。確かに、どこかに連れていって親の役目を果たしたみたいに思ってしまいがちだけど、先輩の言葉を聞いて違うなと思ったんです。ただ一緒にいる時間というよりも、集中して過ごす時間、濃い時間が必要かなと思うので、食事の時間を大事にしたり、最近は、娘と一緒にお風呂に入っていろいろと話しています。

――お風呂ではどんな話を?

学校で起きたことや今どう思ってるか、これから中学校に上がるので心配事がないかなど、聞いていますね。ただ話を聞いて、どう思うの? と娘の気持ちも聞く。そこに同調する、ということをしています。私の考えとか意見とかは、聞かれれば答える感じですね。

――娘さんがいてよかったなと、幸せを感じる瞬間はありますか?

やっぱり、ひとりの人と深く話せている、と実感できるときかな。どういう知り合いだったとしても、いつか離れるときがあるかもしれないけれど、娘はそれは絶対ないと言える存在ですから。だからうまくやっていくしかないとも言えますけど、そういう存在がひとりでもいるのは、いいものだなと思います。ずっと心配ですし、きっと死んでも心配ですから親子って大変なものだなと思いますけどね。でも、娘と過ごす時間は、いい経験になっているなと感じます。

ダメだとわかっていても
子どもにイライラしてしまう

――娘さんに対してこれは言うようにしていること、反対に、これは言わない、しないように気をつけていることはありますか?

ごめんなさい、ありがとう、などはきちんと言うようにしていますね。つい、娘にばかり言わせようとしてしまうのですが、言わせたければ私が言えばいいんだと気づいて。最近は「ママができてないじゃん」とか二言目には言ったりするので。

気をつけているのは、自分の仕事やプライベートで調子がいいとき、悪いときがあっても、娘の前ではそれを出さないこと。娘には一定でいようと思っています。とても難しいことですが。

――育児をしているとイライラしたり、子どもに対してなんでできないの? と怒りをぶつけてしまったり、それを後悔したりということの繰り返しだと思います……。

そうですよね。私もすごくありますよ。わかっているのにやってしまう苦しさがありますよね。やっちゃいけないと強く思ってるのに、やっちゃう。だからすごく罪深いと思っています。未熟というか、なんてダメなんだという思いがあるので。うん、本当にダメなやつです。

――気持ちが落ち込んだとき、娘さんに見せないように、何か違う方法でストレス発散することはありますか? 

しないですね。発散ではなくて、何の原因があるのかを考えて、行動して変えることしかない気がします。イライラするのは、恐らく子どものせいじゃないことが多いと思う。じゃあ何なのか、自分の嫌なところを見て反省するほうがすっきりするし、イライラもしなくなると思います。って立派でしょ、言ってることは(笑)。もちろん、私もできていないんですけど、こうできるのが理想ですよね。

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】の画像1

がんを深刻にとらえない
娘の前でも自然に話します

青木さんは2017年と2019年の2回、1年に1回受けている人間ドックで肺腺がんに罹患していることがわかり、手術を受けた。病気のことは娘さんには話さず、身近な人に預けて、入院期間を乗り切ったそう。現在は治っており、普段どおりの生活を送っているものの、今後の不安は拭いきれないという。

――入院、手術を行った際に、一番心配だったことは?

物理的なことですよね。まずは入院している間の娘の行き場所はどうしようと。これは元夫も、近所のママ友もすごく力になってくれました。あとはお金のこと。賃貸に住んでいたんですけど、元気に退院したら何かあっても支払えるぐらいの家を買おう、でも病気になっちゃったからローンは払えるのかな、とかそういうことですね。

――娘さんに病気のことを話さなかったのは、何か理由はあるのでしょうか?

そうですね、でもなかなか当時小学校2年生の子どもに話すのも難しいかなと。まだ、がんという言葉も知らなかったかもしれませんし、何のこと? という感じになってしまうのかなと思いました。

今は、娘も知っていると思います。私が取材などいろいろなところで言っていますし、友達と会うと、その場に娘がいても病気のことは普通に話したりもしています。「実はがんだったの……」と深刻に話すことでもないかなと。必要ないことは言わないですけど、そこまで特別にとらえることもないのかなと思っています。がんという言葉を、あまり重くとらえていないのかもしれませんね。

――今現在の不安や、病気に対しての思いを聞かせてください。

将来的に再発するかもとか、不安はもちろんありますよ。でも、入院して思ったのは、病気を患った方にもいろいろな方がいて。もう命が危ないというような人でもすごく丁寧で元気で感謝を伝えながら入院している方もいれば、比較的軽めの症状で入院していても落ち込んで沈んでいる方もいました。私自身、どっちを選びたいかと思ったときに、元気に生きていきたいなと思ったんですよね。

私は病気になって、自分の人生を見直しました。今も、ずっと自分を見直している最中です。そうして少しでも前に進むことで、ずっと元気でいられるんじゃないかと思って、挑戦している感じですね。

多くの人と付き合うことで
自分と他人は違うんだと再確認

――青木さんのお話を聞いていると、親孝行をするきっかけ、育児のサポートなど、必ず“人”が登場します。仲間や先輩、ママ友など、すごく人脈が広いですよね。

私、実は芸能界以外の知り合いがめちゃくちゃ多いんですよ。携帯電話の登録件数が、ものすごいんです。こういう取材でお会いした方も、今日も取材チームの3人が新しい友達になったと思えば、どんどん増える(笑)。人への壁が低いのか、来るもの拒まず去るもの追わずで、たくさん友達が増えていきます。あとは動物愛護の活動をしているので、そこでの出会いは特に大きくて、たくさんの方と知り合いますね。

――どんな人ともうまく付き合うコツはありますか?

これも親との関係と同じですが、相手に合わせて受け入れることかなと思います。「わかりました」と受け入れて、謝らなければいけないときは素直に謝ります。私は過去、素直じゃなくて多くの人とぶつかってきましたから(笑)。相手を受け入れればぶつかりません。頑張ってます(笑)。

――幅広い人と付き合うことは、得るものも大きいですか?

人は出会いで決まると思っていて。私は人こそが財産だと思っています。だから、人に対して区別しない、差別しない。役に立ちそうだから付き合う、みたいなことは1回もないですね。もちろん、相手から私が役に立つと思って近付いてくださることもあるんですよ。芸能人だとわかるとすごく興味を持たれて、その割にサーッと離れて行くことだってあります(笑)。傷つくこともありますが、人間不信にはならないですね。こういう人もいるんだなぁと勉強しています。

会えば会うほど、人っていろいろだなと思うんですよね。そこで、私は、自分と同じ人間なんてひとりもいないんだ、ということを学んでるんです。みんなこんなに考え方が違うんだから、自分の主張なんて役に立たないんだと思う。だから、周りを尊重しようと思えるし、無理に自分を押し通そうとしなくなりますね。結局、人と関わることで自分に返ってくるし、自分のためになってる。私には必要なことだなと思うんですよね。

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】の画像2

INFORMATION

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】の画像3『母』
青木さやか/著
中央公論新社 1540円
長年にわたる母との確執。わだかまりを残したまま逃げるように上京するも、バイトは続かず、タバコとパチンコに溺れた日々。母の最期に向き合うことで、生きづらい自分自身の人生を見直し、修復する軌跡を綴った一冊。

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】の画像4『厄介なオンナ』
青木さやか/著
大和書房 1650円
大学受験も就職試験もオーディションも落ちて、離婚もして、パニックにもなって、病気もして。それでも、わたしはわたしでよかったと思っています。「厄介なオンナ」が前向きに生きていこうとするまでを描くエッセイ集。

インタビュー/野々山 幸 撮影/馬場わかな スタイリング/高村純子 ヘアメイク/高城裕子 衣装協力/KEI Hayama PLUS(kodomoe2022年4月号掲載)

帯には青木さやかさんの推薦コメント。
描きおろし10ページを加えて、待望の書籍化!

女優・青木さやかさんロングインタビュー。ダメだとわかっていても子どもにイライラしてしまう【後編】の画像5kodomoe webの人気連載「実家に帰りたくありません」が書籍になりました。巻頭カラー6ページと、その後のエピソード4ページの描きおろしを追加。その後のイタコさんが描かれています! 帯コメントは青木さやかさん。
『実家に帰りたくありません』A5版 ソフトカバー 本文128p  990円(税込み)
詳しくはこちらから

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