子どもたちの免疫力が危ない? 「自然免疫」をきたえよう
2022年8月31日

子どもたちの免疫力が危ない? 「自然免疫」をきたえよう

感染拡大のおさまらない新型コロナウイルスに加え、この夏は、冬に多いとされるRSウイルスも大流行。不安の多い時期だからこそ、「免疫力トレーニング」で感染症に負けない体づくりをしましょう! 第一線で活躍されている、免疫学が専門の順天堂大学大学院の竹田和由先生に聞きました。

 新型コロナの感染症対策によって
子どもの集団免疫が下がっている!?

免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。自然免疫は生まれながらに持っている、すぐに働く免疫です。一方で「獲得免疫」は予防接種(ワクチン)やその病気に罹ることでその病気の情報を体に入れることにより、それ以降かからないようにする免疫です。
この自然免疫と獲得免疫の連携がうまくいっている状態が、「免疫力が高い」といわれる状態です。
「実はコロナ禍で感染予防が習慣化したことで、子どもたちの免疫に変化が表れている可能性があります。子どもはいろいろな感染症にかかることで免疫がトレーニングされ、適切な免疫力を養っていきます。ところが手洗いや消毒の徹底、マスクの着用、プールの中止などコロナ禍の感染予防対策で感染症にかかる機会=免疫学習の機会が減りました。免疫学習のないところにいったんウイルスなどの病原体が入り込むと、流行があっという間に拡大したり、重症化しやすいなどのリスクがあるのです。季節はずれのRSウイルスの流行などは、まさにこれですね」と竹田先生。
 「乳幼児期は適切な免疫力を育てる大事な時期。適切な感染予防対策をしながらも毎日の生活の中で免疫力を高めていくことが、将来にわたって子どもの健康を守るために大切なのです」。

 ヨーグルトなどの乳酸菌が作るネバネバ成分、
「EPS」が子どもの免疫力を強くする!

自然免疫を高めるには、充分な睡眠、適度な運動、バランスのいい食事が大切。生活リズムを毎日一定にすることもポイントです。
「夕飯の時間や就寝時間がどうしても遅めになってしまう、という家庭もあるでしょう。多少遅いのはしかたがないので、毎日同じペースを保つというのが免疫力にとっては大事です。週末だから朝寝坊しよう、夜更かししようなど、変則的にはしないことがポイントです」
 いろいろなものをまんべんなく食べることは大事ですが、その上で、免疫力を高める働きがあると言われる成分が入った食べ物を積極的に食べてほしい、と竹田先生。
「たとえばキノコにはβグルカン、めかぶなどの海藻にはフコイダンというような“多糖”と呼ばれる免疫に良い働きをする成分が含まれます。また、ヨーグルトの乳酸菌などが作り出すEPSという成分もこの多糖の一種です。乳酸菌が腸内細菌のバランスを整えて免疫力を高めるのはよく知られていますが、EPSは免疫システムに直接働きかけるとされています。乳酸菌の中でも、R-1乳酸菌が作り出すEPSはその作用が高いことが分かっているので、R-1乳酸菌を使ったヨーグルトを毎日継続して摂ってみるのもよいでしょう」                                
 免疫力を上げるには、食事を「おいしく、楽しく食べることもポイント!」と竹田先生。親子で免疫力UPの食生活、始めてみませんか?

イラスト/入江めぐみ

教えてくれたのは  竹田和由先生 

たけだかずよし/順天堂大学大学院医学研究科研究基盤センター細胞機能研究室准教授。専門は免疫学(NK細胞、癌免疫)。アメリカの大学やオーストラリアの研究施設での研究活動、客員准教授などを経て現職。

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