『まいごのたまご』【今日の絵本だより 第288回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『まいごのたまご』
アレックス・ラティマー/作 聞かせ屋。けいたろう/訳
KADOKAWA 1540円
ご存知ですか?
4月17日は、恐竜の日。
そして2022年のイースターも、4月17日。
イースターのシンボルといえばたまご、ということで、恐竜×たまごでこの日にぴったり、『まいごのたまご』をご紹介します。
「むかし むかしの おおむかし」。
恐竜たちが暮らす大地で、風がビュービュー吹く朝に、山の上からころころと、転がり落ちてしまったたまご。
そこへ、どしんどしんと響いてきた足音に、たまごは話しかけます。
「そこにいるのは だれですか?
ぼくは まいごの たまごです。
もしかして……ぼく、
あなたの たまごですか?」
足音の主、ステゴサウルスは聞きました。
「きみに、ツンツンは あるのかい?」
ステゴサウルスのトレードマーク、背中に並んだ葉っぱのようなツンツンは、たまごにはありません。
「ぼくに ツンツンは ありません。
あなたのたまごじゃ ないみたい」
それからも恐竜たちが1匹ずつやってきて、たまごに話しかけますが、たまごにはブラキオサウルスのような長い首も、トリケラトプスのような3本のつのも、コリトサウルスのような山型のとさかもありません。
「ぼくは いったい、
だれの たまごなのだろう?」
たまごが泣き出したとき、ちょうど沈み始めた大きな太陽の光が、たまごの中のシルエットを映し出し……。
ダイナミックでカラフルな恐竜たちは、恐竜好きなお子さんはもちろんのこと、そうでないお子さんにもきっと親しみやすい愛らしさ。
夕日に照らされ、浮かび上がったたまごのシルエットを見て、
「きみの かぞくが わかったよ!」
と、みんなでたまごを山の上まで送り届ける様子には、思わず胸がほっこり。
優しい恐竜たちのおかげで、みんな安心のハッピーエンド。
登場する6種類の恐竜以外にも、見返しにはいろんな恐竜が並んでいます。
「これは、なんて名前の恐竜かな?」と、新しく興味が広がりそうですよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。