2021年7月23日

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。ぜひ伝えたい「倍率探し」が子どもの成長の鍵【後編】

4兄弟の末っ子として育った、松丸亮吾さん。長兄であるメンタリストのDaiGoさんを筆頭に、個性的な兄に囲まれていた幼少時代。そして、若くして亡くなられたお母さんのことなど、kodomoe2021年6月号では、今の松丸さんを“つくった”ご家族のことについて伺いました。
kodomoe webでは、ロングインタビューを全編公開。後編では、松丸さんが高2のときに他界されたお母さんのこと、ぜひ伝えておきたい「倍率探し」についてなどをご紹介します。
前編はこちら

まつまるりょうご/1995年、千葉県生まれ。東京大学入学後、東京大学謎解き制作集団の2代目代表としてイベント、放送、ゲームなど数々の分野で「謎解き」ブームを起こす。現在はRIDDLER株式会社代表取締役として謎解きコンテンツ開発、「ひらめきの楽しさ」をさまざまな形で提供。2021年6月~2022年3月まで、全国の小学校向けに「謎解きやろうプロジェクト」を提供中(申込は2022年2月28日まで)。

何事にも熱心だった母と
ちょっと天然で優しい父

いつも家族を支えてくれたお母さんは、松丸さんが高2のときに乳がんで他界。松丸さんは折に触れ、ツイッターで両親のことをつぶやいている。
例えば、お母さんが子どもを産むには命がけな体と診断され、別れを切り出されたとき、お父さんは「子どもが産めなくても君と幸せになりたい」と言ったこと、両親ともまるで兄弟のように話しやすく聞き上手だったこと、TV番組の企画で、お父さんに改めて感謝の思いを伝えられたのがうれしかったことなど。

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。ぜひ伝えたい「倍率探し」が子どもの成長の鍵【後編】の画像1

――息子さんがご両親のことをこんなふうに語れるなんて、素晴らしいご家族ですね。

そうですね。僕の場合は結構、母親に対する後悔が大きくて。病気で亡くなった母親に、きちんと感謝を言い切れていなかったんで。いろんなインタビューで振り返ると、うちの母親って本当にすごかったんだなって感じるから、子育てに悩んでいる最中の人たちのヒントになればいいなとは思いますね。だからツイッターでも結構つぶやくんです。僕は母親に感謝して今の自分があるから、参考にしてもらえたらと。

出産の件に関しては、本当にすごいなと思います。母親だけでなく、父親も。「いや、子どもなんて産めなくていいよ」って、自分だとしたら言えるかな、そこから先、子どもがいない人生になるという選択をできるかな、と。

思えば父と母で、バランスが取れていましたね。母親が教育熱心で、父親も同じだったら窮屈だったと思うんですけど、父親はどちらかというと礼儀やしつけを気にする方で。人としてやっちゃいけないことには怒るとか、ミスはちゃんと正すとか。謝ることを教えてくれたのはうちの父親かもしれないです。
でも、結構優しくて。例えば僕が中学受験間近で、疲れているけど勉強しなきゃってときに、父親が「ちょっとこっちおいで」って言って、「今からボウリングに行こう」って。母親はそのあとかなり怒っていましたが(笑)。
でも、そのときのボウリングはめちゃくちゃ楽しくて、すごくいい息抜きになったんですよね。父親の天然さというか、結構楽観的で、「なんとかなる」みたいな感じにはよく元気づけられました。

「倍率探し」が
子どもの成長の鍵

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そう、僕から子育て世代の人に、ぜひ伝えておきたいことがあって。自分もそうだったんですけど、子どもが好きなことに取り組むときの能力って、2倍、3倍の倍率がかかると思うんですね。何をやるにしても普通は1時間で1しか勉強できないのが、好きなことだと2倍、3倍勉強できたりする、つまり効率がいい。
でも、嫌なことだとそれが1どころか0.5、半分になっちゃったりするんですね。大人になるまでの時間ってみんな同じなので、だったら倍率が2倍、3倍かかることをずっとやらせてあげた方がすごい成長するし、人と違う能力をいっぱい身につけられると思うんです。

で、一番避けた方がいいと思うのが、子どもの習い事を親が決めてしまうこと。「ピアノをやりなさい」とか「水泳行きなさい」とか。「子育てにいい習い事ランキング」みたいなことって、本当にどうでもいいと僕は思っていて。その子が一番やりたいことをやらせてあげないと、この倍率って上がらないんですよ。だから、ピアノをやりたくない子に続けさせても成長しない。それで親が「この子はピアノの才能がないかも」って思うのは、ひどいエゴで。音楽的センスを養いたいんだったら、ピアノである必要はないんです。ギターでもいいし、ドラムでもいい。そういういろんな楽器を見せた上で、「何やりたい? 音楽やりたい?」って聞いて、「ギターがやりたい」って言ったらやらせてあげれば、2倍、3倍に伸びるし。

だから、この倍率探しですね。子どもが好きで倍率がかかることを、親がとことん探してあげる。うちの親の場合だと、僕は読書が嫌いだったけど、算数パズルみたいなものはすごくやっていたんですよ。それで「この子は算数の才能があるかも」って思った母親から『数の悪魔』(※)とかを渡されて、算数にどハマリする。で、算数の倍率が2倍3倍になって、結果、算数の成績がよくて麻布に入れたんですよ。そうやってつながってくので。

で、子どもが習い事を「やめたい」って言ったら、やめさせてあげる。僕、水泳好きだったんですけど、水泳の先生が怖くて「やりたくない」って言ったら、親がスパッてやめさせてくれた。これを無理に続けさせちゃうと、どんどんこの倍率が落ちるんですよね。だから子どもの意志で選択させてあげてほしい。そのときにちゃんと理由を聞いて、原因が取り除けるなら取り除いてあげる。「別の先生で続けてみたら?」って提案はいいんですけど、「もったいないし、今までこの先生とやってきたんだから、続けなさい」っていうのは、絶対ダメですね。
※『数の悪魔ー算数・数学が楽しくなる12夜』エンツェンスべルガ―/著 ベルナー/絵 丘沢静也/訳(晶文社)

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――ありがとうございます。松丸さんが大好きな、でも世の親には悩ましい問題でもある、ゲームとの上手な付き合い方についてもアドバイスをいただけますか。

そうですね。まずは、親御さん自身がゲームをやった方がいい。なぜかというと、自分が知らないくせにあれこれ言われるのって、子どもは一番ムカつくんです。説得力が皆無なんですよ。だから自分でゲームをやった上で、「あ、これって勉強になるかも」、逆に「これはやり過ぎるとよくないかもな」というのを、親御さん自身が知らなきゃいけない。

そうするとさらにいいことがあって、親子のコミュニケーションになるんですよ。「このゲームってこれが面白いんだね」とか。実際ポケモンとかは「あ、キャラクターのセリフをちゃんと読まないと、道具のありかがわからないんだな」とか。
ポケモンの場合は算数が結構絡んできてて。例えば、自分の使う技のタイプが相手のポケモンにとって弱点だと、2倍のダメージを与えられるんです。で、威力が100の技と、威力が60でも相手にとって弱点の技、どっちを使う方がいいかというと、100だと100そのまま、60だと2倍で120入る。
だから子どもは60の技の方を選ぶんですよ。これって、「100と60×2、どっちが大きい?」って、不等号の計算を自然にしてるんです。

ゲームをやるときにそうやって勉強になることと、ある程度を超えると惰性になることもあるんですね。シューティング系のゲームとか、ある一定のところまでは相手を読むという戦略性が身につく。でもあるラインを超えると、コントローラーさばきとか、ゲーム性にハマり過ぎちゃう。勉強にならないのに惰性で続ける状態になったら、そこは大人が見極めて、ちょっと注意が必要かもなって思います。

あと、ポケモンカードを僕はとてもおすすめしてて。カードゲームだからそんなに目を酷使しないし、あとは、計算がめちゃくちゃ多いです。元が30点で、このポケモンについているエネルギーの枚数×20ダメージ追加、という技があると、今エネルギーが4枚ついてるから20×4+30、110点です、といったことを遊びながらやるんですけど。ドリルでやると単なる計算式の20×4+30を、ポケモンカードだと、その子が自分で考えて自然と計算するようになってくる。
だから計算が苦手な子には、ぜひカードゲームをやらせてあげてほしいですね。ボードゲームでもいいです。計算要素が必要なボードゲームって、いっぱいあるので。

0から1への
ものづくりにフィーチャー

――4月からの新番組、情報バラエティ「ゼロイチ」(日本テレビ系)にレギュラー出演もスタートしましたね。

はい、土曜の10時半から13時25分、約3時間の生放送で、「0から1を作る」が番組のコンセプトです。何かを作る人、考える人ってこれから先、重要になってくるはずで。子どもたちがユーチューバーに憧れたり、ものづくりへの関心が高いのって、いいことだと思う。そういうことをフィーチャーしていく番組になります。
「ものづくりをしてみたい」、「クリエイターってどんなお仕事なんだろう?」、そういうことを深掘りできると思うので、親子で「ゼロイチ」を見ていただけると、将来の仕事や夢へのヒントになるかもしれません。ぜひよろしくお願いします。

INFORMATION

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。ぜひ伝えたい「倍率探し」が子どもの成長の鍵【後編】の画像4「ゼロイチ」(日本テレビ系)土曜朝10:30~13:25放送中
トレンドや次世代のスターを「ゼロイチで生み出す」エンタメ情報バラエティ。松丸さんはレギュラーとして、指原莉乃さんらと一緒に番組を盛り上げています!

インタビュー/原陽子 撮影/大畑陽子 スタイリスト/飯村友梨 ヘアメイク/大室愛(kodomoe2021年6月号掲載)
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