2021年7月16日

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。考えることの楽しさに謎解きで出合ってほしい【前編】

4兄弟の末っ子として育った、松丸亮吾さん。長兄であるメンタリストのDaiGoさんを筆頭に、個性的な兄に囲まれていた幼少時代。そして、若くして亡くなられたお母さんのことなど、kodomoe2021年6月号では、今の松丸さんを“つくった”ご家族のことについて伺いました。
kodomoe webでは、ロングインタビューを全編公開。前編では、兄弟ゲンカの絶えないにぎやかな毎日だった幼少期や、中学受験期のお母さんのサポートについてなどをご紹介します。

まつまるりょうご/1995年、千葉県生まれ。東京大学入学後、東京大学謎解き制作集団の2代目代表としてイベント、放送、ゲームなど数々の分野で「謎解き」ブームを起こす。現在はRIDDLER株式会社代表取締役として謎解きコンテンツ開発、「ひらめきの楽しさ」をさまざまな形で提供。2021年6月~2022年3月まで、全国の小学校向けに「謎解きやろうプロジェクト」を提供中(申込は2022年2月28日まで)。

家族で見るクイズ番組が
実は嫌いでした

東大在学時から謎解きブームを巻き起こし、現在は謎解きクリエイターとして「おはスタ」「あさイチ」「ヒルナンデス!」、今春からスタートした「ゼロイチ」など、TVでも大活躍の松丸亮吾さん。
4人兄弟の末っ子で、長兄はメンタリストとして活躍するDaiGoさん。幼少時は兄弟ゲンカの絶えないにぎやかな毎日だったそう。

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。考えることの楽しさに謎解きで出合ってほしい【前編】の画像1

――ご自分のことをよく「負けず嫌い」と語られていますが。

兄が3人いて、本当に日々ささいなことでケンカしてたんですよ。例えば小学生の頃、手巻き寿司の具が、人数分あったはずなのに僕の大トロがない。「誰かが食べた!」って言ってもみんな知らん顔で、「絶対、怜吾だ!」ってすぐ上のお兄ちゃんのせいにしたら、「いや、やってないし」って。で、ケンカしてると「うるさい!」って、さらに上のお兄ちゃんが僕を怒って、僕が悪者になる、みたいな流れがずっとあって、勝てないことがすごく悔しくて。
家族でクイズ番組を見てても、年齢が上の方が答えがわかるじゃないですか。だから父親や母親には絶対勝てないし、お兄ちゃんたちにも勝てない。なのでクイズ番組がすごく嫌いでした。

でも、当時フジテレビ系列で放送していた「IQサプリ」という番組は、知識量に関係なく、頭の柔らかさで解ける問題だったんです。小学生でもひらめきで解けるのがすごい楽しくて。家族の中で最初に解けたりすると、「え、これ僕、勝てる!」ってうれしくて、そこからいわゆる謎解きにハマっていったんですね。

謎解きはクイズと混同されることもありますが、特別な知識がなくても、その場のひらめきで答えを導き出せるものが謎解き。知らなければ解けない、答えを知っていることで楽しめるものがクイズ、という定義が僕の中ではあります。

――10歳くらいの頃には、ご自分で問題を作り始めたとか。

そうですね。小学3年生のときに「IQサプリ」にハマって、図書館でいっぱい謎解きの本を借りたんですけど、1年かけて全部読み切っちゃって。「どうしよう?」って思ったときに、「あ、自分で新しい問題を作れば、今までなかった問題ができる。それってすごい意味があるなあ」って考えて。小学校4年生から問題を作っていましたね。

――「自分で作れば」って思うところがすごいですね。

いやあ、作ること自体はそんなに珍しくはないと思うんです。ただ、うちの場合は、僕が家族に問題を作って出したときに、誰もそれをむげにしなくて。お兄ちゃんも「弟が出した問題を解いて勝ってやる」って、負けず嫌いだったんで。両親も問題を解いて、「これがちょっと難しかったなあ」とか言ってくれて、「こんなことやってないで勉強しなさい」なんてことは絶対言わなかった。だから謎解きの問題を作ることがずっと楽しく続けられた、その家族のサポートはうれしかったですね。

――その細やかなやりとりが、なかなか難しいですよね。男4人兄弟だったら、日々普通に過ごすだけでも大変かと思います。

もう、なんでもケンカになりますね。本当にひどかった(笑)。ゲームって大体4人対戦が多いんで、ちょうど兄弟4人でできるんですよ。でも1人ずつ脱落していくゲームだと、まず上3人が寄ってたかって僕を邪魔して負けさせる。もう、本当にえげつないんで。だからお兄ちゃんのコントローラーを引っこ抜いたり、電源切っちゃったり。ひどいときはコントローラーをお兄ちゃんに投げつけて、怪我させてめっちゃ怒られたり。よけられたときは壁に当たって穴があいちゃったりとか。

――すごいパワーですね(笑)。

いや、昔はひどかったですよ、本当に。もうヤンチャだし、腕白だし。両親も結構手を焼いてたんじゃないかなって。一番上のDaiGoとは9つ離れてるんですけど、いまだにケンカしますしね。

成績を子どものせいには
絶対にしなかった母

そんなにぎやかな松丸家のお母さんは、薬剤師として働きながら子育てをし、4人兄弟の勉強も丁寧にサポートしていた。松丸さん自身は名門麻布中学・高校を経て、東京大学工学部に進学している。

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――お母さんはどんなふうに勉強をサポートされていたんですか。

勉強は大体リビングの大きいテーブルでしていました。で、母親がキッチンで料理を作りながら、子どもたちのようすをよく見ていて。僕の集中が切れたら、「何かわからないことあったの?」と聞いてくれたり。「休憩して、何分経ったらまたやろうね」とか、うまくマネージメントしてくれていた。子どもの状態やその原因をよく見ている親だったなって思います。
特に、興味の引き出し方が上手で。僕、本はあまり読まないんですよ。文字を読むのが速くないし、文章を書くのも得意じゃなくて、人と話したり聞く方が好きだったから。でも麻布中学の入試には、物語文がすごく出てくるんですね。登場人物の気持ちを正確に読み取らなきゃいけない。で、普通の親はいろんな物語を読ませると思うんですけど、僕の場合は、ドラマやアニメをいっぱい見させてくれたりとか。
あと、RPGでストーリーに重点を置いているゲームって実はいっぱいあって。例えば「テイルズ オブ ファンタジア」「シンフォニア」とかの「テイルズ オブ」シリーズは、ただ敵を倒すだけでなく、話が進むにつれて登場人物の気持ちが深掘りされていく。みんなそれぞれの正義があって、思いが交差していくというゲームなんですけど、それとかは入試にすごく役立ちましたね。

――中学受験は、親御さんにも大変なミッションだと思います。

中学受験に関しては、保護者と子どもの二人三脚ですよね。僕の場合は、なぜか「麻布に行きたい」っていう気持ちがすごく強かったんですよ。でも小さい頃から、自分が好きなことには全力で取り組めるんだけど、ちょっとでも違うと思ったことはとことんやらない性格で。例えば社会で「大化の改新」なら645年という年号を聞かれるじゃないですか。でも「こんなの覚えてもしょうがないだろ」って僕は思ってて。「645年って覚えたから何ができる?」って。大化の改新のストーリーとか、こういう教訓があった、とかならいいんですが、暗記事項に意味を感じられなかったんですよ。だから社会の成績はずっと悪くて。

そのとき母親は、僕の苦手なことにどう振り向かせるかを考えて、僕が間違えた問題を、全部まとめてくれたんですよ。テストでミスした問題をコピーして貼り付けた、弱点スクラップノートを作ってくれた。「はい、これ解けたら一気に勉強できるようになるよ」って言われて。「え~、やりたくない」って言っても、「でも、これでもし1問でも解けたらすごいよ。1回間違えた問題ができたってことだから、強くなったってことじゃない」、そう言われて、一気にモチベーションが上がって。

――お子さんの背中を上手に後押しされていたんですね。

そうですね。多分母親は、子どもが自分で取り組む姿勢を育てたかったと思うんですけど。勉強のマネージャーですよね。例えば野球選手がずっとピッチングしていても、自分の弱点には気づきづらい。そこで「肩が回っていない、踏み込みが弱い」って全部言っちゃうと育たないから、ある程度自分でやらせて、「ここだけは言ってあげないと」という部分をアシストしていた感じでしたね。「苦手部分を全然復習してないな」って気づきから、スクラップノートが生まれてるし。
そのノートは多分僕とすぐ上の兄向けで、一番上のDaiGoの場合は知識欲がすごくあったので、まだ知らないような新しい知識、歴史や文学の本を渡したりとか。「知らない世界を見せてあげる」という役割を。

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。考えることの楽しさに謎解きで出合ってほしい【前編】の画像3

――それぞれのタイプに応じてサポートを変える、すごいですね。

すごいと思います。うちの母親は本当に、教育に関してよくなかったとこがほぼないっていうか。今振り返ってもスーパーお母ちゃんだったなって。

逆に、自己犠牲が過ぎて心配でしたね。小さいときは気にならなかったんですけど、今振り返ってみると、仕事をしながら4人育てて弁当や料理も全部作って。で、インテリアのあれこれも、全部母親がトールペイントで手づくりしたもので。一体いつやってたんだろう? 僕らが寝てからやってたのかなあ。それでまた次の日、朝起きて弁当作ってって、どんなスケジュールだったんだろうなって、いまだに謎なんですけど。

一番すごいなと思うのは、勉強の出来を絶対に子どものせいにしなかったことです。よく親御さんからの相談で「うちの子、全然勉強しないんです」「そんなに頭がよくないんで」なんて言われるケースが多くて。「いや、ダメだよ、それを言っちゃ」って、そのたびに思うんですよね。うちの母親は、例えば僕が勉強しなかったとしたら、自分のマネジメントが悪いからって考えたんですよ。子どもは自分で解決するほどの力をまだ持ってないから、母親が「もしかしたら自分の一言で、アプローチひとつで未来が変わるかも」って。

親は常に子どもに「可能性がある」って思い続けなきゃいけない、と僕は思っていて。特に、「才能がない」「地頭が悪い」みたいな言葉は、絶対に使わないでほしい。うちの親も絶対使わなかったです。逆に、「うちの子は天才だ」ってよく言ってました(笑)。
実際に天才かどうかは別にどうでもよくて、親が思っているという、そのスタンスが大事なんですよね。「亮吾は算数がすごく得意で、数字が大好きだ」「だから算数の天才かもしれない」って両親が話してるのを聞いて、すごくうれしかったんですよね。「僕ってすごいのかも!」って自信になったし。

――そうですよね。保護者が我が子を信じて後押ししてあげるのが一番大事なんですけど、日々の中ではつい見失いがちで。

いや、でも仕方ないと思います。家事も大変ですし、日々のストレスもあるでしょうし、僕が親になったときに、まるで同じことができるとは思わないんですけど。でもやっぱり意識はしたいですね。

僕が、今謎解きを子どもたちに作っているのも、そこがひとつのキーポイントで。勉強って最初のインプットが長いんですよね。例えば四角形の面積を求めるために「タテ×ヨコ」っていう公式を覚えて、初めて問題が解ける。でもこの公式を覚えてないから頭が悪いのかっていうと、そんなことはない。先生がちゃんと「タテ×ヨコ」を教え切れなかった結果、きちんとインプットされていない。繰り返し習えば誰でもできると思うんですよ、「タテ×ヨコ」なんて。でも、それでつまずいた結果、「自分って、頭悪いのかも」って自信をなくしちゃう。

謎解きはそこをひっくり返す力を持っていると思うんです。誰かに教わって解くんじゃなくて、公式も知識も要らないし、年号も覚えなくていいから、誰にでもチャンスがある。だから自分の力で気づいて答えがわかった瞬間、「僕、天才かも!」ってなるんですよ。公式や解き方を「教えてもらったのにできない自分」でも、謎解きだと「教えてもらってないのにできた自分」っていうのが成立するんですね。

僕、子どもが「面白い! うれしい、解けた!」って喜んでいる顔が一番好きなんです。それで小さい子が謎解きにハマると、「考えることが楽しい」って気づいて、勉強に戻ってくれる。そのサイクルを、なんとか作りたくて。

小さいときの僕がそうだったんですよね。勉強でもクイズでも勝てなかったけど、謎解きでは家族に勝てた。「頭を使うこと自体が苦手じゃないんだな」っていうことに気づいて、そこから、「もうちょっと勉強も頑張ってみよう」とか、「公式覚えたらもっと点とれるかも」となっていったんで。

インタビューは後編へと続きます

INFORMATION

謎解きクリエイター松丸亮吾さんロングインタビュー。考えることの楽しさに謎解きで出合ってほしい【前編】の画像4「ゼロイチ」(日本テレビ系)土曜朝10:30~13:25放送中
トレンドや次世代のスターを「ゼロイチで生み出す」エンタメ情報バラエティ。松丸さんはレギュラーとして、指原莉乃さんらと一緒に番組を盛り上げています!

インタビュー/原陽子 撮影/大畑陽子 スタイリスト/飯村友梨 ヘアメイク/大室愛(kodomoe2021年6月号掲載)
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