マレーシアの旧正月は「持ち上げて混ぜて食べる」が、おめでたい!【教えて!世界の子育て~マレーシア~】
海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じことや違うこと、各国からリアルな声を伝えてもらいます。
マレーシアでふたりの子どもを育てるカオリさんが今回伝えてくれるのは、マレーシアで毎年盛大に行われる「旧正月」について。爆竹や獅子舞などが行われる賑やかな旧正月では、お祝いごとの際に食べるお料理の食べ方がとってもユニークなんです!
ニューイヤーが4度!
にぎやかにお祝いする旧正月
マレーシアの雨季も過ぎ去り、1月の半ば頃からカンカン照りの太陽が照りつける季節が戻ってきました。 雨季が過ぎ去った後の暑さは旧正月の訪れを告げるような気がして、マレーシアに住む私にとってはいつもワクワクする時季でもあります。
実はマレーシアにはニューイヤーが1年に4度もあることを、みなさんはご存じですか?
多民族国家であるマレーシアには主にマレー系、中華系、インド系マレーシア人が暮らしています。文化や宗教の異なる民族がともに暮らしているのでお祭りやイベントもさまざまあり、ニューイヤーも民族によって祝う時季が異なるんです! とても興味深いですよね。
普段なら1年を通してさまざまな文化を体験することができ、子どもも大人も異文化に触れることが多いのは、マレーシアで生活していて味わうことができる魅力のひとつです。しかし、昨年は残念ながらコロナの影響でたくさんのお祭りやお祝いごとが自粛されてしまいました。
今回は、そのお祝いごとの中から、マレーシア華人をパートナーに持つ私が、中華系マレーシア人の中で一番盛り上がると言っても過言ではない「旧正月」をどのようにお祝いするのか、面白い文化や風習などについてシェアしたいと思います!
持ち上げて、かき混ぜて
お祝いの言葉を述べて、食べる!
マレーシアでは年末12月31日には、毎年カウントダウンの花火が行われますが、一般的な正月である1月1日は祝日にはなるものの、何か特別なお祝いがあるわけではありません。ちなみに、日本人の利用者が多いMITSUKOSHI ISETANや日系スーパーなどではおせちやお寿司、お餅の販売がさかんにおこなわれます!
今年の旧正月は、2月12日から始まり26日まででした。
マレーシアの旧正月をお祝いする上で欠かせない食べ物が「魚生(イーサン)」という料理です。これは日本でいうおせち料理のような意味を持つ、とても縁起が良い食べ物です。
魚生は、中国本土から伝来した文化ではなくマレーシア独自の文化で、お隣の国、シンガポールでも食べられています。
魚生には必ず生の魚、お刺身が必要で、中国語で「魚」を発音する言葉が「豊かになること」という意味を持つ「余」という音に似ていることから、縁起の良い食べ物として取り入れられています。
味付けは梅のソースと水飴を混ぜたものをかけ、混ぜます。必ず決まった味付けがあるわけではありませんが、我が家ではさっぱりした味付けで食べるのを好んでいます。
また、魚生に使われる色は7色と決まっており、これもそれぞれ縁起がよくおめでたい意味を持ちます。色が重要で、手作りする場合は自分の好きな食材を入れていいそうです。
例えばわが家では、たくあんや紅しょうが、中華わかめなどの日本でも馴染みのある食材をいくつか入れます。彩りが良くなるだけでなく、味にアクセントが出てとても美味しい魚生になるんですよ!
そのほかにも、紫キャベツ、にんじん、きゅうりなどを入れ、色鮮やかな魚生に仕上げます。そして最後に油で揚げたビーフンをふりかけたり、お菓子のフレークをふりかけて歯ごたえが良いものにします。
市販の魚生を買うこともありますが、生野菜のサラダに近いものが多く、我が家の子どもたちはちょっと苦手! 大人も味に飽きてしまうことが多いので、アレンジとして日本のお漬物を入れて味を加え、皆が魚生をひとつの料理として美味しく食べられる工夫をします。
そして何より驚くべきなのはこの料理を食べるときの食べ方なんです!
まず、皆が箸を持って魚生を囲み、いっせいに箸で魚生の具を高く高く上に持ち上げます。そして落とす! 落とし混ぜるに近く、新年の抱負やお祝いの言葉を述べながらぐちゃぐちゃにかき混ぜます。
テーブルも料理が載っていたお皿も、この時点で既に原形をとどめておらず、しっちゃかめっちゃかなのですが、むしろそれが良いんです! とにかくポイントは高く高く上に持ち上げることです!
魚生自体が縁起の良い食べ物なので、特におめでたい旧正月中では、何度か食べる機会がある料理なんですよ!
15日間続く旧正月
旧正月は「初一」と呼ばれる元旦から始まり、「初十五」と呼ばれる第15の日まで続きます。大みそかや元旦だけでなく、この15日間を旧正月としてお祝いするので、この期間は中華系マレーシア人にとって1年で最も重要なものとなります。
多民族国家のマレーシアですから、旧正月の15日間は幼稚園や学校、企業やお店が休みになるわけではありません(中国では全て休みになるところもあると聞いたことがありますが)。マレーシアに住んでいる中華系以外の方たちは旧正月中も通常通り仕事をしています。
その年の旧暦のカレンダー次第ですが、大体第4日目あたりを過ぎると、中華系の方も仕事に戻る方がたくさんいます。子どもたちの幼稚園は、第7の日から始まりました。
初一と呼ばれる元旦には日本のお正月と同様、子どもたちがお年玉を受け取ります。
また、旧正月中は新しい物を身に着けることが好まれます。そのため、中華系マレーシア人は旧正月前になると美容室へ行って髪をととのえたり、洋服や下着を新調したりします!
また、引っ越しや家の改装工事なども旧正月の前に終わらせ、新しい住まいで新年を迎えると縁起が良い、とも言われています。
さらに、旧正月の第1の日(元旦)には、掃き掃除や洗濯、ゴミ捨てなどの家事をすることが一切禁止されています。それは、家の中の福を外に出してしまう行為と結び付けられているという言い伝えからです。
例年、初一には親戚や友人の家を回って新年の挨拶をしたり、挨拶をした先で子どもたちにお年玉を配ったりと、人の行き来があるのが旧正月。
しかし今年は、コロナの影響で旧正月中の過ごし方に関するさまざまなルールが設けられました。たとえば、共にお祝いすることができるのは同じ家に同居する家族のみというルールや、お寺の参拝に人数制限が設けられるなど。
中華系マレーシア人は元々家族の結びつきがとても強く、1年の中で一番大切で大きな行事である旧正月を重要視しています。さらにこの時季には、遠方の家族を呼び寄せて大家族で賑やかに楽しむことを好みます。
ですが、今年はコロナの影響で旧正月の祝い方にも変化が生じ、例年よりだいぶ静かな旧正月となりました。
初七、初八、初九に
行われることとは?
旧正月でとても興味深いのは、期間中、中国の神話や歴史にまつわるさまざまなお祝い事が幾度となくおこなわれることです。
例えば「初七」と呼ばれる元旦から数えて第7日目は、中国の神話の中で「女神様が人間を作った」とされている日で、私たちが誕生したおめでたい日と言われています。
そのため、初七には先ほど紹介した魚生を再び食べると縁起が良いと考えられています。
その後、初八から初九の夜にかけては、ひっきりなしに爆音の爆竹や花火が鳴り響きます!! 初九の日は、西遊記にも出てくる天地の全てを司る神・ジェイドエンペラーの誕生日とされており、福建人の方たちが花火や爆竹で盛大にお祝いをする日だからです。
この日は子どもたちも夜遅くまで起きて手持ちの花火をして遊んだり、儀式に参加したりするのが毎年の過ごし方です。
マレーシアに住む日本人の方にとっては、何度旧正月を経験しても、この爆竹に慣れない! 眠れない! という声をよく聞きます。
日本では、こんなに爆竹の音を聞いたり自分の家の間近で大きな花火があがることなどほとんどないでしょうから、マレーシアで体験する旧正月はとても活気に満ち溢れていて賑やかに感じることでしょう!
旧正月の風物詩
ライオンダンス♪
マレーシアの旧正月の風物詩といえば「獅子舞/Lion dance」です。
しかし、今年はコロナ禍に伴うルールにより、こちらのイベントも禁止となりました。
通常マレーシアでおこなわれる獅子舞には、魔除けや疫病を退治する意味合いがあり、新年を迎えて新たに仕事に戻る際に会社の発展や厄払いを込めて、オフィス前やお店の前で目にすることもあります。
大太鼓やシンバルのような楽器とともに披露されるパフォーマンスはとても迫力があり、大音量なので活気に満ち溢れています。爆竹と同様、ライオンダンスを目にして驚かれる日本人の方もたくさんいらっしゃいますよ!
今年はコロナ禍の影響で旧正月の祝い方にも変化が生じて、とても静かなニューイヤーを過ごしました。
インターネットが普及したお陰で、遠方にいる家族や親戚たちと気軽に話したりテレビ電話をしたりできるのは便利ですが、やはり1年の中で最も重要な旧正月に集まって一緒に過ごすことができなかったのは残念ではあります。
来年はまた皆で集まって賑やかな旧正月が過ごせるようになることを願うばかりです!
カオリさん
マレーシアの首都クアラルンプールで就職、結婚、出産などを経験し、現在マレーシア在住歴7年目。年子の男の子兄弟の子育てに日々奮闘中です! 現地のローカルフードを食べることが大好き、最近はインテリア雑貨探しにハマっています。
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