『サンドイッチ ぎゅーっ』【今日の絵本だより 第167回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『サンドイッチ ぎゅーっ』
ひがしちから/作 光村教育図書 1320円
11月3日は、文化の日であり、ゴジラの日であり、ハンカチーフの日であり、そしてサンドウィッチの日。
サンドウィッチの生みの親であるイギリスの貴族、第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューの誕生日にちなんで制定されたもので、「1・1・3」で「いいサンド」とも読めることから。
また、3月13日も「サンドイッチの日」なのだそうで、こちらはふたつの「3」で「1」をサンドしていることから。
1年に2回も記念日がある、愛されサンドイッチ。
今回はそれにちなんで、『サンドイッチ ぎゅーっ』をご紹介します。
はるくんは、ゆき先生が大好き。
でもなかなか
「ぎゅーって して!」
と言えません。
素直にそう言える子がうらやましそうなはるくんを見て、ゆき先生は言いました。
「よーし、じゃあ きょうは サンドイッチ ぎゅーっ しよう!」
みんなに両手を大きく広げて、
「パンに なったよ!」
するとまりちゃんが一番乗りに
「たまごに なる!」
と飛びついて、先生がぎゅ~っとしたら、たまごサンドイッチのできあがり。
「ぼくはハム!」
と、こうくん。
「チーズ!」
「レタス!」
先生がぎゅぎゅぎゅ~っとしたら、たまごハムチーズレタスサンドイッチのできあがり。
それからもどんどん中身が増えていきます。
おやおや、「プリン!」や「アイス!」まで。
さあ、はるくんは……、どうするかな?
サンドイッチのごっこ遊びに、「ぎゅーっ」の幸せがいっぱいにつまった絵本。
コロナ禍の日々、「ぎゅーっ」が普通に推奨できないのが、実にもどかしいです。
子育てはあっという間と言うけれど、園のお友達同士どうしでこんなにてらいなく「ぎゅーっ」ができるのも、その中のさらにわずか数年のことですよね。
お互いの体温が感じられるような、こんなに密な距離感って。
みんながうれしいラストの後、裏表紙にさらなる幸せが待っていて、その上この絵本は見返しもいいんですよ。
前も後ろも、同じ薄い模様の白地、何だろうと思って「……ああ!」とわかった時のうれしさったら。
withコロナの日が続きますが、いつでもどこでも、「サンドイッチ ぎゅーっ」ごっこができる日が、またやって来ますように。
次回も続けてサンドイッチの絵本をご紹介します。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。