『ぼくのかわいくないいもうと』【今日の絵本だより 第133回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ぼくのかわいくないいもうと』
浜田桂子/作 ポプラ社 本体1200円+税
ご存知でしたか? 6月6日は、兄の日。
表紙は妹の絵ですが、この妹に悩まされているお兄ちゃんが主人公のお話、『ぼくのかわいくないいもうと』をご紹介します。
表紙を開いた扉には、なんとも微妙な顔をした男の子。
「ぼくは 2ねん1くみ、
はやし こうた。
ぼくには
いもうとが いる。」
ページをめくると、お兄ちゃんのシャツのすそをつかんで一緒に歩く妹。
(そっくり!)
「1ねん3くみ、
まほ って いう なまえ。」
とっても元気な妹は、お兄ちゃんが大好き。
休み時間に教室に
「おにいちゃーん」
とやってきて、友達みんなに大声で
「これがおにいちゃんのえだよ
いちばーんじょうずでしょ」。
校長先生をつかまえて
「ねえこうちょうせんせい
わたしがいちねんせいになったから
おにいちゃんにねんせいになれたの」。
学校でも家でも、ずっとお兄ちゃんへの愛が止まりません。
友達の妹や弟は、かわいかったり、いうことをきいたり。
姉ちゃんや兄ちゃんは優しかったり、サッカーがうまかったり。
でも、ぼくの妹は、
「すごい おしゃべり!
すごい でしゃばり!
もう いやだ。
もう いやだ。」
不幸感でいっぱいのぼくは、ついていないことに、さらにおたふくかぜになってしまいました。
そしてぼくが治ったら、今度は妹がおたふくかぜに。
いつもうるさい妹がいないから、学校でも何も気にせずのびのび過ごせます。
「しずかって いいことだ。」
と、ご満悦のぼくでしたが……。
「ああ本当に、きょうだいって、こうだよねえ」、そう共感する方が多いのではないでしょうか。
上の子が大好きな下の子と、それがうっとうしい上の子と。
うっとうしいけれど、いなければいないで、やっぱり気になる。
親になった身で読むと、笑えて、ちょっとほろりとして。
きょうだいで絵本を聞いてくれる間に、おすすめの一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。