鉄道専門誌から名作童話まで。ママ鉄・豊岡真澄さんの絵本の読み聞かせ【うちの読み聞かせ・8】
気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについてお話をうかがう連載。第8回は鉄道アイドルとして活躍し、今では11歳の男の子と9歳の女の子ママであり、“ママ鉄”として活躍中の豊岡真澄さんです。
鉄道専門誌を絵本代わりに読んでいた時期もありました
――もうお子さんは小学5年生と3年生ですが、兄妹への読み聞かせはどんな感じで行っていましたか?
小さい頃は、毎晩「好きな本を持っておいで」と言って、時間と心に余裕があれば、一人1冊ずつ。余裕がなければ、二人で1冊読んでいました。男女共に楽しめる本を選んで買っていたことや、2歳違いと年が近かったこともあり、お互いの絵本を嫌がることはありませんでした。いつも一緒に読んでいて、好きな本がかぶっていましたし。
ただ、いつも夜寝る前に読んでいたんですが、絵本が楽しくなりすぎちゃって、寝落ちしたことが一度もないんです。あれ、一回くらい経験してみたかった!
――何歳ごろまで読み聞かせをしていましたか?
今でも、できる時は読み聞かせしていますよ。もう大きくなったので、2017年に本屋大賞を受賞した『ハリネズミの願い』(トーン・テレヘン著、長山さき訳/新潮社)とか、長い本を少しずつ読み聞かせています。
仕事でナレーションの仕事もやったりしているので、最近「ママ、読むの上手だね」って褒められました(笑)。仕事が増えて、育児が忙しくなってきた時、お兄ちゃんに妹への読み聞かせをお願いしたりもします。食器を洗いながら、お兄ちゃんが読んであげているのを微笑ましく聞いたり。
「ママにも読んでみて」ってお願いして読んでもらってたけれど、何回か続くと「そろそろ読んで欲しいな」となりますが…。
―― どんな観点で絵本を選んでいますか?
絵本を選ぶ時は、まずは第一印象。絵のかわいさですね。次に一通り読んでみて、自分の気持ちが動くかどうかで子どもたちにも勧めたいと思うものを判断しています。あとは、本屋大賞などの賞を取っているものも選ぶことが多いです。絵本はワクワクしながら、心を育ててくれる。そのおかげで、二人ともとても感受性豊かに育ってくれていると思っています。
私は1冊気に入ると、その作家さんの絵本を全部そろえたくなるんです。「そらまめくんシリーズ」のなかやみわさんや、「バムとケロ」シリーズの島田ゆかさんなどは、全部持っています。子どもたちは、そのシリーズの中でどれが好きかっていうお気に入りが出来てきますね。
――てっきり、ママ鉄の豊岡さんだから、お子さんに読むのは鉄道の絵本などが中心なのかと思っていたので意外です(笑)。
長男の場合は、生まれた時から鉄道本に囲まれた家だったので、1歳のときに「『鉄道ファン』を読んで!」と持ってきてました(笑)。大人向けの鉄道専門誌なんですが、車両の写真とか、鉄道とかを指定してくるので、写真に解説を付けながら読み聞かせをしていました。
鉄道雑誌を絵本代わりに見ていたわけなのですが、そのおかげで、小学校に上がる前に漢字も読めるようになっていたんですよ。例えば「新」という字を見て「新宿の『新』だね」とか(笑)。鉄道や駅に関連している漢字、カタカナ、ひらがなをシルエットで覚えていたようです。
――絵本ではなく、鉄道雑誌とは! 想像を超えていました。
もちろん、鉄道の絵本は多いですよ、いただくことも多いですし。『きかんしゃやえもん』もよく読んでいましたが、やっぱり鉄道なら絵本よりも『鉄道ファン』とか雑誌(笑)。
あと、交通新聞社から出ている、ボタンを押すと本物の電車の音が流れる絵本があるんですが、それでもたくさん遊びましたね。走行音や発車ベル、アナウンスやブレーキ音も忠実に再現されているんです。英語のアナウンスもあるんですが、息子は中央線の英語アナウンスを覚えて復唱していました。
とは言え、別に鉄道好きにしたかったわけではなかったので、欲しがった本はジャンルにこだわらずなるべく買ってあげるようにしていました。
豊岡さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊
――それではここで、豊岡さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊を教えてください。
『としょかんライオン』
(ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳 岩崎書店)
本屋さんで読んで泣きそうになって購入した本で、私にとってのナンバー1。この本を読むと、二人とも布団の中でシクシク泣いてるんです。私自身も泣いてしまって読めないんじゃないかと思うんですが、そこは毎回グッときたら、気持ちを切り替えて、読み続けるようにしていました。でも、娘が泣いている顔を見たら、また泣きそうになって……(苦笑)。
うちの息子はもう5年生なので、反抗期の友だちも多いんです。「楽しいことだけやって、やりたくないことは嫌だ」って言ってるそうなんですが、そんな友だちを見て、まだ反抗期がやってきていないうちの息子は「『としょかんライオン』を読ませてあげたい。たまに破っていいこともあるけれど、ルールはルールだっていうこと、この本を読めばわかるから」って言っています。
『そらまめくんのベッド』
(なかやみわ/作・絵 福音館書店)
下の子が生まれてすぐに買った絵本で、「本当にこんなベッドがあったらいいねー」と何度も何度も、兄妹に読み聞かせました。
そらまめを家で食べることはほとんどなかったのですが、子どもたちが少し大きくなったころ、そらまめをそのままサヤで食卓に出してみたんです。「パカって割ってみて」って。
そうしたら、「わー! そらまめくんのベッドだー!」「ふわふわしてるー!」と大盛り上がり。
絵本にはいろんな豆も出てきて、食育にもつながりました。グリンピースも子どもたちはあまり好きじゃなかったけれど、この絵本のおかげで食べるきっかけになりました。
『せんろはつづく まだつづく』
(竹下文子/文 鈴木まもる/絵 金の星社)
お兄ちゃんが、毎日毎日読んでって持ってきていた本で、読んだ回数でいくと、ダントツ1位。何百回読んだかわかりません。絵本の中で、子どもたちが線路を敷いていくんですが、その感覚がプラレールやNゲージに近いみたいで、自分もやってみたくなるようです。
絵本のなかでは、線路を敷いていくと、スイカ畑とか障害物があって、「どうする?」と。そんな障害物を乗り越えるのに、ループ橋作ったり、踏切作ったり……。ページをめくるのがすごく楽しみだった絵本です。
鉄道系の絵本では、小学生になってからは『しんかんせんのぞみ700だいさくせん』(横溝英一/作・絵 小峰書店)ですね。1年生のときに買ったんですが、男の子が二人で新幹線で旅をするお話。これを読んで一人で旅がしたいって言い出しました(笑)。
――どの本も思い出がいっぱいですね。
今回、絵本のことをお話しすることになって、子どもたちに聞いてみたのですが、小学5年生になった息子は「絵本を読んでいる時間は癒やしだった」と言っています。小学3年生の娘はいまも、「今日は一緒に寝られる?」と尋ねて、「うん」と答えると「絵本読める?」って聞いてくるのですが、「読んでもらっているときはその世界に入り込めて、そのあとぐっすり眠れる」そうです。
大きくなってくると、ついつい「一人で寝て」っていうことが増えてくるので、ちょっと反省……。
絵本を読んで、トントンされながら寝ることって、幸せな時間なんですね。もう少し続けてあげたいと思います。
豊岡真澄
とよおかますみ/ママ鉄、鉄道文化人。11歳男児、9歳女児のママ。ホリプロからアイドルデビュー後、担当マネージャー南田裕介氏(鉄道BIG4)の影響で鉄道の魅力に目覚め、元祖鉄道アイドルとして活躍。2008年結婚を機に引退。現在、2児の子育てをしながら、親子で鉄道を楽しむママ鉄として、メディアやイベント等幅広く活動している。
取材・文/吉田理栄子