大切なのは、ありのままの本人を受け止めること【男の子らしさ、女の子らしさって何だろう・2】
「男の子らしさ」や「女の子らしさ」と言うよりも、今こそ育みたいのは「その子らしさ」と「人間力」!
男の子らしさや女の子らしさについて考える、第二回目は「ありのままの本人を受け止める」をテーマにお届けします。
『自分には価値がある』という思いを幼児期に根付かせてあげることが大切
今回“その子らしさ”について教えてくれるのは、「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)などの著書を持ち、講演家としても活躍中の立石美津子先生です。
性別による違いはあってもそれに当てはめる必要はなし
「片時もじっとしておらず走り回ってばかりいる男の子、誰に教えられなくてもママのメイクに興味津々の女の子。こうした『男の子/女の子らしさ』というのは、性別による自然な特性として3~4歳くらいになると出てくる傾向があります。男性と女性では脳の作りに違いがあるとも言われ、それ自体は自然なことなので、そうした傾向を敢えて否定する必要はありません。大切なのは、子ども本人が自ら選択しているか、ということなんです。
例えば、本当はおままごとがしたいと思っている男の子が、ママに『女の子の遊びなんてしないで、ミニカーで遊びなさい』とか、『家の中にいないで外で遊んできなさい』と言われたら、どうでしょうか? 子どもはママが大好き。“ママが望んでいるぼく”でないことを感じると、『こんな自分じゃいけない』と自己否定するようになってしまうかもしれません。
また、常に『男の子/女の子なんだから』と言っていると、その考えは確実に子ども自身の性別に対する考え方の形成に影響します。ちょっと男の子/女の子ぽくない友達やクラスメイトがいたら、『変なの~』とからかったり、差別する側に回ってしまうかもしれません。」
育児書通りの子はいない!本よりも本人を見つめよう
「子どもに『男の子/女の子らしく育ってほしい』と思っている人は多いですが、実際のところそれほど強いポリシーを持って性別による違いを意識して育てている人は少ないのではないでしょうか。漠然としたイメージで男の子/女の子らしいのがいい、という程度だと思います。
ではなぜ、男の子/女の子らしいのがいいと思ってしまうのか。それは子どもに『人並み』を求めてしまうから。正解のない子育てだからこそ、ママたちは育児書やメディアの情報を信じて一生懸命にがんばります。
例えば今、男の子の育て方についての本がいろいろ出回っていますね。女性であるママには、男性である息子に対して根本的に『理解できない』と思う人が多いせいか、そうした本はよく売れています。だから『男の子は活発で、乱暴な宇宙人であるから、理解できないのはしかたない』みたいなことが書いてあると、その通りだと逆に安心する。
反対に自分の息子が、聞き訳のいいおとなしいタイプだと、『男の子らしくないんじゃないか』と不安に感じてしまうのです。息子に手がかかり過ぎて毎日クタクタのママからしたら、むしろうらやましいのに! 本に書いてあることを鵜呑みにして、当てはまらないとおかしいと思ってしまう。ないものねだりですね。本に書いてあることは、あくまで一般論。自分の子どもを、そこに当てはめて考える必要はないのです。」
5歳までの子育てで子どもの自分自身への価値観が決まる
「当たり前のことですが、子どもはひとりひとりみんな違います。平均からズレている部分をピックアップするのではなく、ありのままを認めてあげましょう。子どもが将来、生き生きと幸せに暮らしていくには『自分には価値がある』という思いを幼児のころに根付かせてあげることが大切。そうした考えを持てるかどうかは、5歳くらいまでで決まるとも言われ、この時期にママ・パパにありのままの自分を受け入れてもらうことが何よりも大事なのです。
自分という存在を認めてもらえていると感じられている子、つまり『自己肯定感』のある子は、例えば困難があったときに、それを『恥ずかしい』として自分の中だけで抱え込んでしまわず、素直にまわりにSOSを出せるようになります。
やがて親の元から旅立つ子どもが、しっかりと社会の中で居場所を見つけ、周囲とのかかわりを大事にしながら自分らしく生きていけるようになるために、子どものありのままを認め、受け入れて育てたいですね。」
立石美津子先生
たていしみつこ/子育て本著者・講演家として活躍中。自閉症児のママとして障害児教育にも関心が高い。「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)など著書多数。