12月のテーマは「家事の絵本」【広松由希子の今月の絵本・14】
絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!
12月のテーマは「家事の絵本」
はっ! と気づくと、今年ももう師走。
ああ、家も仕事場も、この「ごたごた荘」のまま
年を越すのでしょうか。。。
それもまたよし!
と、開き直るのもありだと思います。
子どもが小さいうちは特にね。
完璧な結果を目指すのではなく、
過程をいっしょに楽しむ家事が
できたらいいなと願います。
年末の焦りがやわらいで、
家事もちょっぴり楽しくなりそうな
絵本を集めてみました。
忙しい時間の合間に、どうぞ。
『どろんこおそうじ』の表紙を見てください。
しっかり者の「ばばばあちゃん」が
ちらかし屋のこいぬとこねこをにらんでいます。
「いつまでたっても おそうじしないなら、
しまいに ばあちゃんは どこかへ いっちゃうよ」って。
ん? お掃除のしつけ本?
と思いきや、そんな展開にはなりません。
こいぬとこねこは、ぞうきんとほうきで野球を始めちゃう。
こいぬの打った球(ぞうきん)は、ポーンと飛んで、
森のうさぎの口の中へ。
怒ったうさぎが投げ返すと、また打ち返し・・・
しまいに森の動物みんなを巻き込んで、あらあら、どろんこの大げんかに!
どこで仲裁に入るのかと待っていたら、
「おもしろそうじゃないか!!
あたしも やろうっと!!」
と、ばばばあちゃん。
子どもも呆れる遊び欲。
なんとも大らかな顛末。
こんな「しつけ」なら、ストレスたまらなそうですね。
『どろんこおそうじ』
さとうわきこ/作
福音館書店 定価840円 1990
大人が大忙しの師走、子どもは?
『くんちゃんはおおいそがし』のくんちゃんは、
表紙ではせっせと立ち働いているようですが、
「なんにも すること ないや。」
「なにをして あそんだらいい?」
「こんどは なにをして あそんだらいい?」
おかあさんにまとわりついて、手をとるばかり。
やっぱりねえ。
「そとへ いって、
じぶんで なにか することを みつけなさい。
おかあさん、きょうは おおいそがしなの。」
と、言われてしまいます。
しょんぼり家のまわりを歩きながら
小石をけっているうちに・・・
ちょっとずつ面白くなってきて、ひとり遊びが広がっていきます。
だんだん、どんどん、わくわくと。
もうお昼ご飯を食べる時間ももどかしくなって、
「はやく いかなくっちゃ。だって
きょうは ぼく おおいそがしなの。」
子どもが楽しく遊んでいると、大人もうれしくて、
なによりのお手伝いだったりしますねー。
黒と朱、2色の掛け合わせで描かれる
あたたかなクマ家族は、気分もおだやかにしてくれます。
『くんちゃんはおおいそがし』
ドロシー・マリノ/作 まさきるりこ/訳
ペンギン社 定価998円 1983
年も押し迫って読みたいのが、
『十二支のお節料理』です。
年越しの準備を、十二支自らしちゃうんですからね。
いかにも縁起がよさそうな気がします。
お節料理を作るため、
年神さまが十二支の動物に
順番に係を決めました。
ねずみは、家の掃除とお正月の飾り付け。
うしは、田畑の食材を運び、
とらは、千里を走り、遠方から珍しい食材を集めます。
・・・
いぬは、年越しそばの係で、
いのししは、最後の始末までぬかりなく。
それぞれの動物の性質も、生かされている年末の大仕事。
生き生きせっせとはたらく姿が、年越し気分を盛り上げます。
そうして、にぎにぎしい大晦日の夜が更け、
静粛にお正月の朝を迎える気持ちが
最後の8ページをたっぷり使って、
みごとに表現されています。
細部まで見るほどに楽しい版画。
新年の「絵本初め」にもおすすめの一冊。
『十二支のお節料理』
川端誠/作
BL出版 定価1365円 1999
さて最後に、もうひとつ。
『12ヵ月のおてつだい』は、
ぼくとポチのゆかいな家事の歳時記。
その月にふさわしいスペシャルゲストが、
お手伝いをしに登場してくれます。
1月は、春の七草をそろえると、
雪だるまがおかゆ作りの手伝いに。
2月は、イチゴ狩りから帰ると、
アリさんたちがジャム作りの手伝いに。
潮干狩り、種まき、風呂洗い、洗濯、布団干し・・・
季節にそった家事と手伝いは、
おいしくて、おかしくて、あわただしくて、うれしくて。
そして、「ごくろうさま」「ありがとう」
お手伝いの後味って、いいなあ。。。と思える読後感。
(うーん、季節を感じる家事。来年は取り戻したいな)
来る年に夢ふくらむ絵本。
『12ヵ月のおてつだい』
きたやまようこ/作
理論社 定価1050円 2005
やり残しも、また来年のお楽しみ♪
どうぞ楽しい年末年始を。
広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo
web連載「広松由希子の今月の絵本」
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